映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「ムーンライト」

2017年04月06日 | 恋愛映画


監督バリー・ジェンキンス
原作タレル・アルヴィン・マクレイニー
第89回アカデミー賞、作品賞、助演男優賞、脚色賞を受賞。
同性愛者が主人公の映画がアカデミー賞作品賞を受賞するのは
今回が初めてだそうです。
(「ブロークバック・マウンテン」は監督賞)

いじめを受けている黒人の少年シャロンが、
母親の育児放棄や、己の性指向に悩みつつ、
友人のケヴィンに心を寄せていく過程を描きます。
シャロンの成長を3つの時間に分け、3人の俳優さんが演じる。

鑑賞後に評価を見て、「同性愛、ドラッグ、いじめを扱った問題作」と
書かれているのに違和感を持ったくらい、
鑑賞中それらは意識に登りませんでした。
同性愛!ドラッグ!貧困!いじめ!性暴力!
近親相姦!問題作!という感じの作品は時々あって、
その手のものは、作り手の
「問題を起こしてやるぜ!」って情熱に疲れてしまって
どちらかといえば私は苦手なのですが、
この作品に出てくる人は問題を起こしたくなどなく、
むしろ平常を渇望していたので心静かに見られました。
というか問題を提議する話ではなく、恋愛映画でした。
前者後者の差異は、役者さんの演技と、リアリズムと、
作り手からの登場人物への愛情なのかも。
音楽と色彩と音が良かった。波の音、虫や鳥の声。
でもピントを外したり、ぐるぐる回ったり、極端なアップ、手ブレ効果、
序盤の撮影方法は、ちょっと合わなかった。

内容ばれ

ケヴィンという男性は何通りか解釈できるように含みを持たせてあると思うんですが、
あれは無自覚魔性なので、今後シャロンは苦労するよ…というのが私の感想。

最初シャロンのことを色々面倒見てくるれるフアンというヤクの売人が、
小児性愛者の変態野郎じゃないの?シャロン危ないよ?って思ってたんですが
「オカマ(Faggot)ってなに?」「ぼくはオカマなの?」ってシャロンに質問された時のフアンの顔を見て
「あっ!ええひとや……!」ってなりました。
しかもその回答が知性と品性と愛情あふれるもので、
なんでヤクの売人がそんな聖者なの!?って思ったのですが、いい人なので早く亡くなった。

聖者といえばシャロンも徳が高すぎて拝んでしまう。
ドレッド野郎と母親を殺さずにいられたばかりか、
成長してからも母親と縁を切らずに、会ってハグするとか、
そんなに優しくて純粋でもヤクの売人って務まるもの?
(あと下世話ですが、刑務所ではどうやって身を守ってたの…)
「私はお前を愛するけど、おまえは私を愛さなくていい、そんな資格ない」
といいつつ、たまには会いに来てって真夜中に電話してくる母親が
安定を維持できるようには見えなくて、
和解シーンは私には和解だと受け取れなかった。恐かった。

シャロン役の人たちの中では最初の子が好きです。
警戒モードが素の状態で、ずっと黙っている顔とか、鹿みたいでした。
3人とも白目が澄んでいて綺麗だった。

悲惨さを訴える映画ではないので、暴力シーンに嫌悪感はなかった。
(いじめで言えば、最近見た邦画の「ヒメアノ~ル」などは
鑑賞者の顔に悲惨さをなすってくるような酷いシーンがあった)
(そういえば学校で白い人は1人確認したけど、
黄色人種は1人も見なかった。体格的に死あるのみなんだろうか)
自然は美しく、ヤクの売人の家はちょっと日本趣味とかも窺えるおしゃれなもので、
シャロンの家も貧しくはあったけど、不衛生だったり破壊されていたりはしなかった。

ケヴィンが作ってくれたシェフのおすすめは「アロス・コン・ポーヨ」というようですが
おいしそうだった。(シャロンはあまりごはんをおいしそうに食べない子だけど)
ところであの店で話し込む2人の後ろのほうに、メガネのおじいちゃんが座っていて、
どんなに時間が経ってみんな帰っても、おじいちゃんはずっといて、
「おじいちゃん空気読んで帰ってよぉぉぉぉ」って思ってました。

王家衛監督作品の影響が強いという話を聞きましたが、
昔すぎて色彩とかを覚えていない。
なんか一時期、映画ジャンルだけじゃなく腐女子全体的に
王家衛監督作品が流行った時期があったね…と思って
製作年月日を検索したらむかしすぎて絶望した。

もはやアカデミー賞作品賞監督賞を、直球の男女の恋愛作品で受賞するのは難しいですが、
今はまだ評価のうえで下駄を履いている状態である(ように私には思える)
同性愛者の恋愛物語も、いつか世に溢れかえってありふれたものになってほしいです。


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「グリーンルーム」

2017年04月03日 | ホラー映画

主人公の所属する売れないパンクバンドは
地方巡業の貧乏旅行に出ていたが、
低料金で受けた仕事で向かったライブハウスが、
ネオナチの集会場で、しかも彼等はとある事件を目撃してしまい…
というあらすじのホラー映画です。

そんなに怖くはないが、刃物で腕とか腹とかが
パックリ口を開けるシーンがあります。
あ、あと犬がぶん殴られて怪我をするシーンもある。

ネオナチのボスはパトリック・スチュワート氏。
トレードマークの柔和な笑みを消して、
クレバーで冷血な男を演じておられました。
しかしヘアスタイルゆえの起用なの?違うの?
とちょっと考えた。

内容ばれ

出演料が3まん5せんえんとか、ふざけてるの!?って
べつにバンドをやっていた訳でもないのに食いつきました。
交通費と食費を差しい引いたら、
きっと1人4せんえんとかになってしまう!
(まあ彼等の場合はガソリン泥棒をしながらの移動なので交通費はいらないのですが…。
そしてそれは死んでも仕方ないよね!というエクスキューズな訳ですが)
売れないバンドは世界共通であんなものなのか、ちょっと分かりません。
分からないと言えば途中の音楽ネタの会話が全然分からないのですが、
最初のうちは格好をつけてマニアックなバンドが好きとか言ってるが、
案外みんなメジャーなものが好きだった…ってことでいいのかな。

籠城している部屋から「わー!」って出ていって、
ボコボコにされて「えーん!」って戻ってきて、
また「わー!」って出ていく…のが3回くらい繰り返されたので、
もうちょっと回数を減らしてもいいと思う。
でも最後の地下の攻防は熱かったです。

ライブハウスにデーン!と掲揚されてましたが、
最近映画で南軍旗(正方形)orレベル・フラッグ(横長)が
差別主義者の象徴に使われているのを
偶然かもしれないけど2本見て、
うーん…?断絶が進行しているのか
あるいは私が気付かなかっただけで、昔から差別の記号だったのか、
どっちだろうと思いました。

これを掲揚しているおうちは、
白人至上主義者&ショットガン常備のケースが多いので、
有色人種は近寄らないほうがよいという注意をどこかで見た。



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