クレイグ・ガレスピー監督
スティーヴン・ロジャース脚本
リレハンメルオリンピック選考段階で、
トーニャ・ハーディング選手が夫とその友人と共謀し
ライバルのナンシー・ケリガンの膝を殴打するという
襲撃事件を起こした実話を映画化。
私はフィギュアスケートに疎いので事件自体を知りませんでしたが、
スケートファン歴の長い友人は、当時の中継で
靴ひもが切れたと訴えるハーディング選手の様子や
段取りがグダグダになった影響を他の選手が受けた流れなどが
記憶に残っているようでした。
あと、事件とハーディング選手を美化して描いているという
批判をネットで見掛けました。
ハーディング選手はアメリカ人として初めて
トリプルアクセルを成功させた身体能力が高い人ですが、
裕福な家庭の出身ではなかったために
審査員たちの描く上品で美しいスケーター像と合致せず
冷遇されます(事実と違うと指摘している人もおられますが)。
そして母親からの虐待と、素行に問題のある夫、
本人の激しやすい性格、破滅の条件が完璧に揃って突き進みます。
お母さん役の人が怪演で、ぞっとするような暴言と支配でした。
スキャンダラスな事件を描く一方で、
貧困の絶望的な強制力も描いていて、
いくら能力があっても美貌があっても、性質が曲がってしまうと
歪んだ愚かな人間しか集まらないし付き合えない、
愚かであるが故に通常では考えられないような問題行動を重ねて
やがて破滅してしまうという一連のプロセスは、
ブラックな笑いも加味してあってむしろ軽妙なくらいでした。
ハーディング選手の少女時代をマッケナ・グレイスさんが演じましたが
彼女の泣きの演技は天下一品なので、大河ドラマの序盤の子供時代のように、
「この子が成長するドラマも見たい!」という気持ちになった(笑)
実話ものお約束の、本人写真によるラスト。