映画の豆

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「進撃の巨人」(実写版)前篇

2015年08月16日 | アクション映画
樋口真嗣 監督


巨人という謎の生物から逃れて壁の中の世界で暮らす人間たちと、
その運命に抗い、世界の成り立ちの謎を解き明かす主人公の物語、
いまや講談社の看板漫画となった「進撃の巨人」がとうとう実写映画化されました。

が、残念ながらちょっと、こう、原作ファン&映画ファン共に炎上気味になる出来で、
何て言うか、あれな感じになっているようです。

・原作のキャラクターとオリジナルキャラクターの両方がいる。
・全員日本人で、舞台もたぶんアナザー日本。
・登場人物のほとんどが短気・アホ・衝動的。
・登場人物のうち1名が耐えがたいくらい寒い。

このへん乗り越えられる勇者だけが劇場に行く方がよさそうです。
伝説の映画「デビルマン」を越えるかな!?と思ったのですが、それほどではないです。
何故かというと原作のエピソードをそのまま使ったシーンがおもしろいから。
あと巨人の描写はさすがに凄いです。
人間がエビフライのようにブチーンと噛み切られます。
それでも、さすがに私の年内ワースト作品くらいにはなりそうですけども…。

内容ばれ(褒めてない。一部分ちょっと怒っています)

出てくる皆さんは、わりと感情移入が難しい変わった人が多くて、
主人公からしてそうなんですが、作戦行動中に人間の声に反応する巨人が
周囲にいるかもしれないのに、ミカサを他の男に取られたショックで
大声で絶叫したりします。
というか作戦行動中ですがやたら休憩時間が長くて、
ピアノを弾いて遊んだり、リンゴを食べながらお喋りしたり、
カップルが本番行為を始めたり、人妻が主人公を体で誘惑したりします。
君たち本気で巨人をどうにかする気はあるのか?

女性キャラクターは特にひどくて、
ハンジさん以外の女性には知能がありませんでした。
作戦行動中に「子供の声が聞こえる…」って制止を無視して勝手に隊を離れて
案の定幼児型の巨人に襲われて仲間を危険にさらす未亡人。
前述のように突然主人公に生胸を揉ませて「子供の父親になって」と迫る未亡人。
「え…?」とか「あ…?」とかばかりで殆ど喋らないので、
頭がどうにかなった設定かと思ったサシャ。
彼ピッピ(夫?)を巨人に殺されて逆上し
壁の修復に必要な、最後の貴重な爆薬を使って巨人に特攻する女。

そして今回リヴァイ兵長は出てこなくて、代わりに最強の兵士として
シキシマという中年のおっさんが登場します。
インタビューによれば監督にとってエレンとシキシマは
「かつての自分と今の自分」なのだそうです。
このおっさんが、想像を絶する寒さ。
なんか強いんですよ。強いんですけど油断するとすぐポエムをつぶやくんです。
そしてニヤニヤしてるんです。あっ中2!そう中2病だこれ!
あと関係ないけど出陣する時、後ろに控えているミカサがマントを着せるんですが、
マントくらい自分で着ろ。園児か。
後篇は脚本家さん曰くシキエレだそうなので、
たぶんこの中年のおっさんも巨人だったりして、
エレンに「俺と共に生きよう」とか言ったりしちゃうのでしょう。

今回の脚本は町山智浩さんという方と、渡辺雄介さんという方がなさってます。
町山さんは有名な映画評論家さんで、
私も時々ネットでご意見を目にしたり耳にしたりして、
なるほど!と啓蒙されたりしてましたが…
しかし映画の登場人物の知能の低さが観客のストレスになる事は
過去に仰っていた筈なのに、なぜ今回の映画はあれなのか。
なんであんなに唐突で寒いダンテの引用やニーチェの引用をするのか。
書いたのが中高生なら分かるんだけど!
(渡辺雄介さんは「ガッチャマン」の脚本のかたなので
どっちの責任かちょっと決めかねる感じですけども…)
ちなみに作戦遂行中の休憩時間に本番行為をおっ始める男女は
過去の名作戦争映画を参考にしたそうです…わあ、そうですか…。

ただちょっとムカっとしたのは、
脚本家のかたが映画公開前に、諫山先生との打ち合わせ内容を
公表しておられた、その表現です。

「ご本人が。それで、『もし映画化するんだったら、エレンを非常にリアルな、
巨人を見ると恐怖で身動きもできなくなっちゃうような青年として描いてくれ』
という要望があったんですよ。」

「これで炎上する可能性があるんですよ。すごく。今回の試写で。」

「根本的な部分だから、これ、全部書き直しになったんですけど。その後。」

なんていうか、これ批評されたら諫山先生のせいだし、諫山先生の発言で全部書き直したって
そういうふうな文脈に思えるし、あとあの遠慮がちな先生が
そんなハードルを上げて退路を断つような言い方をするかな…?と思って。
「できるなら」とか「もしよかったら」とかそういう言葉が前後に付いたんじゃないの…?
と思ってしまいました。
(あ、でも諫山先生の担当の編集さんも殆ど新人で、2人揃ってイケメンで、
そのイケメン新人コンビが講談社の救世主になったという話は面白かったです)

しかしこういう映画が爆誕すると、確実に楽しいネタ記事を量産して下さる色々な有名映画サイトさんが
今回はえらく歯切れが悪くて、ああ、こういう世界にも人付き合いってあるんだな…
ってちょっと地蔵顔になりました。


追記
スタッフの方が酷評にぶちぎれて
「みんな映画はハリウッドがいいんだね!じゃあハリウッド映画だけ観ればいいよ!
予算と技術はある方がいいもんね!特に予算!金で顔叩かれた映画を観ればいいと思います!
ハリウッド日本比較の人はそれが気持ちいいんでしょう?」と、
ついネットに書きこんでしまわれたそうですが、どうして我慢できなかったのか…。

あとナタリ監督「CUBE」は制作費約3000万円ほど。
ロドリゲス監督の「エル・マリアッチ」は70万円。
ノーラン監督のデビュー作「フォロウィング」も100万未満。
お金も大事ですけど、それだけじゃない…。



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