映画の豆

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「セッション」

2015年04月23日 | 精神系

デミアン・チャゼル監督
ドラマーを目指す主人公は、アメリカの名音楽学校の一年生。
ふとしたきっかけで、学園一の指揮者の目に留まり、
彼の率いるスタジオバンドの第二ドラマーとしてスカウトされる。
期待に胸を膨らませて練習に参加する主人公だが、
彼を待ち受けていたのは指揮者による苛烈な指導、執拗な侮辱、暴力だった。
というあらすじ。
ジャンルとしては音楽系サイコサスペンスになると思います。

胃の痛くなるようなシーンの連続です。
地獄の練習スタート以降、弛緩する場面がなく、
長時間の緊張を強いられます。
まさに主人公の叩くドラムのような2人のやりとり、
悪意と殺意と愛憎の混ざる2人の会話のようなドラムの音、
見せ方が上手いです。
デミアン・チャゼル監督は「グランドピアノ 狙われた黒鍵」の脚本の人で、
今回が初監督の若手。

オチばれ注意

サイコパス系映画を連続で見たので、
そろそろ必殺技で何かをぶっとばして3点着地する映画を見たいです。

人の努力が無に帰す瞬間を見るのって怖いですが、
今回のあの「肝心なコンペに向かう途中でバスのタイヤがパンク!」とか
「大事な音楽祭で自分だけ楽譜がない!」とか、悪夢の連続でした。
というかこの監督、楽譜がない!っていう状況がトラウマなのか。

ラスト、「モンスターを音楽で見返したよ!やったね!」っていう解釈と
「新たなモンスター天才演奏者が誕生したよ!やったね!」っていう解釈ができますが、
私は後者だと考えます。
どうしてかというと、親類に侮辱されたシーン、あれは必要な場面でしたが
主人公が従弟たちを貶める発言をする必要はなかったなというのと、
あと自業自得とはいえ終盤で彼女にふられたから。

典型的なサイコパス&モラハラ加害者のやりくちだなーと思って見ていました。
威圧して怯えさせた後で安心させ、プライベートの話を聞きだし、
その話を元に相手の親など大切な人物を侮辱し、一転してまた持ち上げ、
別の人物を贔屓にして突き放す。

このまえに見た「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を思い出した(笑)。
社長室で転んだドジっ娘ヒロインはイケメンサディスト社長に見初められましたが
人と目を合わせないでオドオドがちに生きていると、
とんでもないのに目を付けられるみたいなので注意しようっと!
(あのバンド、技術枠とマゾ枠があって、新人が来るたびみんな「どっち!?」
ってドキドキしてるんじゃないか)

洗練された遊びであるSM(Mの人権は保障されており、
いつでも関係を解除することができる)では満足できず、
相手の尊厳を踏みにじり、弱点をえぐり、自尊心を破壊し、
それでも逃げられないような関係を構築しないと満たされない人は、
そういえばどうするんでしょうね。
教師や、音楽指導者、スポーツ指導者等になって、
法に触れるか触れないかぎりぎりのラインで欲求を満たしてらっしゃるのでしょうか。

表現者は別に人格者である必要はないと考えますが
指導者は少なくとも理性的な人間でなくてはまずいな…と思いました。

主人公のお父さんだけが唯一の癒しでした。


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