実際にあった事件を元にした映画です。
デュポン財閥の相続人の1人ジョン・デュポンが
オリンピックのレスリング部門をサポートして祖国に貢献しようと思い立ち、
所有する土地にトレーニング設備を建設し、金メダリストを呼び寄せます。
ややメンタルの弱い選手マーク・シュルツと、
その兄で理想的な指導者にして弟の庇護者であるデイヴ・シュルツ。
うまくいくかに見えた彼等の関係は、やがて破綻し思わぬ悲劇を呼びます。
実際にあった出来事の時系列にやや手を加えて、
少々誇張したりはしつつ、でも基本的には実話に忠実に
監督の解釈を仄めかすという手法です。
ほとんど音楽のない映画で、沈黙するシーンが多く緊張しました。
顔の作りこみ、体型の改造含め、3人の演技がすごい。
マーク・ラファロさんは誰か別の俳優さんみたいでした。
ねたばれ
シュルツ兄は富豪の理想すぎた。
シュルツ弟は富豪を本当に尊敬して理解者だと信じていた。
兄は弟が可愛かったし家族が大切だった。
富豪は狂いかけていた。シュルツ弟を友人とも息子とも思った事もあったけど
そうじゃない時もあった。シュルツ兄になりたかった。
そんなシュルツ兄は自分を歯牙にもかけないように見えた。
シュルツ弟は、信じていた富豪も自分より兄に価値を見出したと思った。
そして自分は結局偉大な兄なしには何もできないと思い知った。
本当の尊敬や、精神の強さ、人徳、才能はお金では買えない。
普通の人間なら若いうちにちゃんと学ぶんだけど
富豪はあまりに桁外れのお金持ちだったので、
学習できないまま高齢者になった。
馬や高価な切手のように選手を収集し、尊敬を集められると思っていた。
母が見学に来た時にいいところを見せたくて選手の前で中身のない演説をして、
ほとんど素人同然なのに稽古を付けようとするところ、痛々しかった。
そのくせ彼は大事なアスリートにコカインをやらせたりする。
触れるものをみんな腐らせてしまう、おとぎ話の呪われた手の持ち主のようでした。
メンタルの弱いシュルツ弟とは混ぜるな危険。
シュルツ兄は心の強い、選手達からも子供や妻からも、誰より弟から信頼と尊敬を受ける
太陽のような、まさに富豪の理想そのものの男性ですが
いくら彼がキャパの広い男とはいえ、心を病んだ成人男性を2人も面倒見られない…。
1箇所だけ、富豪とシュルツ弟の疑似同性愛的な関係をちょっと仄めかすシーンがあります。
長々と書きましたが以上が映画の解釈で、
wikipediaでざっと読んだだけですが、実際のところは
統合失調症の妄想によるものなんでしょうね。
この人があそこまで異常なお金持ちでなければ、
たぶん周囲の誰かに強制的に病院に連れて行かれてこんな事にはならなかったのに。
病気は明白で、周囲の証言もあって、年齢も初老なのにどうして収監されちゃったんだろう。
すごい弁護団組まれそうなものだけど。親族に切られたとかかな…。
そしてこれデュポン財閥が映画化を差し止めるために法的措置を講じたりしなかったのか。
映画の写真と当時の写真を見ていると、どっちがどっちか分からなくなる。