「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

攫はるるなら風花のでんでら野 遠藤玲子 「滝」1月号<滝集>

2015-01-21 06:00:43 | 日記
 でんでら野とは姥捨伝説の理想郷と云う。春夏秋冬の美し
く理想の死に場所を想像しがちだが、世の中そうそう甘いも
のでも無いだろう。しかしせめてあの世に逝く時は、美しく
攫われたいとの願望がいたいたしい。まだまだお元気でいて
ほしいです。(木下あきら)

身に沁むや福島の猪なほ荒るる 赤間 学 「滝」1月号<滝集>

2015-01-20 04:29:45 | 日記
 メルトダウンした福島第二原発に追われ空き家となった町
中を昼も夜も徒党を組んで野生化した猪が走り回る景をTV
で映していた。猪も放射能汚染された人間の残留物を喰らい、
やがて亡びて行くのだろう。猪も被害者である。人間は経済
発展を欲望のままに進めるのではなく英知をもって、生きて
行かなければならないと思う。(木下あきら)

空母めく未完のビルや寒昴 加藤信子 「滝」1月号 <滝集>

2015-01-19 05:32:06 | 日記
 上五中七の「空母めく未完のビル」とはどの様な事か。空
母めくとは軍事的なものを想起させる事を作者は期待してい
るように思えてしまう。それが「未完」であるとは、完成は
しないがいつか完成するというよりは永遠に完成されないビ
ル、完成させてはいけないビルが言葉の配列から感じる。軍
国的な流れに対してのアンチテーゼを暗喩して、寒昴の配置
により、その危惧を表明しているように思えてならない。俳
句の可能性を示す骨太の句である。(赤間学)

花野風歩荷は立ちしまま休む 鈴木幸子 「滝」1月号<滝集>

2015-01-17 04:21:27 | 日記
 月例句会で主宰激賞の句である。歩荷(ぼっか)とは山小
屋に荷を運ぶ人の事であるが、その人を見ていると立ったま
ま休むんでいることに気がついたというのである。つまり一
度腰を落として休んでしまうとその後がきつくなるからであ
る。その凛とした山腹での姿に折りよく花野風が包み込んで
いる。季語の斡旋の仕方がドンピシャである。(赤間学)