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『科学が教える、子育て成功への道』

2018年03月28日 | BOOKS
『科学が教える、子育て成功への道』
著者:キャシー・ハーシュ=パセック
   ロバータミシュニック・ゴリンコフ
訳: 今井むつみ
   市川力
出版:扶桑社


 副題は「強いココロと柔らかいアタマを持つ『超』一流の子を育てる」です。

 「科学」と言っても、難しいことが書いてあるわけではありません。
 論証(エビデンス)となる参考研究論文一覧が巻末に、ずらーっと書かれているわけでもありません。
 分かりやすい文章で、今までの「学習科学」の研究を紹介しつつ、「これからの社会、これからの世界で、どんな人間が必要とされるか」、「そのために親・大人はなにをするべきか」のヒントが書かれている1冊です。
 ただ読むだけではしっかり頭に入らないので、ノートを取りながら読み進めました。

 1冊を通して伝わってくるメッセージは「まず、大人から変わらなくちゃいけない」ということ。
 大人は変わらずに子どもだけが変わる、魔法のような子育てなんてないということです。

 「持てる可能性を発揮するために必要なスキルを身につけ、社会の中で生き生きと暮らす幸せな人になるにはどうしたらよいのか」(p.14)
 「健康で思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる幸せな子どもを育てることこそ『成功』である」(p.90)
 「他者と協力し、創造的で、自分の能力を存分に発揮する、責任ある市民に、子どものみならず、私たち全員がどのように成長してゆくか」(p.90)

 大人の持つ「良い点数・良い成績・良い大学・良い会社」信仰という「成功」観とは異なる、新しい幸せな「成功」観を提示しています。
 さらに、その「成功」に必要な「6つのC(6Cs)」を活用した教育を、この本の3分の2のページを使って提案しています。

 「6つのC(6Cs)」は、
(1)「コラボレーション」 チームワーク・共感力
(2)「コミュニケーション」 コミュニケーション能力
(3)「コンテンツ」 知識・情報処理能力
(4)「クリティカル シンキング」 批判的思考力
(5)「クリエイティブ イノベーション」 創造力
(6)「コンフィデンス」 自信・自己肯定感

 子どもだけでなく大人も、新しいことを、常に学び続けること。常に考え、問い直すこと。学びを愛すること。
「全生涯が学びのプロセス」という姿勢を、親や教員が子に示し、一緒に学ぶ一員になることの大切さ。
 常に「6Cs」の能力に磨きをかけている大人がいて、子どもへの配慮をしている環境こそが、子育てに最良の環境であるということ。
 これからの教育・子どもたちの将来を考える上で非常に興味深く、実践したい方法にあふれている1冊だと思いました。

 けれども、「知っている人・知らない人」の間に大きな格差が出てしまうのではないかとも感じます。
 この本を読まなくても「6Cs」を実践できている家庭もあれば、親が学びから遠ざかっている家庭もあるからです。
 社会全体に「幸せな人」を増やすためにも、まず「学ぶ余裕」を持てる大人を増やす政策が必要なのかもしれません。
コメント
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