行雲流水

仏教をテーマとした記事を掲載しています。

白馬入芦花

2018年01月23日 | 仏の心
ある人が、白い画用紙を黒の絵の具でべったりと塗りつぶしました。
「これは夜空をカラスが飛んでいるところです。」
今度は、白い画用紙に何もしないまま、
「これは雪の中に真っ白なネコが遊んでいる絵です。」
これは一つの笑い話に過ぎませんが、黒く塗ったところに、黒いカラスを描くのと、白い画用紙に白い絵の具でネコを描くのとでは全く意味が違うことになります。

若い人の好む漢字の一つに「無」があります。夜空にカラスが飛んでいるときには、ちゃんとカラスは存在しているわけです。これは「無」であって「無」でないことになります。
「無」にとらわれてしまうのは単なる虚無主義でしかありません。
この世は、はかないと虚無感にとらわれてしまうのは、画用紙を真っ黒な絵の具で塗りつぶしている状態です。しかし、真っ黒な中に黒いカラスを見いだすことが大切なのです。つまり、はかなさの中に人生の意味や価値を見つけ出すことです。私たちは、いつか死にゆく存在です。全てのものはいつか滅びゆく運命にあります。だからこそ、有意義な人生を送って行かなければならないというのが、真っ黒に塗られた中に黒いカラスを見ることなのです。

白馬入芦花   白馬 芦花に入る

碧巌録の一節です。

白い馬が、白い花々の中に入っていく。

無になるが無ではない。

無の中に価値観を見つけよ。