akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

白井佳夫講座「木下恵介監督再評価」

2008-07-17 | 映画・芸術・エンターテインメント
国立近代美術館フィルムセンターで現在上映中の「長谷川一夫と衣笠貞之助」シリーズ企画。
前から観なくてはと思っていた衣笠監督の『十字路』を観に行くも間に合わず、ごあいさつをして、企画展示「映画の中の日本文学」を観覧してきました。
古代、中世から明治大正まで、本当に多くの文豪の名作が映画化され、ヒットしています。なんといっても、筋は映画の根幹ですから、いい原作と出会えることは名作映画への第一歩。いい文学作品がいい監督や俳優を得て、名作映画へと翻訳されてきた歴史がざっと紹介されていました。

夜は、映画評論家白井佳夫先生が講座「木下恵介監督再評価 彼と戦争2」へ。
白井先生には、東京芸大の特別講座「日本の古典映画」で2年間お世話になりましたが、その講義の中でも何度か木下恵介監督を取り上げて下さいました。
今日は、戦前から戦後の8本のワンシーンを上映しながら、時代ともに変化していった木下作品を検証。
『陸軍』『日本の悲劇』『女の園』『二十四の瞳』『野菊のごとき君なりき』『喜びも悲しみも幾年月』『この天の虹』『惜春鳥』
『陸軍』のラスト、母田中絹代が出兵する息子を追いかけていくシーンや『二十四の瞳』『野菊のごとき君なりき』などは、なんど観ても泣いてしまいます。後者二つは文学作品の映画化ですから原作の良さはもちろんありますが、監督の巧さがなくてはここまで素晴らしい作品にはなりません。
『陸軍』(昭和19年)では、陸軍省後援の映画でありながら、他の軍国主義映画に伍せず、あのラストシーンを撮った監督はさすが骨太な知能犯だなと思います。脚本には
出兵する息子。陸軍の行進。それを見送る母。あとは適当に
程度だったとか。それが、母田中絹代の表情の変化をアップで写し、行進する息子を、見送りの人々にぶつかり逆行し、転んでも泣きながら追いかけていく姿をひたすら映し出すことで、普通の一人の「母」の心情がしっかり描き出されているのです。「なんだこの女々しいラストは!」と叱咤され、しばらく謹慎処分になったわけですが、検閲も潜り抜け、その程度の処分で済んだのだから運も味方したんでしょう。

ドキュメンタリー的なアプローチの作品も面白いのですが、やはり私は『野菊のごとき君なりき』と『カルメン故郷へ帰る』が好きです

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