野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

Erin Brockovich (エリン・ブロコビッチ)

2012-03-07 06:30:38 | 映画
 「Erin Brockovich」

ジュリア・ロバーツは好きな女優だ。
ジュリア・ロバーツは「Erin Brockovich」で初めてのアカデミー主演女優賞を獲得し、ゴールデングローブ女優賞も受賞した。先日、BSで放映していたが、見たのはこれで3回目。何時見ても新鮮で面白い。映画のストーリも旨く構成されていたし、加えてジュリア・ロバーツの伸び伸びとした演技は爽快感があって素晴らしい。

映画は真実かとの質問を度々受けた Erin Brockovich 本人は、彼女の公式サイト「 Website of Erin Brockovich」に、映画のストーリーは98%が真実と書いている。
「The Movie Universal Studios made a film titled、 "Erin Brockovich", which stars Julia Roberts。
  Julia won an Academy Award for her portrayal of me。
  People ask me all the time、 is the movie true and accurate?  YES、 the movie was true and probably 98% accurate。
  They took very few creative licenses」

「幼い子3人を抱えて無職のシングルマザー・エリンは、極貧の生活。
 なんとか仕事を探そうにも、学歴がないのでロクな仕事が無い。
 法律事務所に押し掛けて働くうち、何気なく見たファイルからある地域の調査を開始する。
 それはやがて巨大企業の起こしている深刻な水質汚染の実態を暴く事になる。
 直感を信じて調べだし、大手企業の工場が発がん性物質を垂れ流している事実を突き止める。
 被害住民634人の思いを丁寧にくみ取り、アメリカ史上最高額の和解金3億3300万ドルを勝ち取る。
 礼節欠け、汚い言葉使いで、服装は露出過多、しかし原告住民からは他のどの弁護士よりも慕われた」、が映画のストーリー。

映画「エリン・ブロコビッチ」でのエリンは、見た目も性格も派手な女性だが、訴訟に勝つために採った手法はとても地道な努力。弁護士でもなく企業の回し物でもない彼女はただ「泣き寝入りだなんておかしい」という一念の元に、水質汚染地域の人々が訴訟に加わるように説得して回った。敏腕なわけでも何でもなく、一人の人間として頑張った結果が幸いにも貴重な資料を掴むまでになった。訴訟や裁判を取り扱った映画はアメリカ社会に広く人気があるが、手法の希有な事例として、この映画はアメリカの訴訟実例をみる上で参考となる。

「Erin Brockovich」の映画を何度見ても、私が飽きない理由は他にもある。
★昔、開発担当時に二回ほどアメリカの訴訟案件に関与したこと、そして品証担当時にも若干の訴訟事案を経験することになったこと。アメリカの訴訟事例を随分と勉強したし、法務担当と綿密な打ち合わせをしながら、現地弁護士の考え方にも接する機会を得た。 その経験をベースに「Erin Brockovich」の映画を観ると訴訟の流れが分かり易く、作り話ではないと容易に理解できる。

 開発当時の訴訟案件は、担当した機種で事故を起こした運転者が怪我を負ったと訴えたものだったが、デポジション(Deposition)を受けることになった。 トライアル (裁判)になる前の、事務所内で行われたデポジション、つまりトライアルに備えて法廷外で行われる証言録取のことだが、 法廷での証人尋問と同じように、弁護士が立ち会い、証言を記録されるし、ビデオなどにも録画される場合もある。

 訴訟となった場合、デポジションにかなりの時間が費やされることになるが、当方の正当性を証明するための筋書きに相当の準備と周到な質問が求めらる。 このデポジションはアメリカの訴訟事例の一端を経験するうえで、非常に勉強になった。 結局、担当した二案とも相手側が取り下げたので、結局トライアルまで行くことは無かった。

 つまり、当方の設計思想の正しさは認められたわけだが、 この経験は設計・開発上の技術的理論を開発リーダーは常に認識しておく重要性を再確認することにもなった。 往々にして、設計者は自己の設計に自信過剰となりがちで、相手側弁護士の術中にはまり易い傾向にあるようだが、我慢の必要性をも学んだ。 全く欠陥のない製品などあり得ないから、製品開発を通じて可能な限りの策を採って量産化したこと、 購入して頂いた顧客が安全に使用すべきマニュアルの整備も不可欠。 これでも実際、事故発生を完全に防止することは出来ないので、事故発生時の対応も十二分に心得ておくべきだろう。

★アメリカを象徴する表現として、法の国とか訴訟国家などという言葉がよく使われるほど、訴訟案件が非常に多く社会問題となった時期があった。
 アメリカではちょっとした事故で怪我を負うと、自己の責任はさておき相手を訴えて訴訟に持ち込む事案が多い。例えば、サドルバックパークというカリフォルニアのオフロードライダーにとっては聖地とも呼べる広大なオフロードコースがサンタアナの近くにあった。
当時、モトクロスマシンを一台乗せたピックアップトラックでサドルバックに行き、 一日中ライディングするのがアメリカ人の楽しみの一つでもあったのだが、 トラックに積載したモトクロスマシンの色で、売れるマシンの人気度尺度にもなっていた。
 だが、訴訟ブームの時期、訴訟事案が増加して結局閉鎖に追い込まれ、多くのユーザーが終日楽しめる場所を無くすと言う残念な結果に至った。 一握りのユーザーが多くのアメリカ市民の楽しみを奪ってしまった悪例だと思うが、これはほんの一例に過ぎない。

★弁護士の数と州による法律の違いもあって、アメリカの弁護士数約100万人が有資格者として登録されている反面、日本では僅かの2万人。アメリカの人口が日本に比べて2倍いるとしても、この数の差は歴然で、弁護士の数からも、アメリカが訴訟国家であることが分かる。この数の多さが、訴訟案件を増やしている大きな要因だとも言われており、つまり、弁護士が食うために訴訟案件を増加させている。加えて、アメリカは陪審員制度があって、陪審員が訴訟の評決権をもっているので、弁護士の技量が評決に大きく影響する。 結果的に、訴訟に勝つと高い弁護士料を獲得できることもあって、訴訟事案は一向に減少しない。

訴訟事案は人間模様が顕著に出てくるので、一評論家として側面から観察すると非常に興味をそそるものがある。
エリン・ブロコビッチは辛苦をなめた地道な捜査が幸運をもたらした珍しい事例だが、実際はそう簡単ではない。
日本でも採用された陪審員制度、その原型となったアメリカの訴訟制度、次の機会があれば紹介したい。 



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« WSBK  2012 第1戦  Philli... | トップ | 福寿草 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画」カテゴリの最新記事