野々池周辺散策

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オリジナル「決断の3時10分」を見た。

2013-09-06 06:38:49 | 映画

   「決断の3時10分」
昨年の3月、2007年版の「3時10分、決断の時」をDVDで見た時の印象を「「最近見たDVD その2: 3:10 to Yuma」に書いて本ブログに投稿した。ところが、この映画にはオリジナルがあることを知り、DVD屋に聞くと置いてないと言う。置いてないと見たくなるのでアチコチ探してみたが、無い。ところが先日のNHKBSで放送していた。映画のストーリーは新作と違う部分も多かったが、オリジナルは新作以上に面白かった。1957年の白黒映画だ。

主演はベン・ウェイド役のグレン・フォード。強盗団の親分ベン・ウェイドを捕まえた町の人たちが、彼を護送して3時10分発ユマ行き列車に乗せるまでをサスペンス調に描く。荒野を疾走してきた駅馬車が強盗団べン一味に襲われた時、走ってきた駅馬車を止めるために牧場主ダン・エヴァンスの牛が使われる。ベン一味に盗まれた牛を追ってきて、うっかりその全てを目撃した牧場主ダンと息子達は牛を取り返すことが手いっぱいで、何の手も打てずベン一味を見逃す父ダン。ここから映画は始まるが、出だしは新作と一緒のストーリー。日照り続きで借金200$の返済も儘ならないダンは、捕まったベン・ウェイドをユマ行き列車に乗せるべく護送役を引き受ける。危険な任務を引き受けたのは、ダンと酒びたりのカウボーイの二人だけだが、他は強盗団に恐れをなしてみんな家に引きこもってしまう。誰も協力者がいない町はゴーストタウンと化してしまったように殺伐とした風景となって、白黒映画のこういう場面はたまらなく良い。その後のストーリーは、駅のあるコンテンションの町へと一気に飛んでしまうが、クライマックスは一時的に借りたホテルから駅まで息詰まるサスペンスが続く。

西部劇にありがちな明快なヒーローと悪役の設定ではなく、どちらかと言えば、ごく平凡な牧場主と悪役間に交される何気ない会話から、悪役ベン・ウェイドの心変り模様が巧く描かれている。新作に比べ、地味な作品だが、牧場主と悪役間の心理的駆け引きは、他の息詰まるほどのサスペンス映画に比べれば劣るが、痛快西部劇の流れの中でみれば非常に面白い。

新作では、牧場主ダンがベン・ウェイドをコンテンションの町まで護送中もかなり派手な打ち合いがあった。
オリジナル映画では、冒頭で銃声が一発響いてからは、最後の撃ち合いに至るまで、ほとんど一発の弾も発射されることなく物語は進んでいく。酒場の女や牧場主の奥さんからも好意を持たれるほど口が巧いベン・ウェイドは、逃がしてくれれば10,000$やるとダンに言う。保護を頼んだコンテンションの町の保安官が手を引き、「報酬は払うから逃げろ」と説得する護送団社長の言葉にもダンは首を縦に振らず、ベンを列車に乗せようとする。心配でコンテンションまで尋ねてきたダンの奥さんの説得にも耳を貸さない、使命感だけの牧場主ダンにベン・ウェイドは次第と友情というか男気を感じてしまう。汽車に乗せられるベン・ウェイドを仲間が取り返そうとするが、ベンは何故か自分から汽車に乗りこんでしまう。走る汽車の中のダンとベンは線路の側で佇むダンの奥さんを見て、敵と味方であるはずの二人が顔を見合わせて笑うその瞬間、何カ月も日照り続きだった荒野に大粒の雨が降る。ここが一番の見どころ。最後に、ベンはユマの牢獄から何度も脱獄したことがあるからと言ってにっこりと笑う。新作が単なる派手な撃ちあいの西部劇だとすれば、オリジナルは開拓時代の男の男気をうまく描いた映画という印象を受けた。こういう映画は良いな!

オリジナルの「予告編

映画を見て、強盗団のボス、ベン・ウェイド役は、ラッセル・クロウよりオリジナルのグレン・フォードの方に好感が持てた。
また、オリジナルと新作との最も大きな違いは、ダンがベンをコンテンションの町まで護送した後、心配になって後を追ってきたのが、オリジナルはダンの奥さんで、新作はダンの息子。誰も引き受けなかった悪党の護送を金のためにと言え、引き受けたダンを、其々に尊敬するシーンが描かれている。新作の息子よりもオリジナルの奥さんの方が、事の成り行きから言えば自然に感じた。と言うのは、南北戦争が終了した当時のアメリカの田舎の生活は困窮を極めており、家庭の中での母親の役割は極めて大きかった。その点でいうと、ダンの最後の仕事を見届けるのは奥さん以外に無いと思った。

例えば、話しは変るが、この映画の頃(南北戦争後)アメリカの田舎の生活がどんなものだったかだいぶ前に調べたことがある。
大自然の中で、貧しくとも家族が助け合って暮らす生活が想像する以上に大変だったか。それにはこのように書いてあった。「農村生活は絶えることのない苦難の連続で、農民とその家族はなんとか食いつないでいくだけでも、1日14時間せっせと働かなければならなかった。 農家のまわりを取り巻くのは、バラが咲いているこぎれいな庭どころか、あるのは牛や馬の糞と堆肥の山だった。 そのために、ハエやダニやさまざまな虫は群れ集まって、人間と家畜のどん底生活をいっそう悪化させた。人々は生きるのに精一杯で、衛生観念など持ち合わせていなかった。 農家の若妻には、夫に劣らない、あるいは夫以上の根気と不屈の精神が必要だった。まさに農耕馬なみの忍耐力である。 何しろすぐに手にはタコができ、背中は曲がってしまうのだから。 顔は苦労でやつれ、それが農夫の悲惨な状況をよく物語っていた。 便利さを考えて井戸は家の近くに掘られた。そして農家自体は、納屋、馬屋、豚小屋、鶏小屋、そして汚水槽の近くに建てられていた。 下水らしきものもなく、井戸水は土に浸み込み、ありとあらゆる有害物質に汚染された。台所から出る廃油、屋外の簡易便所から出る腐った汚物・・・・・」

実際の当時の田舎の暮らしと映画に出てくる牧場主の奥さんを重ねてみると、悪党ベン・ウェイドに食事を出すシーンで、ベンの話に引き込まれている奥さんの表情からも西部開拓時代の苦しさ、貧しさから逃れたいという女の心情が強く出ていた。違ったのは、牧場主の奥さんの顔が綺麗過ぎたことぐらいだが。



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