野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

ヤマハのレース活動理念に納得

2017-03-06 06:23:39 | モータースポーツ
3月3日のひな祭りの日、ほぼ同じ時刻に「石原慎太郎」の豊洲に関する記者会見と、「ヤマハ発動機の2017年モータスポーツ活動計画」の発表会がライブ報道されていた。どっちを見ようかと迷ったが「石原慎太郎」の記者会見の方が断然面白く最後まで見てしまった。テレビで報道される世間の動きは石原慎太郎バッシングだが、この記者会見を聞く範囲では、石原さんが会見で言っていることは至極もっともなことばかりで、何故、世間からこうも叩かれるの不思議に感じた。感情に左右される世論は小池知事にうまくはめられた感もあって、何処に焦点に当てた情報操作にするかは大事だなーと思う。慎太郎記者会見に時間を費やしたので、ヤマハ発動機のレース計画はYOU TUBEで見る羽目になった。

先月、ホンダのモータースポーツ活動計画の記者会見ライブをパソコンで聞いていたが、ホンダの説明にはおおいに失望した。特に、「ホンダは勝ちに拘る」とか「鈴鹿8耐では2年続けての惨敗だった」と何度も語ったわりには、勝ちに拘った具体的な対策・体制も構築せず、今年は鈴鹿8耐40周年の記念の年なので必勝を期したいと言う言質についても、ホンダの現計画でヤマハワークスに勝てるのかの記者質問についても苦笑いするのみだった。一方、ヤマハのレース計画は実に明快で、YOU TUBEで聞いても納得できるものだった。また、報告会で初めて知ったが、ヤマハのレース運営や開発の元締めは全て技術本部が管轄していたことだ。
     「2017年 ヤマハ発動機 モータースポーツ活動計画 発表会」
   
ヤマハの副社長は、レース活動理念の幾つかを説明したが、ヤマハブランドの価値向上を図る事以外にワークス活動の意義として挙げたのが、ワークスチームのミッションとして特に全日本と鈴鹿8耐は技術開発の重要拠点であり、そこから得られた知識・情報を世界各地で活動するレースチームにフィードバックする役目があると説明した。鈴鹿8耐3連勝にむけ、2017年はヤマハワークスを2チーム参戦させると報告した。同メーカー複数ワークスチーム参戦は80年代後半~90年代、日本の二輪企業がそれぞれのメンツをかけて熾烈な戦いを繰り広げていた時代に採用した戦術であるが、鈴鹿8耐のように真夏の鈴鹿でスプリントタイムで8時間を走り切って勝利するには、不測の事態に備えてバックアップ体制を取っておくのは必定である。今年のヤマハは8耐に勝つための策を取った(それでも必ず勝てるとは限らないが、勝つ確率は一段階高まる)。もう一つ重要な事を聞いたが、ヤマハ発動機はグローバルのレース運営・開発の元締めは技術本部が担当していること。加えて開発担当のみならずグローバルにレース計画を立案展開するモータースポーツ部も技術本部が担当していること。二輪の技術開発のためにレース活動は必須条件だとする意味は、二輪事業を生業とする限り、ヤマハはレース活動を継続すると言うことを宣言したことになる。

ヤマハのグローバルレース展開を総括する技術本部長の説明では、レース活動の意義は二輪技術開発のフィードバック上不可欠であり、レース活動で試みた先進技術を次世代の量産車に適用すべく研究していること。加えて重要なことは人材開発上もレースは不可欠案件だとして、レースと言う過酷で厳しい環境で判断力を醸成するためのチャレンジスピリッツをレース活動を通じて構築できるとし、物づくりの会社にとってレース活動は積極的に展開すべき案件だとして説明していた。その延長上に、2017年全日本モトクロス選手権に、新型モトクロッサーを投入予定であるとした。とかく、レースと言うと、二輪の技術開発とレース運営は別だとして内に籠った垣根を作ってしまいがちで、レース運営は面倒で開発に支障をきたすとか言う組織があるらしいと聞いたことがある。しかし二輪の技術開発を効率よく運営するためにはレース運営と開発は表裏一体の必須条件だとするヤマハの考えは、日本の二輪企業がかって歩んできた過程で構築してきた原点であり、すんなりと納得できるものであった。

例えば二輪ロードレースの最高峰である、MotoGpは資金的に弱小メーカが参戦するには二輪事業トップの強い意志と覚悟が必要とされる。レース参戦は、二輪事業トップがレース好きだからとか、優れたマシンを開発する技術力があると言う単純な図式ではない。二輪企業にとって、「MotoGpレース参戦は経営的効果がある、だからレースに勝利する事を目指す」と成らねばならないと思う。その意志が明確でないと、レース費用は年毎に増加する一方で、しかも勝てないことが続くことになる。経営的勘定で企業のレース活動を決断すべきだろう。そうしないと、レースに勝つ事を目的として多額の費用を掛ける競争相手に勝つことは困難であるし、レース担当者にも無益な負担が常に掛ってくるので、ますます負の連鎖となっていく事例も多い。

ヤマハのレース計画発表会のYOUTUBEを見ながら、先日、発表されたトヨタの組織改正を思いだした。
これは、「トヨタ、GAZOOレーシングカンパニー を新設…市販車開発へ」にあるが、「トヨタ自動車は3月1日、4月に組織改正を行うと発表した。今回の組織改正は、さらなる「仕事の進め方変革」に向けた体制の見直しとなる。注目できるのは、「GAZOOレーシングカンパニー」の新設。これは、モータースポーツ活動を通じて得た技術や技能を「走りの味作り」のための知見として蓄積し、自らの手で真のワクドキを顧客に提供するためのクルマを開発し、投入できる体制を整備するのが目的」だとして、レース活動を通じて得た知見を販売するとするもの。製品軸の「カンパニー」を設置し、中短期の商品計画や製品企画はカンパニーが担うとするトヨタがごく最近採用した、製品ニーズとスピーディさを追及した組織改正だと理解しているが、トヨタ社長が言う、モータースポーツ活動を「もっといいクルマづくり」の根幹に据え強化している事の現れだと思う。

何時も、こう思う。
『技術レベルの高さの優劣を、勝負として競争するのがレースであり、過去、日本企業はレースで勝つことで優秀性をアピールし企業自体が発展してきた歴史がある。二輪ユーザーが求めるものは多様化しつつあるが、最も技術力を誇示できる場がレースであることは現在も何等変わらない。更に加えるなら、書籍「失敗の本質」では、技術には兵器体系というハードウェアのみならず、組織が蓄積した知識・技能等のソフトウェアの体系の構築が必要と指摘している。組織の知識・技能は、軍事組織でいえば、組織が蓄積してきた戦闘に関するノウハウと言っても良い。組織としての行動は個人間の相互作用から生まれてくるとある。この指摘から言えば、戦いのなかで蓄積された人的・物的な知識・技能の伝承が最も必要なレース運営組織は経験的に企業グループ内で実質運営されるべきであり、レース運営を外部団体に委託すること等は組織技術ソフトウェアの蓄積から言えば絶対に避けるべき事であろう』
四輪以上にモータースポーツ開発で培った知見や経験が生きてくるのが二輪の開発であるというのは疑う余地がない。だからこそ、極限の戦いの一つの頂点であるレース活動に求められる知識や胆力そしてチャレンジ精神を外部に委託することほど勿体ない物はない。それこそ、二輪の開発で最も重要な項目を外部に、しかも費用を払ってまで委託することは大きな損失とみるべきであろう。それをよく理解しているからこそ、ヤマハやトヨタは開発の最も重要要素は自部門内で蓄積しながら歴史的に継続していくべき事として経験上知っているのだろう。技術本部がグローバルなレース活動を統括する限りおいては「参戦と撤退を繰り返す」事など起こりえないし、開発の総本山である技術部がレース活動を統括する意味はそこにある。





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