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二輪は利益を出し得る事業か - 2012年 6月度決算より

2012-08-09 06:52:58 | 二輪事業
    「優良二輪企業・・Harley-Davidson 」

二輪各社の2012年6月度決算報告資料から二輪の世界市場動向の一側面を見てみた。

「ハーレーダビットソン」:
 ■1-6月累計  2012年      2011年
  ・売上高   28.42億ドル   24.02億ドル
  ・営業利益   6.67億ドル    4.94億ドル
  ・営業利益率  23.5%      20.6%
 ■通期収益推移 (億ドル)・・・Harley-DavidsonHPより
  ・年度     2011   2010   2009    2008
  ・売上高    46.62  41.76  42.87   55.78
  ・営業利益    8.30   5.61   1.96   10.59
  ・営業利益率  17.8%  13.4%  4.6%  19.0% 
*注:営業利益はOperating income from financial servicesを含む

「ホンダ」:   
 ■第1四半期  2012       2011
  ・売上高   3,466億円    3,303億円
  ・営業利益    368億円      489億円 
  ・営業利益率  10.6%      13.6%
 ■通期収益推移(億円)・・・ホンダHPより
  ・年度    2011   2010    2009    2008
  ・売上高  13,488 12,881  11,402  14,115
  ・営業利益  1,426  1,385     588     999
  ・営業利益率 10.6%  10.8%    5.2%    7.1% 

「ヤマハ」:
 ■1-6月累計  2012       2011
  ・売上高   4,147億円   4,623億円
  ・営業利益     45億円     236億円    
  ・営業利益率   1.1%      5.1%
 ■通期収益推移(億円)・・・ヤマハHPより
  ・年度    2011   2010   2009    2008
  ・売上高   8,876  9、142  8、171   10,288 
  ・営業利益    276   485   △42      336  
  ・営業利益率  3.1%  5.3%  △0.5%   3.3%  
  
「スズキ」:
 ■第1四半期  2012     2011年
  ・売上高    595億円    754億円 
  ・営業利益   △35億円     3億円  
      
「カワサキ」:  
 ■第1四半期 2012年    2011年
  ・売上高   534億円     596億円 
  ・営業利益  △3億円       3億円   
 ■通期収益推移(億円)・・・川重HPより
  ・年度    2011     2010   2009    2008
  ・売上高   2,400    2,344  2,030   3,037  
  ・営業利益   △30     △49   △270    △104

*注:二輪事業決算に含むビジネスユニットは各社HPによった。


★ハーレーは、世界市場で+2.7%販売増、特に米国市場では+4%の高いペースで販売を伸ばしたが、
低迷している欧州市場で△9.1%の減、日本向け販売も減少している。結果的に先進国での販売を伸ばし、非常に高い営業利益率を引続き確保し、今期販売台数目標24万台。収益性の高い大型二輪を中心に販売伸長、これを軸に新興国へ販売拡大中だが、アジア及び大洋州では+10%の伸びと報告されている。

★ホンダは、東日本大震災の打撃を受けた前年同期から4輪車販売が大幅に回復し、全社の営業利益は7.8倍の1,760億円となった。二輪は、昨年同期に比べ営業利益は低下しているも、タイ洪水等によって一時低迷した昨年2Qを底に収益は向上し高い利益率を確保している。ハーレーダビットソンと同様に世界の二輪事業を引続き牽引。

ホンダ二輪は、アジア地域、北米市場とも販売は伸びるも為替の影響大。
北米はATVやCBR250Rが伸びて、タイ、インドネシア向けモペットやインド向けオートバイも伸長した。欧州(特に南欧)は販売不振が継続し、ブラジル向け販売も減少するもアフリカのナイジェリア向けは伸びた。注視すべきは、二輪事業減速を背景に同社株価は相対的に大きく下落したとの新聞報道もある。

★ヤマハは、米国市場の二輪・マリンとも販売回復(総需要+2%、ヤマハ+26%)したものの、
新興国二輪需要ではインドネシアとブラジルが減速、インドとベトナムはやや伸び、全体的には減収減益とある。インドネシアのローン規制による二輪車の販売減少について、「4月頃から過剰在庫となり、調整を迫られる状態になった」と報告された。しかし「インドネシアの需要は根強く、年内には方向性が見える」と、来年には市場が回復するとの見通しを示したとある。

昨年のヤマハは新興国向けを中心に3%以上の営業利益率を確保しV字回復した。インドとベトナムでも生産能力増強と販路拡大を進め、先進国市場が縮小する中、経営資源をアジアの新興国へ更に集中するとあったが、今期は新興国の外部環境に影響されたようだ。

★カワサキは、昨年1Q時の営業利益は+3億だったが、今期1Qは一転して△3億となり7億の悪化。
しかし、通期予想は50億に据え置き(昨年1Q期の通期営業利益目標50億と同じ)しているが、今期出だしの4-6月△3億をみると依然として低迷。

新興国販売増なるも欧州での販売減少と円高の影響が大きい。
インドネシア等新興国ではオートバイ市場が伸長し、市場伸長に合わせるべく、インドネシアに新工場建設、タイ工場の拡張により生産体制を整備中。また、中国市場向けとして現地二輪企業と事業提携に合意し中国市場に再参入すると報道されている。北米、特に欧州向け売上は減少した。

決算から少し分かった事は、
●今期の外部環境の変化によって欧州販売の減少に加えインドネシアとブラジル市場が悪化した。
インドネシアでローンの頭金に関する規制が導入された。規制の対象となったのは自動車、二輪車、住宅で、購入する際にそれぞれ売価の25%、20%、30%以上の頭金支払いが義務付けられ、二輪企業別では、首位のホンダが前年同月比△8.2%、2位のヤマハが同31.3%減、スズキが同28.2%減となった。一方、4位のカワサキは同21.0%増、低所得者層向け小型機種の販売を中心とする他社と異なり、中間層から富裕層向けに中型車を販売していることで、ローン規制の影響をあまり受けていないようだ。また、BRiCSの中で、ブラジルの成長率が急減速し、結果ブラジル経済が減速傾向にあり、二輪販売に大きく影響している。

●このような市場環境の悪化にも関わらず、
先進国を中心に強いブランド力を持って安定した収益を基本に新興国へ触手を伸ばしているハーレーダビットソンと、旺盛な新興国需要に応えるべく生産ラインを急ピッチで整え市場を急拡大してきたホンダの、所謂2強が今期も安定して高収益を継続して確保している。ヤマハはインドネシアとブラジルの環境悪化をまともに受け売上・収益とも悪化したが、黒字計上した。

●カワサキは中国市場に再参入するとあった。スズキも大型二輪を中国市場に投入する計画にあると報道されている。
しかし、中国市場で日系二輪企業が利益を計上した報告がいまだ無い処をみると困難な市場であることは確かだろう。カワサキの今後の動きを注視してみたい。

●日本国内や経済危機にある欧州の二輪需要は下降線の一方だが、東南アジアに加え、南米そして未開拓のアフリカ等、長期的に見れば更なる市場拡大のチャンスが見込める二輪事業はうまみのある事業体であることは間違いない。

●ハーレーやホンダ/ヤマハの二輪事業展開を観察すれば、世界的不況と言われる中でも二輪事業は極めて高い収益性を確保できる事業体であることは変わらない。それは、市場動向を見た的確な戦略と素早い決断/実行力こそが高い収益性を確保できる事業体に成長することを、ハーレー、ホンダ/ヤマハの決算から読みとれる。メディアによる二輪の将来は必ずしも明るいと言えないとする論調もあるが、二輪事業は経営手腕によって「未来ある事業体」と言えるのではないだろうか。当たり前のことだが、最後は経営戦略の優劣が勝敗を決する。

宋文洲のツイッターに面白いものがあった。
『日産、利益で業界首位 。違うのはトップだけ。』『外人が社長になればうまくいく保証もない。ソニーもオリンパスも外人社長だった。しかし、会社の良し悪しを決めるのは絶対社長だ。』

コメント
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