しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

"肉”を食う②「馬肉は美味かったなあ」

2022年03月02日 | 食べもの

(姉の話)
子どもの頃、馬の肉を売りにきょうた。
赤い肉で、自転車の後ろに茶色の籠に入れて。上の道で売っとった。
(両親が)うまい、うまい。ゆうて食べょうたから(自分も)美味い思ぅて食べょうた。
談・2002年1月3日

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(母の話)
馬肉
さっぱりして、えかったなぁ。
談・2000・12・17

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(父の話)
馬肉
正月やこに売りに来る。
秋から冬になって。夏はこん。
牛肉は高かったけぃ、たいてい吉田のほうから売りにきょうた。
安ぅておいしかった。
談・2001・2・11


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農家では牛肉を買って食べることはめったになかった。
鶏を飼っている家が多かったが、
普段は卵を食べることはなく、売って小遣いもうけにした。
古くなった鶏は料理して肉は野菜や芋と煮物に、骨は汁物のだしに使った。
「金光町史」



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牛、馬、豚肉

牛肉、馬肉、豚肉は、かつては食べなかった。
百姓は牛を大事にし「牛は百姓の福虫」といった。
牛肉をクドで煮て食べるようになったのは、大正末から昭和初めという。
馬肉や豚肉の食用は第二次大戦後のことである。

「吉永町史」 吉永町史刊行委員会編 吉永町  昭和59年発行


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"肉”を食う①予科練合格「村でこんな名誉なことはない」と兎のスキヤキ

2022年03月02日 | 食べもの



うさぎの祝い肉

(おじ=母の弟の話)

(賀山の○氏は)その親父は山で猟をする人で。
ワシが予科練に行くのが決まってから、その親父がウサギが獲れたゆうてよんでくれた。
スキヤキをしてくれた。
臭い。
臭うんじゃ。
それからウサギは一度も食べたことがない。はじめで終わりでええ(ウサギの肉は)一度で充分じゃ。

それからお寺でしてもろうたな。「頑張れ!」言うてなぁ。
「賀山から、こわあな人が出たゆうたら名誉なことじゃ。」ゆうてなぁ。
その頃はまだ。
「予科練へ行く」ゆうたら騒がりょうたんじゃ。

じゃけど・・・なにいもならん。あそこへ行ったばあに、こわんなことになってしもうた。わっはっは(笑い・・但し自嘲気味)

2003年3月20日


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(15才で入営したおじ)


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「日本食物史」 江原・石川・東四柳共著 吉川弘文館 2009年発行

「すき焼き」に使用する肉


開港以降、西洋文化を受容した日本では、それまでの肉食禁忌を急速に解き、
牛肉食をはじめ獣肉食を摂取するようになった。
それらの食習慣は、急速に受け入れられたようにみえるが、
日本地域全体の、各家庭に受け入れられることは、それほど簡単なことではなかった。
大正末から昭和初期の各地のすき焼きの摂取に調査すると、
「すき焼き」という料理名は全国に普及しており、各地ですき焼き料理が食べられていることである。
しかし、食材が必ずしも牛肉ではなく、鶏肉が使われていることも多い。
それだけではなく、ウサギ、馬肉、鯨のほか、はも、さば、ぶりなどのすき焼きもみられる。
しかしうさぎなどのすき焼きは「大ごちそう」でたびたびは食べない。


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「肉食禁止令」

7世紀、天武天皇の時代に、肉食禁止令を発令した。
背景には伝来した仏教の影響がある。
だが禁じられた動物は、
ウシ、ウマ、イヌ、サル、ニワトリの5種類だった。
もっともポピュラーな獲物だった
イノシシ、シカ、キジは対象から外されている。
こうしたことから農耕との深い関係が浮かび上がってくる。
つまり朝廷は仏教の普及に努める一方で、
農作業に使われる牛・馬などの労働力を肉食から守ろうとした。

明治維新によって180度転換する。
文明開化の一環として肉食禁止が解かれ、都会では牛鍋が流行した。
1.000年以上続いた肉食禁止は過去のものとなった。


「日本人は何を食べてきたのか」 永山久夫 青春出版社 2003年発行


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古代の日本は牛をイケニエ(生贄、犠牲)として神に捧げ、
酒を振舞い、肉を食べた。
中世以降、獣肉食の衰退は、仏教の殺生を嫌ったこと、土公神信仰の影響が大きい。

明治になって徴兵制が施され、軍隊内では獣肉食をさせた。
兵隊帰りが軍隊でおぼえた肉食を秋祭りなどでするようになり、庶民の間に広まっていった。
牛肉の鋤焼は大正中ごろ大阪でその名が起こったといわれる。
ごく新しい名称である。

「岡山の食風俗」 鶴藤鹿忠 岡山文庫   昭和52年発行


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