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Photo:ミュンヘン中央駅に到着した国際列車MIMARA号
←14:サラエボ発ザグレブ行き396列車の旅 後編からの続き
2015年8月12日
今朝は早起きして、朝一番でホテルの朝食ビュッフェをかき込んでからすぐにチェックアウト、そのまま大急ぎでザグレブ中央駅に向かう。
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早朝6時半のザグレブ中央駅、構内の片隅にある行き止まり式プラットホームには、今日これから乗る列車の編成が既に据え付けられていた。
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オーストリア鉄道とクロアチア鉄道の客車を連ねた編成の先頭に立つのは、昨日乗ったサラエボからのザグレブ行き国際列車を牽引していたのと同じ塗色のクロアチア鉄道の電気機関車。
この列車が、ザグレブ発のヨーロッパ国際特急ユーロシティ「MIMARA」号だ。
ちなみに列車愛称の「MIMARA」とはザグレブ市内にあるミマラ博物館や、その館名の由来となったクロアチア人の篤志家の名前にちなんでいるらしい。
ベルリンの壁崩壊とその後の東欧民主化革命の直後、ユーゴスラビア連邦が解体していく最中の1992年に逸早く西側との直通運行を開始した、それなりに歴史ある国際列車である。
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僕が予約しておいた1等車のドアに掲げられたサボには、ザグレブ発Villach(フィラハ)経由フランクフルト行きの表示がある。
EC212列車としてVillachまで走った後、列車番号がEC112に変わるようだ。
そしてこの1等車の客車はオーストリア鉄道所属の車輌だが、クロアチアからスロベニアを経て自国オーストリアを横断した後ドイツに入り、さらに延々とドイツ領内をひた走って遥々フランクフルトまで行くという長距離運用である事がこのサボからわかる。
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こちらはクロアチア鉄道の車輌である2等車のドアのサボ。
この客車のサボには列車番号EC212としてのフィラッハまでの駅名しか書かれていない。どうやらこの車輌はEC112にはならず、途中フィラハで切り離されるらしい。
クロアチア鉄道は自国の車輌を遥々フランクフルトまで送り込むような長距離広範囲運用は組んでいないようだ。
乗車前にこれから乗る列車の編成を組む各国の客車やサボを見てプラットホームを歩くのも楽しいが、そろそろ発車時刻なのでオーストリア鉄道の客車の1等車に乗り込む。
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コンパートメントの出入り口には、最近ヨーロッパでもあまり見かけなくなった紙の予約票の差込口が。
ちゃんと僕の予約を表すザグレブ―ミュンヘンの印字をした紙片が差込まれている。でも他の席は誰も予約しておらず空席の模様。
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これがオーストリア鉄道の1等車コンパートメントの室内。
ゆったりした大きな本革シートが備えられている。これならバルカン半島からドイツを目指す長旅も快適に過ごせそうだ。
午前7時頃、所定の発車時刻より何故か若干遅れてMIMARA号はザグレブ中央駅を発車した。
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3日前、この街に着いた時に歩いたザグレブ技術博物館のある界隈の通りと水色のトラムがMIMARA号を見送ってくれた。
さようなら、ザグレブ。また来る日まで…
ザグレブを後に、MIMARA号は一路西へ、隣国スロベニアへと向かう。
車窓には3日前に国際寝台列車LISINSKI号から見た美しい風景を再び見ることが出来る。
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国境の駅Dobovaでは僅か十数分の停車時間中に極めて速やかにクロアチアの出国とスロベニアの入国手続きが車内で行われ(クロアチアとボスニア・ヘルツェゴヴィナの国境駅での何とものんびりした出入国手続きとは凄い差だ…)、列車はザグレブ発車時の遅れも完全に取り戻して定時運行でオーストリアを目指す。
午前11時、いつの間にかオーストリア領内に入っていた列車はフィラハ駅に到着。
ここでMIMARA号はクロアチア鉄道の2等車客車を切り離し、その後更に他の列車との併合連結作業を行う。
ここでMIMARA号と連結する列車はフィラハ近郊にあるクラーゲンフルトという街から来た列車愛称無しのユーロシティEC112で、MIMARA号はフィラハから先は列車番号をEC212からEC112に変えるので、どうやらMIMARA号は愛称無しのユーロシティEC112の付属編成という扱いらしい。
鉄道好きな人なら、日本で例えると国鉄時代の寝台特急「さくら」の長崎発着基本編成に対する佐世保発着付属編成のようなものだと考えると分かりやすいかも。
さて、MIMARA号はフィラハで基本編成と連結して長い編成になり、進行方向も逆向きに変わって発車したが、どうやらクラーゲンフルト発の基本編成の方には食堂車が連結されているらしい。
ちょうどランチタイムなので、コンパートメントを出て何車輌か先の食堂車まで行ってみることにしよう。
ヨーロッパの鉄道の旅での楽しみの一つが、日本ではもう味わうことの出来なくなった食堂車での食事である。
最近はヨーロッパでも鉄道の高速化が進み、食堂車を連結しない高速列車も増えているが、オーストリア鉄道のユーロシティでは今でも食堂車が健在だった。
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とは言え、日本同様に人的サービスの削減は進んでいるらしく、EC112の食堂車を切り盛りするのはウェイターの若い男性一人だけ。
オーダーを取りに来るのも随分待たされた挙句
「ランチメニューのコース料理は全部売り切れです、アラカルトしかありませんのであしからず」と言われてしまったが、それでも本場の大きなソーセージにかぶりついて舌鼓を打ち、コーヒーを飲みながら車窓を眺めるのは鉄道の旅の醍醐味、ああヨーロッパを旅しているなという気分にさせてくれるひと時である。
そして食堂車で食事をしているうちに、MIMARA号は旅のハイライト区間に差し掛かった。
ヨーロッパアルプスの東部を登り切りトンネルで越える、タウエルン峠越えである。
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かつてこの峠を越えて走っていた豪華列車オリエント急行の末裔「タウエルン・オリエント・エクスプレス」の愛称にもなったタウエルン峠、まさにアルプスの天空を往くようなダイナミックな風景が車窓に展開する。
ザグレブまで行くときは国際寝台列車LISINSKI号で夜中に寝て通過してしまったのが悔やまれるような素晴らしい眺めに、暫し見とれる。
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タウエルン峠を貫くトンネルを抜けて、麓の高原地帯のスキー場や夏のリゾート地を眺めながら走り、アルプスの山を下ってきてしまうと、列車は午後2時に定刻にザルツブルク中央駅に到着。
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ザルツブルクを出て1時間半も走れば、もうミュンヘンに到着する。
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15:41、EC112「MIMARA」号は定刻通りにミュンヘン中央駅に到着した。
…フィラハからはまた随分と派手なラッピングが施された電気機関車「Taurus」が先頭に立っていたようだ。
EC112はミュンヘンから先もドイツ国内を走り続け、終着駅のフランクフルトに着くのは4時間後になるが、僕はここで列車を降りる。
クロアチアから遥々お疲れさま、MIMARA号。この先も終着駅まで、ご安全に!
→16:ノイエ・ピナコテークと夕暮れの駅に続く
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