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“夢と希望にあふれた宇宙” 第51回JAXAタウンミーティングin熊本に参加しました

2010-10-23 | 宇宙
JAXAタウンミーティングin熊本 会場内の様子(写真の撮影・掲載はスタッフからの許可を得ています)

平成22年10月16日(土)
JAXAの長谷川義幸執行役と中村安雄技術参与を登壇者に迎え、
“夢と希望にあふれた宇宙” と銘打って開催された、第51回JAXAタウンミーティングに参加しました。

“夢と希望にあふれた宇宙” 「第51回JAXAタウンミーティング」 in 熊本の開催について

これは筆者の地元・熊本県では初めて行われるJAXAタウンミーティングです。
今回は、折角の機会なので宇宙好きのみんなで集まろうとTwitter宇宙クラスタ内で参加を呼びかけて、皆で楽しんできました!


当日は、13:00のタウンミーティング開始時刻の30分前に熊本大学の正門、通称“赤門”前に集合…
ということにしていたのですが、JR熊本駅から熊本大学までの路線バスの時刻の関係で午前11時過ぎには到着。。。
でも、Twitter宇宙クラスタからの参加者の方もお一人、同じバスに乗っておられました。



集合時間まで、同じバスで到着された方と一緒に熊本大学の黒髪北キャンパス内にある五高記念館を見学することに。

旧制第五高等学校本館として明治22年に完成した、赤煉瓦造りの五高記念館。
内部は小泉八雲や夏目漱石といった錚々たる教師陣が教鞭をとった名門校“五高” の歴史を伝える資料館になっており、無料で一般公開されています。
また、この赤煉瓦の建屋はNHKドラマ「坂の上の雲」のロケにも使われていたそうですが…
スミマセン、僕は「坂の上の雲」を観ていないので、知りませんでした。

やがて正午になったので、赤門前へ移動。
宇宙クラスタ参加者の方々と合流して、会場の熊本大学工学部百周年記念館へ。





会場のロビーでは、ペンシルロケットがお出迎え。

受付を済ませて、分厚い資料の入った封筒を受け取ってから、さぁ
「第51回JAXAタウンミーティング」 in 熊本、開始!


主催者挨拶に続いて、
JAXA広報部の佐々木薫さんからタウンミーティングの趣旨説明とJAXA事業概要説明。
開催地の地元自治体とJAXAとの年間予算比較(これはJAXAタウンミーティングでは毎回お馴染みの解説項目。ちなみに熊本市の年間予算の方がJAXAより多い)。
近年のJAXAの活動例報告。


次に、最初の話題提供者としてJAXAの長谷川義幸執行役が登壇。

「国際宇宙ステーション『きぼう』日本実験棟完成への道」-「きぼう」・「HTV」開発の秘話-
という内容を予定していたのだが「急遽、はやぶさの話も入れます!」とのこと。おお!!

先ず、国際宇宙ステーション(ISS)の基本的な説明から。
「先日、丸の内で三菱重工とIHIとNECの人達と一緒にISSを見上げる機会があったが、一緒に見ていた人たちの表情が、空にISSが現われると一瞬で変わるのが分かった。
最後は拍手までして、その後みんなで飲みに行った(笑)
『たまにはああいうものを見るのもいいね』という話しから、『カネがないのがなぁ…』となり、『事業仕分け』の話しとなった(笑)」

「HTV」の主に自動ランデブの説明に続き、「きぼう」日本実験棟秘話。
「『きぼう』の船体に国旗の日の丸を付ける事になったが、これは苦労した!
あれは日の丸の旗を、マジックテープで直接船体に貼りつけてある
何と!日の丸は塗装ではなくて、本当に旗を貼っていたのですか!!

「『HTV』は基本的に、『きぼう』の保管庫をUpdateしたもの。
また『HTV』の制御系は、打ち上げに成功したら急に引き合いが来て売れた!」

続いて、「はやぶさ」の話題。
「(はやぶさプロジェクトの)川口PMは、いつも冷静でポーカーフェイス。これは大事なこと。
大将は常に冷静に!
「カプセルの地球帰還は、シミュレーションして代替案を出して、ようやく(地球帰還地点のある)オーストラリア政府から着陸許可を得た。
TCM(軌道修正)に失敗すると地球帰還軌道がシドニー、キャンベラといった都市部をかすめてしまうのが大問題だった。」


意見交換の質疑応答。

Q:「HTV」を有人化する構想があるが、有人化すれば重量増加が見込まれる。
それに対応して「HTV」を打ち上げるロケットの新型化などは有りうるのか?
A:有人化した「HTV」は海に降ろす計画である。現行のH-IIBロケットでは制約が出るので、新しく大型で安全なロケットが必要だ。
現在、特別枠で予算を要求中なので、応援を宜しくお願いします!
(中村安雄技術参与が引き継いで)「HTV」はモノを載せるもの。その設計をあまり変えずに、有人化できないかな、と考えている。
緊急脱出装置等の検討も必要だ。

Q:人工衛星の(搭載している時計の)時刻の同期はどうやって行っているのか?
A:(長谷川執行役)日本の人工衛星の時刻は、グリニッジ標準時を使用している。
(中村技術参与)GPS信号を利用して時刻同期しているが、技術試験衛星「きく8号」では原子時計のテストも実施した。
週一回、NASAはワシントンDCのゴダード宇宙センターでGPSの時刻をUpdateしている。
「HTV」初号機は内蔵時計の時刻がズレてヤバイことになったことも…
人工衛星の時刻Updateには20分程度かかる。これが「ボイジャー」だと(深宇宙にいるので)当然GPS信号は遠すぎて使えないし、2時間くらいかかった。「はやぶさ」はNASA-JPLのDSN(ディープスペースネットワーク)で、8~10時間軌道を測って、予測値で時刻合わせをしていた。
軌道決定予測で時刻は決まる。
「はやぶさ」の地球帰還時、NASAとJAXAとで予測値がズレるというアクシデントがあったが、帰還日2日前にピッタリと合った。

Q:衛星放送は悪天候時には画質が悪くなってしまうが、対策はとられているのか?
A:(長谷川執行役)衛星からの電波出力を大きくすればよい。最近、放送衛星の電波出力を大きくし始めた。
でも、集中豪雨時などにはさすがに… 地上の受信アンテナを大きくすればいいんですが。
(中村技術参与)超高速インターネット衛星「きずな」は通信先の天候を調べて、自分で電波出力を補正してしまう機能を備えている。

Q:ISSの老朽化後、中で実施している実験はどう引き継ぐ?
A:アメリカは2028年まで、ロシアは2040年までISSを使うつもりでいる。もう二度と、あれほど大規模な宇宙のインフラは造れないであろうという考えから、使用期間年数を可能な限り延長しようという動きがある。
2年前から、期間を実際に延長して使えるかどうか検査を行っている。
現在のところ、2028年までは持つ、とされている。更なる延長も検討中だが、後は予算次第だ。
(筆者訳注:「もう二度とISSは造れない…」という見解は、少し寂し過ぎますねぇ…西暦2010年、人類未だ木星に到達せず…)

Q:大気圏に再突入して燃え尽きる「HTV」の最期には、「はやぶさ」の地球帰還に匹敵する物語性がある。「HTV」再突入を撮影したり、日本からも再突入の様子が見えるようになど出来ないか。(そのことで、国民の宇宙への興味を喚起出来る、との趣旨)
A:かなりの費用がかかるので、実際には「HTV」大気圏再突入の撮影等は難しい。
(興味喚起という意味では)2010年度グッドデザイン賞(Gマーク)の「グッドデザイン賞ベスト15」を「きぼう」日本実験棟が受賞した
今後、古川聡飛行士が「Gマーク」をISSに持って行って、船内に貼り付ける予定
また、若田光一飛行士がISSのコマンダー(船長)を務めることになる準備も進んでいる。若田さんは非常に人望があり、アメリカでもロシアでも、若田さんのことを悪く言う人は誰もいない。
また、チリでの鉱山落盤事故にも、地下に閉じ込められた人々のためにJAXAの宇宙下着を提供した。

Q:普通の人々には、所謂「軌道」の概念が解りにくい。
宇宙における「軌道」のことが理解できると、宇宙が俄然面白くなる。JAXAのインターネット公式ホームページでも、「軌道」についての解りやすい説明をお願いしたい。
A:早速検討します。配布したアンケート用紙に記入してお渡し下さい。またJAXA広報へ、直接メールを送付下さい。

Q:日本の宇宙技術が軍事利用されることへの対策は?
A:国からも言われているので、情報管理についてはきちんと行なっています。

Q:内之浦宇宙空間観測所が仕分けされてしまわないか心配だ。
A:内之浦と種子島とで、羽田空港と成田空港のようなコラボレーションをしていく。

続いて、話題提供者の中村安雄技術参与が登壇。
「宇宙機器に求められるものとその開発」と題して講演されました。


「宇宙機器の遭遇する特殊な環境」。
全体概要と、地上での環境、打ち上げ環境、宇宙環境。
宇宙環境による宇宙機への影響。
宇宙の放射線環境。
超高真空における材料の蒸発(アウトガス)と潤滑特性の劣化、高電圧放電の発生による太陽電池等の短絡の可能性。
宇宙環境とそれらが原因となる不具合。

確実な宇宙機器開発のために
◎信頼性の高い設計
◎使用される技術の事前の十分な評価
◎十分な記録とトレーサビリティ
◎確実なものづくり
◎製品の徹底した試験
◎水平展開
◎プロジェクト管理

衛星設計標準として
1.自らの試験データに基づく明確な根拠の蓄積
2.共通的な衛星設計技術情報の集約
3.ISO等の国際的標準との連携・対応とその策定への貢献
4.他標準が適用できるものは活用

中村技術参与の講演後、再び意見交換の質疑応答。

Q:日本の宇宙機器の弱点について。「はやぶさ」はリアクションホイールのトラブルを起こしたが。
A:「はやぶさ」のリアクションホイールは米国メーカー製。リアクションホイールについては国産化が進められており、ほぼ完成した。
アメリカからの輸入品は技術情報がブラックボックスで出てこない。
日本が世界トップの分野、強いところは伸ばしていく。
リアクションホイール、太陽電池からの電力取り入れ部等は日本の弱い分野である。

Q:地方にはJAXAの広報施設が無い。また、広報としてJAXA公式ホームページ内の資料をもっと使いやすくして欲しい。
A:情報センターJAXA i は事業仕分けで廃止されるが、九州では内之浦にも宇宙科学資料館がある。(あそこは遠すぎるよ!と会場から一斉に声があがる(笑))
各自治体に科学館等もあるが、この問題についてもJAXA広報に具体的な記述でメールを下さい。対応します。

ここで筆者も質問しました。
筆者Q:先程、リアクションホイール国産化の話題が出たが、国産のリアクションホイールは既存の米国製リアクションホイールのコピー的なものなのか、それとも日本製ならではの付加価値的機能を持ったものなのか。
また、「はやぶさ2」には国産リアクションホイールが搭載されると理解していいのか。
A:米国製リアクションホイールの完全コピーなどかえって難しすぎて、そんなこと不可能。
国産リアクションホイールは、全くのオリジナル設計である。
大中小と、サイズごとに3種類のリアクションホイールが完全国産化される。
「はやぶさ2」については、米国産リアクションホイールが搭載される。
(筆者訳注:なるほど日本の技術を以てすれば、無理して既存品のコピー的な製品を作るより完全にまっ更のオリジナル設計でさっさと作ってしまったほうが手っ取り早いのですね。
また、「はやぶさ2」については時間的予算的制約から基本的に「はやぶさ」の設計をそのまま踏襲するしかないですから、米国製リアクションホイールを使わざるを得ないのでしょう。でも、前回のホイール停止トラブルの原因をしっかりと消し込んで「改善」を施して欲しいと思います!がんばれ「はやぶさ2」!!

以上、2時間半ぶっ通しで熱く濃密な意見交換を重ねた“夢と希望にあふれた宇宙” 「第51回JAXAタウンミーティング」 in 熊本は、最後まで会場の熱気冷めやらぬまま無事終了!
熊本初のJAXAタウンミーティングは大成功で幕を閉じました。
皆さん、今日は本当にありがとうございました、お疲れ様でした!

そして、その後我々宇宙クラスタは…

「乾杯~!いただきまーす!!」
JAXAタウンミーティング会場の熊大黒髪キャンパス近くにある博多鉄板よかろうもんさんで、打ち上げ・懇親会に突入です!
このお店、熊本地区のTwitterオフ会の定番なんだとか。
宇宙を話題に懇親会をキャッキャウフフと楽しんで、宇宙クラスタのJAXAタウンミーティングin熊本は名残を惜しみつつお開きとなりました。

「次々回のJAXAタウンミーティングは宮崎県宮崎市で開催されるよ!またみんなでタウンミーティングに行こうよ!」
(JAXAタウンミーティングレポート:終)