写真:夕暮れ時の「いさぶろう」「しんぺい」車内
←秋の乗り鉄'09 SL人吉に乗ろう!からの続きです
「SL人吉」で人吉に着いたら、そのまま一目散に跨線橋を駆け登って第3セクター鉄道「くま川鉄道」の人吉温泉駅に向かいます。
ここから乗り継ぐ列車は、くま川鉄道が「SL人吉」運行開始に合わせて登場させた観光列車「KUMA」。
「SL人吉」と同じく「ドーンデザイン研究所」の水戸岡鋭治さんプロデュースの、こちらも注目の列車です。
ちょうど今日は肥薩線100周年と、くま川鉄道開業20周年を記念した「百年レイル観光フェスタ」が開催されており、
「SL人吉」に接続する12:27発の「KUMA」はトレインカフェ”KUMA”くま鉄トレインピクニックと銘打って車内をカフェに見立てたイベント列車として運転されていました。
事前に申し込んでおけば、飲み物やお菓子が振舞われたようです。喫茶店列車なんて楽しそうだなぁ。
申し込んでおけば良かった、残念!
でも、くま川鉄道は太っ腹。
トレインカフェに申し込まずに乗り合わせた乗客にも、全員につきたての紅白餅が配られました。
発車前にくま川鉄道の乗務員の方々が駅前でつかれたそうです。
さっそく食べてみたけど、本当につきたてで柔らかくておいしかった~。ああ満足。
おいしい思いをしながら、「KUMA」は球磨盆地を走ります。
社名にもなっている球磨川を渡り…
色づいた稲穂の中を往きます。
コスモスも咲いていますね。
13:12、終着駅の湯前に到着。
次々下車する乗客の皆さんの中に、なんとこの「KUMA」を手掛けたデザイナー水戸岡鋭治さんの姿が!
トレインカフェに参加されていたのでしょうか?
湯前駅は元々は国鉄湯前線の駅でした。駅舎は今でも国鉄時代のままのようですね、良い雰囲気です。
湯前駅からは再び「KUMA」に乗って引き返しますが、折り返し列車の発車まで暫らく時間があるので停車中の「KUMA」の車内をじっくり観察。
「KUMA」には「KUMA1」と「KUMA2」の2輌がありますが、それぞれインテリアが異なります。
こちらは「KUMA2」の車内。
「SL人吉」の車内とよく似たイメージの、ボックス席が並びます。
こちらは「KUMA1」の車内。ロングシートです。
でも、ロングシートと云えども並んでいる座席はこの通り!
座席はしっかり創り込まれた、上質な「家具」です!
このベンチソファなんか、お洒落なカフェやリゾートホテルのロビーに置かれているような仕上がり!
地方のローカル線の車内でここまでやるか、水戸岡デザイン!
最近のドーンデザイン作品では御馴染になった車内ミニ図書館。
本棚には九州の山野の自然に関する資料が並びます。
図書館コーナーの先には、何と本物の植物標本が展示されています。
「これは…最早、走る博物館だー!」
実際そういうコンセプトがあるようで、くま川鉄道ではこの「KUMA」をもって「自然博物館列車」を標榜しています。
然(さ)もありなん。
(でも、この標本には解説文も併記してあればもっとよかったね)
13:40、「KUMA」は人吉温泉駅に向けて湯前駅を発車。
このまま人吉温泉駅まで行けばJR人吉駅から熊本へと折り返す「SL人吉」に乗り継げますが、途中の多良木駅で下車。
駅前の多良木町交流館石倉。
今日はここで「百年レイル観光フェスタ」の関連イベントとして九州遺産観光セミナー「トークショー鉄道観光新時代」と銘打ち、
水戸岡鋭治先生も出席されてのトークショーが行われるのです。
水戸岡さんはこのトークショーの前にご自分の作品の仕上がりを確認する為に「KUMA」に乗られてたんでしょうね。
トークショーの様子。福井弘さん提供のC10型機関車の写真。 ※スタッフの方から了解を得て会場の写真を掲載しています
トークゲストは水戸岡さんの他、地元熊本県の鉄道愛好家・小澤年満さんと福井弘さん。鹿児島のNPO法人代表・東川隆太郎さん。田中信孝人吉市長と、九州運輸局の加藤進さん。司会はオフィスフィールドノート代表・砂田光紀さん。
正直、水戸岡さんの話が聴きたくて参加したのだけど、トークゲストの皆さんがそれぞれ熱い「鉄心」を持つ方ばかりなので、お話が面白い!
消えてゆく蒸気機関車の動態保存を夢見て「自費でC11を1輌買ってしまった」小澤さんの苦労話と思わぬかたちでの夢の実現までの感動秘話、
郷土史学的にも価値のある鉄道写真を撮り続けている福井さんの楽しい撮影裏話、
軽妙な口調で博物学的・民俗学的観点から九州の鉄道をアカデミックに語る東川さん、
皆さん素晴らしい「鉄ちゃん」たちでした。
ここで一旦休憩。
地元人吉のお菓子屋さん提供のケーキと「可否館」の自家焙煎コーヒーが参加者に振舞われます。太っ腹!
水戸岡鋭治先生の作品紹介 ※スタッフの方から了解を得て会場の写真を掲載しています
続いて砂田光紀さん司会で、水戸岡さんの鉄道デザイン哲学を軸にしたトーク。
「鉄道デザインにおいて大人の最高の環境を提供する。」
「大人の真面目さ、緊張感は子供にも伝わる。だから車内を(悪戯で)傷つけられることも無くなっていく。」
「大人が変わらないと、子供も変わらない。」
「個人のレベルを変えるには、自分の考えを伝える『コミュニケーション力』が必要。自分の考えをハッキリと持つ『自我の確立』が出来ないと、何も出来ない。」
「みんなで努力して、もっと楽しい日本に。」
この一言に、水戸岡さんとドーンデザイン研究所の産み出す鉄道車輌の真意が凝縮されていますねぇ!
水戸岡デザインの目指すものの何たるかを理解することにつながる、有意義なトークショーでした。
夕焼けの多良木駅から、また「KUMA」に乗って帰ります。
秋の夕陽を浴びて輝く「九州横断特急」が停車中のJR人吉駅に到着。
JR人吉駅から17:36発の八代行きの普通列車に乗り継ぎますが…
この列車、ただの鈍行ではありません。
日中は人吉駅と吉松駅の間を走っている大人気の観光列車「いさぶろう」「しんぺい」号の車輌が熊本の車両基地に帰るための回送を兼ねているので、豪華な観光列車に「あいのり」出来るという知る人ぞ知る乗り得列車なのです!
これが「いさぶろう」「しんぺい」の車内。
水戸岡さんの「大人の本気」が光る、素晴らしいインテリアデザインです。
デザイナー水戸岡鋭治の描き出す鉄道デザインの世界にどっぷりと浸って、今回の旅を締め括ります。
こんな素晴らしい哲学を持った列車が縦横無尽に行き交う九州という地に住んでいることを嬉しく思えた、そんな1日でした。
←秋の乗り鉄'09 SL人吉に乗ろう!からの続きです
「SL人吉」で人吉に着いたら、そのまま一目散に跨線橋を駆け登って第3セクター鉄道「くま川鉄道」の人吉温泉駅に向かいます。
ここから乗り継ぐ列車は、くま川鉄道が「SL人吉」運行開始に合わせて登場させた観光列車「KUMA」。
「SL人吉」と同じく「ドーンデザイン研究所」の水戸岡鋭治さんプロデュースの、こちらも注目の列車です。
ちょうど今日は肥薩線100周年と、くま川鉄道開業20周年を記念した「百年レイル観光フェスタ」が開催されており、
「SL人吉」に接続する12:27発の「KUMA」はトレインカフェ”KUMA”くま鉄トレインピクニックと銘打って車内をカフェに見立てたイベント列車として運転されていました。
事前に申し込んでおけば、飲み物やお菓子が振舞われたようです。喫茶店列車なんて楽しそうだなぁ。
申し込んでおけば良かった、残念!
でも、くま川鉄道は太っ腹。
トレインカフェに申し込まずに乗り合わせた乗客にも、全員につきたての紅白餅が配られました。
発車前にくま川鉄道の乗務員の方々が駅前でつかれたそうです。
さっそく食べてみたけど、本当につきたてで柔らかくておいしかった~。ああ満足。
おいしい思いをしながら、「KUMA」は球磨盆地を走ります。
社名にもなっている球磨川を渡り…
色づいた稲穂の中を往きます。
コスモスも咲いていますね。
13:12、終着駅の湯前に到着。
次々下車する乗客の皆さんの中に、なんとこの「KUMA」を手掛けたデザイナー水戸岡鋭治さんの姿が!
トレインカフェに参加されていたのでしょうか?
湯前駅は元々は国鉄湯前線の駅でした。駅舎は今でも国鉄時代のままのようですね、良い雰囲気です。
湯前駅からは再び「KUMA」に乗って引き返しますが、折り返し列車の発車まで暫らく時間があるので停車中の「KUMA」の車内をじっくり観察。
「KUMA」には「KUMA1」と「KUMA2」の2輌がありますが、それぞれインテリアが異なります。
こちらは「KUMA2」の車内。
「SL人吉」の車内とよく似たイメージの、ボックス席が並びます。
こちらは「KUMA1」の車内。ロングシートです。
でも、ロングシートと云えども並んでいる座席はこの通り!
座席はしっかり創り込まれた、上質な「家具」です!
このベンチソファなんか、お洒落なカフェやリゾートホテルのロビーに置かれているような仕上がり!
地方のローカル線の車内でここまでやるか、水戸岡デザイン!
最近のドーンデザイン作品では御馴染になった車内ミニ図書館。
本棚には九州の山野の自然に関する資料が並びます。
図書館コーナーの先には、何と本物の植物標本が展示されています。
「これは…最早、走る博物館だー!」
実際そういうコンセプトがあるようで、くま川鉄道ではこの「KUMA」をもって「自然博物館列車」を標榜しています。
然(さ)もありなん。
(でも、この標本には解説文も併記してあればもっとよかったね)
13:40、「KUMA」は人吉温泉駅に向けて湯前駅を発車。
このまま人吉温泉駅まで行けばJR人吉駅から熊本へと折り返す「SL人吉」に乗り継げますが、途中の多良木駅で下車。
駅前の多良木町交流館石倉。
今日はここで「百年レイル観光フェスタ」の関連イベントとして九州遺産観光セミナー「トークショー鉄道観光新時代」と銘打ち、
水戸岡鋭治先生も出席されてのトークショーが行われるのです。
水戸岡さんはこのトークショーの前にご自分の作品の仕上がりを確認する為に「KUMA」に乗られてたんでしょうね。
トークショーの様子。福井弘さん提供のC10型機関車の写真。 ※スタッフの方から了解を得て会場の写真を掲載しています
トークゲストは水戸岡さんの他、地元熊本県の鉄道愛好家・小澤年満さんと福井弘さん。鹿児島のNPO法人代表・東川隆太郎さん。田中信孝人吉市長と、九州運輸局の加藤進さん。司会はオフィスフィールドノート代表・砂田光紀さん。
正直、水戸岡さんの話が聴きたくて参加したのだけど、トークゲストの皆さんがそれぞれ熱い「鉄心」を持つ方ばかりなので、お話が面白い!
消えてゆく蒸気機関車の動態保存を夢見て「自費でC11を1輌買ってしまった」小澤さんの苦労話と思わぬかたちでの夢の実現までの感動秘話、
郷土史学的にも価値のある鉄道写真を撮り続けている福井さんの楽しい撮影裏話、
軽妙な口調で博物学的・民俗学的観点から九州の鉄道をアカデミックに語る東川さん、
皆さん素晴らしい「鉄ちゃん」たちでした。
ここで一旦休憩。
地元人吉のお菓子屋さん提供のケーキと「可否館」の自家焙煎コーヒーが参加者に振舞われます。太っ腹!
水戸岡鋭治先生の作品紹介 ※スタッフの方から了解を得て会場の写真を掲載しています
続いて砂田光紀さん司会で、水戸岡さんの鉄道デザイン哲学を軸にしたトーク。
「鉄道デザインにおいて大人の最高の環境を提供する。」
「大人の真面目さ、緊張感は子供にも伝わる。だから車内を(悪戯で)傷つけられることも無くなっていく。」
「大人が変わらないと、子供も変わらない。」
「個人のレベルを変えるには、自分の考えを伝える『コミュニケーション力』が必要。自分の考えをハッキリと持つ『自我の確立』が出来ないと、何も出来ない。」
「みんなで努力して、もっと楽しい日本に。」
この一言に、水戸岡さんとドーンデザイン研究所の産み出す鉄道車輌の真意が凝縮されていますねぇ!
水戸岡デザインの目指すものの何たるかを理解することにつながる、有意義なトークショーでした。
夕焼けの多良木駅から、また「KUMA」に乗って帰ります。
秋の夕陽を浴びて輝く「九州横断特急」が停車中のJR人吉駅に到着。
JR人吉駅から17:36発の八代行きの普通列車に乗り継ぎますが…
この列車、ただの鈍行ではありません。
日中は人吉駅と吉松駅の間を走っている大人気の観光列車「いさぶろう」「しんぺい」号の車輌が熊本の車両基地に帰るための回送を兼ねているので、豪華な観光列車に「あいのり」出来るという知る人ぞ知る乗り得列車なのです!
これが「いさぶろう」「しんぺい」の車内。
水戸岡さんの「大人の本気」が光る、素晴らしいインテリアデザインです。
デザイナー水戸岡鋭治の描き出す鉄道デザインの世界にどっぷりと浸って、今回の旅を締め括ります。
こんな素晴らしい哲学を持った列車が縦横無尽に行き交う九州という地に住んでいることを嬉しく思えた、そんな1日でした。