1月も10日を過ぎると、この地方では小正月
の行事が行われる。色々珍しいものがある
が、なかでもダンゴ木の飾りつけが懐かしい。
その地方によって呼び方も多様である。餅
花と呼ばれることもある。ある地方では12日
か13日になって、雪の積もった山から木を切
り出し、だんごや餅を生らせる。切り出してく
る木はエノキかミズキである。木は茶の間の
中柱の上の方に飾られる。一度、村山市大
久保の蕎麦屋で見たことがあるが、蕎麦を食
べる食卓の方までせり出していて、その大き
さに驚いたものである。
また、木に成らせた餅や団子は、冬に家にい
る田の神に供え、家の人たちがともに食べる
神事ともなっている。今では、木に生らせて
発泡スチロールに着色したダンゴや鯛などだ
が、それでもかつての風習が偲ばれる。農業
は神の助けがなければ、いつ災難で苦境に
陥るか分からない、厳しい生業であった。飽
食の時代になっても、この小正月の行事を見
て、日本人が生きのびてきた過去をしっかり
と心の刻んでおくべきである。