馬酔木に関して、自分の知識は甚だ心もとない。第一、この読み方にしたも、「あしび」か「あせび」かはっきりしない。その上、この花がこんなに早春の花であったことも、今頃になって気づいている。何かで読んだ記憶で、この葉は有毒で、馬が食べると酔ってふらつく、というのがある。少し調べてみると、「あしびきの」という枕詞は山かかるもので、大和地方から九州のにかけて自生することが多いためという解説もあった。芭蕉の句にも「馬酔木は馬に喰はれけり」というのがあったような気がする。
あしびきの山行きしかば山人の
我に得しめし山づとぞこれ (万葉集巻20・4293)
ここで詠まれた山人について、伊藤博の言及がある。山村の守護神を祭り、村人をも統括する山の神人。つまり仙人であると言う。そして山づとは恐らく杖であろうと述べている。往時、杖は邪悪なものを払う呪物の役割があった。
山に自生する馬酔木は3㍍もになる大木らしい。このあたりでは庭や公園に植えられているが、灌木のような小さな木が多い。白い花が多いが、このような赤い花は、紅アシビと名付けられているようだ。
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり 水原秋櫻子