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昨夜の雪は通りに積もることはなかった。標高471mの千歳山の雪化粧が見られた。うっすらとしているので、陽が登るにつれて融けてしまうような気がする。予報を見ると、来週の1週間には雪マークがついている。例年に比べて早いが、本格的な雪の季節を迎える。屋根にもうっすらと雪が積もった。ふと思い出すのは、蕪村が描いた「夜色楼台雪万家図」である。
冬ごもり壁をこころの山に倚る 蕪村
旅に生きた芭蕉に対して、蕪村は冬ごもりの達人とも言われる。冬ごもりしている家の壁を、山ふところの草庵と想像して冬を過ごそうという、句だ。芭蕉に「冬籠りまたよりそはん此はしら」という句があるが、その句を意識してこの句は生まれた。
桐火桶無弦の琴の撫でごころ 蕪村
冬ごもりする蕪村の傍には、火桶がありその灰のなかに埋火があった。火桶の桐は丸くほんのりとあたたかい。冬の孤独をまぎらわせる、格好の道具でもあった。蕪村の弟子であった月渓が描いた「蕪村翁像」という一幅がある。頭でっかちの老蕪村が火桶の火箸に手をかざし、背を丸めて、火桶の向こう側に広げた書物を見るともなしに思いに耽っている姿である。埋火には薬缶をかけ、また煮物の鍋もかけたであろう。直火でなく、灰のなからの遠火が、白湯や煮物の味を深くさせた。