松の内も明けて今日は十日市、初市の
日である。冬の気圧配置が後退して、
東の方から高気圧が張り出し、青空も見
えてきた。我が家の北西の方角には、葉
山がどっしりとした姿を見せる。同じ方角
にあるまどやかな白い月山とは対照的な
姿を見せる。冬晴れの日にならないと、
なかなかお目にかかれない姿だ。城下町
であった山形市は、街ごとに市が開かれ、
十日に市を開くのは、十日町と呼ばれた。
いまもこの日に市が開かれ、正月十日は
初市が開かれる。初飴や、近在の村から
杵や臼、包丁、まな板など生活用品が売
り出され、縁起物を買い求める人であふ
れる。
谷崎潤一郎の『細雪』に出てくる十日戎
には、大きな福笹に、張り子の小判、米
俵、大福帳、はぜ袋などが下げられ、縁
起物として戎さんの買い物の目的であっ
た。はぜ袋というのは、白米をドンという機
械で爆ぜさせたものに砂糖を加え、食べ
る菓子を入れた袋である。京都の街のこ
んな風習が根付いたものが初市である。
思えば山形市の商店街には、かつて日本
海航路で交易のあった近江商人が、出し
た老舗がいまも店を張っている。この街は
京文化との深い水脈でつながっている。