常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

春の味

2024年03月27日 | グルメ
春の雪の日のあとは、気持ちのいい青空。車のタイヤ交換をする。冬タイヤから、夏のタイヤに替えると、運転も軽やかになる。青空に誘われて、近くの空き地にフキノトウを探した。日かげでは、まだ出始めたばかりのフキノトウを10個ほど、フキ味噌にして春の香りを味わう。やはり摘みたてのものは、春の懐かしい香だ。この季節に出会える春の味覚だ。渡辺隆次に『山のごちそう』という本がある。この人は画家で、1ページ分を18個ほどの成長途上のフキノトウが描きわけてある。フキ味噌の作り方も丁寧に紹介されているが、珍しいフキノトウの漬物が紹介されている。

「味噌と酒粕の同量を、少々の酒でよく合わせ、漬け床を用意する。そこへさっと茹でたフキノトウを冷まして水気を切り。床へ漬けこむ。数時間後が食べごろだが、取り出すのを忘れあめ色に馴染んだものもそれなりにイケる。土の香りを失わないために、砂糖や味醂は使わない。」とある。これはおそらく酒の肴にうってつけだろう。この春は、こんなフキノトウの食べ方も試してみたい。

知人から朝どりのニラをいただいた。路地ものが出るはずもないが、ハウスのなかで育てたものということであった。卵とじにして食したが、この食感はやはり春の一番採りでなければ得られない。野菜作りとしていた時分、一番に伸びてきたニラを思い出す。
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塩麹

2023年01月16日 | グルメ
麹には古い歴史がある。紀元前から用いられたもので、中国から伝えられたと言われている。和食に欠かせない、味噌、醤油、酒は麹を使って初めてできる。麹のよさは、古くから語り伝えられている。米を蒸し、麹菌を加えると、菌糸をのばして生育する。こうしてできるのが、米麹だ。この時、麹菌は酵素を生産する。多種類の酵素を生産するが、そのなかで大きな働きをするのが、澱粉を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するプロテアーゼという酵素だ。アミラーゼは澱粉を分解して糖を作り、プロテアーゼはたんぱく質を分解してアミノ酸を作り出す。食物の甘みや独特のうま味のもとがこの酵素の働きで生成される。

麹がおいしいというのは、すでに体験済みである。塩麴をまぶしてつけおいた鶏の胸肉はやわらかく、これを食べる度に感動する。高価な米沢牛や三元豚の肉に負けないおいしさだ。今日、格安の素材、エノキ茸のタラコ合えを試してみた。市販のエノキ1パック。タラコ1/2腹、塩麹小匙1。エノキは食べやすい大きさに切り、タラコ一腹を皮から出し塩麴小匙1杯を混ぜておく。エノキはフンワリと皿に盛り、ラップし 電子レンジ1分加熱。エノキが温かいうちに調理済みのタラコをかけ、まぶす。食べてみて、びっくりするような美味しさだ。コストパフォーマンスがよく、食べておいしいのであれば、さらにバリエーションを広げてこれからの食生活を豊かなものにしていきたい。
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山形セルリー

2023年01月03日 | グルメ
正月2日に食べるわが家の定番はトロロ汁である。北海道の生家の風習をそのまま受け継いでいる。長芋と長生きが語呂合わせになって縁起のいい食べ物とされてきた。何よりも、食糧難の戦後、麦飯にトロロ汁を掛ければ何杯でもお代わり自由であった。縁起ものというより、飢えたお腹を満たす格好の食事であった。今年は、正月の食卓にセロリが初めてのった。山形のJAでは、山形セルリーと命名してブランド化を図っている。恥ずかしながら、このセロリを気にはかけていたのだが、実際に食するのは初めてである。食べてみて食感といい、香りといいセロリの常識を変える食べものであった。とにかく美味しい。

セロリの葉は生食には用いられない。この野菜は薬用に使われ、イタリアの農村で改良されて、食用野菜になった。その香りはスープにするのがふさわしい。根に近い茎の部分を薄くスライスしてサラダにする。他の野菜を一緒に用いることで、セロリの特性が生きる。だが、山形セルリーは、芯の方の葉も、茎の部分もそのままガリガリと食べておいしい。マヨネーズをつけて食べるのもあり。こんな食材を何故もっと早く用いなかったのか、ただ残念だ。

セロリのスープのレシピ。セロリ数茎を小口切り、玉ねぎ3個薄くスライスしてオリーブオイルで炒める。玉ねぎがカサが減るまで炒め、しんなりしてきたらセロリを加えて炒める。セロリが柔らかくなったらそば粉を大さじ1杯を加え混ぜ合せる。更に鶏ガラスープ6カップを加えて30分煮込む。煮汁を少しボールにとってブルーチーズ100gを入れてどろどろにする。火はすでに弱火、チーズが入ったら、塩と胡椒で味付けをしてできあがり。チーズに塩味があるので味見をしながら調整する。
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次年子そば

2022年12月14日 | グルメ
大石田の次年子へ友人と蕎麦を食べに行った。1300円で食べ放題。ワラビの一本漬けとキクラゲ、キュウリ漬けが出て、お椀入りの蕎麦はお代わり自由。普通の蕎麦店なら1椀は盛り蕎麦1枚と見ていい。豪の者は、5杯、6杯と行くが、今日は自分と友人が3杯半、一緒の女性が2杯。辛味大根の汁が入ったツユがサッパリして食欲をそそる。数年前に来た時は1杯1000円であったが、蕎麦の風味は記憶と違っていない。食べた量も、当時とほぼ同じだ。雪のなかの山中の蕎麦店だが、平日でも10人近くの客がいた。

次年子は葉山の東北に位置し、大浦口、山内、川前から入るがいずれも峠を越える近づき難い山村である。大同2年に、秋田からお里という婦人が入村し、箕造りを伝えたという伝説がある。この技術は、狭い村のなかだけで受け継ぎ、門外不出の技術であった。箕とは、竹で編んだバスケットの形をし、ここに米の実と、付随する殻や不要な小片を中に入れ、風にあてながら振るって穀物だけを残す、選別の手作業用具だ。機械化が進んだ現代では、もう見られない懐かしい道具である。次年子のような山村で、平安の昔から連綿と受け継がれて来た箕造り。戦後の30年位まで続いたであろう。

集落のなかで箕を一家で手分けして箕を作り、稲刈り前の時期に、箕を持って農家を廻るのは男の仕事であった。農村に入ると、懇意にしている家に泊りこんで、古い箕の修理と持ってきた箕を売る。ただ、集落にだけある箕造りの技術を、他出させない約束が色々とあった。入り婿した集落の者は、箕を作るのは集落に帰ってしなければならなかった。箕と炭焼き。加えて、集落の山地を開墾して少しづつ田畑増やす。昭和の時代には、ここは40戸ほどに分家を増やしていた。箕が廃れてて、蕎麦を生業とする家ができたが、この山中まで客を呼ぶのは容易ではない。自家製の蕎麦粉と手打ち、そして食べ放題という、この地独特の蕎麦屋が口伝えに広がっていく。宮城や福島など隣県と、山形方面から、客が来るようになった。


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みそ汁礼賛

2022年09月18日 | グルメ
早朝の散歩が気持ちいい。2日前、小さな蕾だったヒガンバナは、花茎を伸ばし、2輪ほど花を咲かせていた。外の空気が気持ちよいこともあるが、この年まで元気でいられるは、毎朝食する一椀のみそ汁だと思っている。日本アルプスの山小屋で、朝食はご飯とみそ汁がおかわり自由であった。チームのリーダー曰く、「みそ汁をおかわりしてしっかり飲んで。元気がつきますよ。」みそ汁を元気のもとと意識したことはなかったが、丼飯には、やはりみそ汁があうようだ。

かって、みそ汁の調査が行われてことがある。みそ汁をいつも飲む人は、飲まないひとに比べて胃がんで死ににくく、心臓病や肝硬変などの死亡率が低いという結果でたという報告がある。わが家今朝のみそ汁は、具に先日山から採ったヒラタケ、ブロッコリーの茎の柵切り、豆腐。できたみそ汁を一つかみのモッツァレラチーズを入れた椀ににそそぐ。チーズは溶けるが、みそ汁のうまみを損なわず、チーズのコクがそのままプラスされる。長年、家事を担当する妻が、出汁や具を吟味したおいしい一椀のみそ汁を添えて、毎朝の食事を活力のもとにしてくれる。ありがたいことだ。

塗盆に千本しめじにぎわしや 島田的浦

みそ汁は、日本人が食べるようになったのいつ頃か。万葉集の巻16に水葱(なぎ)の羹が詠まれている。水葱はミズアオイ科の一年草で、葉を食用にする。当時は大変安く手にはいり、羹つまり、汁に入れて食べた。

醤酢に蒜搗きあてて 鯛願う 我にな見せそ水葱の羹は(万葉集巻16・3829)

醤は小麦と大豆から麹をつくりそれに塩水を加えて発酵させた。味噌の原型である。これにノビルの葉や茎を入れてタレにし、鯛の刺身にかけた宴会料理。万葉の時代では、貴族が食したものであろう。一方、水葱の羹に醤を加えれば、みそ汁になる。庶民が食べる安価で健康によい食べものであった。歌は、鯛の刺身に醬タレを食べることを願う。いつものみそ汁は出さないでくださいよ、と宴会での食べ物を愛でたものだ。

万葉の時代から、誰でもが食べたのがみそ汁。その食習慣は、飽食の現代に続いている。日本人の、長生きのもとこそは、みそ汁だと言ってもいいのではないか。
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