常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

初雪

2023年11月30日 | 日記
11月の終りに、初雪になった。ベランダの向こうに、大粒の雪が舞い降りている。数日前、山形気象台で初雪が観測されたと発表があったが、こうして目の前に降ってくるのは、この冬初めてだ。いま亜熱帯の国々から、多くの観光客が来日しているが、この人々にも雪は珍しいものらしい。初めて見る雪に感動する人も多いようだ。道路に雪が積もるまで、身体を冬の日に馴らすまで、冬ごもりの日々が始まる。

冬ごもり壁を心の山に倚る 蕪村

この冬も、雪の里山に雪を踏みに行く。その頃は、身体も雪に馴れ、カンジキで踏む雪の感触が楽しい筈だ。昨日、NHKのbsで、「メメントモリ」、死を考える番組を見た。次第に体内の細胞を再生する機能が失われて、食べ物を消化して細胞に栄養に行き渡らすことができなくなって死を迎える。いわゆる老衰は、死因の3位にまでなっている。人間には5年ほど、死の準備期間がある。死を考えるようになって、感謝の心を持つようになる。ニュースでは強盗、詐欺、殺人など暗い話ばかりだが、久しぶりにいい番組を見た。 

 途上 丸山薫
日が暮れかかる
雪からはまたも光が浮き上ってくる
薄明に似たあの妖しい光が

光は瞳に沁みる
私には雪が見えなくなる
あたりの風景も見えなくなる
茫としてただ真珠色の耀きのなかを歩いてゆく

私はどこを歩いているのだろう
私はもう雪の上にいない
一路 北へ指す私の人生を歩いてゆくのだ

人生の途上で
私は二つ三つ寒い咳をする

戦時中、山形県の月山の麓、岩根沢に疎開し、そこで小学校の教員をしながら詩作に励んだ。「途上」はその時の詩。雪や光のなかで、想像の道を歩いている。それは、この人の人生そのものではないか。 
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あとひと月

2023年11月29日 | 日記
見納めと思っていた公園のモミジが残っている。寒気が入ってきたが、平地の積雪がなく陽ざしが届く日もあった。近くの里山でも、紅葉した木々が最後の光彩を見せている。例年であれば、冬支度をした山の姿をみられるが、今年は紅葉の景色が遅くまで見られる。暦はどんどん進んで、今年もあとひと月を残すばかりになった。『日めくり四季の』を開くと、この季節を詠んだ俳句に

しぐれけりはしり入りけり晴にけり 惟然

ここ数日の日々の過ぎ方をみごとに表現している。エアコンの暖房を入れ、蒲団の足元に湯たんぽを入れる日々だ。こうして、今年も慌ただしく暮れていく。寝づらかった季節が過ぎ、朝、蒲団から離れるのが辛い日々となった。寝入りはなに、「眠れる昔話」をイヤホンで聞きながら入眠する。昨夜は、シンデレラ姫の物語であった。灰かぶり姫の境遇を聞きながら、夜会のパーティーで王子に見染められる話を聞きながらいつの間にか、安心して寝入っていた。

西野精治『最高の睡眠』を読了。この本では、覚醒と睡眠が一体のものとして捉えられ、よい目覚め、覚醒スイッチについて一章を設けている。光と体温が覚醒のスイッチであることを説いている。朝の光を浴びて、冷たい水で手や顔を洗ったあとの朝食の大切が語られている。

朝食には、体温をを上げ、一日のリズムを整えて活動を始めるのエネルギーの補給という役割がある。体内時計をリセットし、咀嚼することで脳に刺激が伝わる。みそ汁は身体を温めて、覚醒を助けてくれる。

この本を読んで、自分の生活パターンが理にかなったものである、という自信が深まった。みそ汁には毎日2個ずつの、冷凍牡蠣を入れている。業務スーパーで1㌔のものを買うが、ほぼ倍額の値上げが痛い。だが、健康のためには、これを省くわけにはいかない。
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見納め

2023年11月24日 | 日記
今夜、この冬一番の寒気が入ってくる。明日の朝、眼が覚めると、一面の雪景色になっているかも知れない。秋に、きれいな紅葉を見ないまま、公園のもみじが今年の見納めになるかもしれない。この季節は、京都のお寺などの紅葉の見ごろの筈だが、こんなに北の地域でも記憶に残しておきたいようなもみじが見られる。幸運というべきか、異常というべきか。東京では、25℃を超えて、上着を脱ぐ人が続出している。何はともあれ、目に止ったモミジの写真が撮れた。

陽が沈むのが早くなった。淡い夕焼けのなかで、空がうす暗くなって、里山の姿がくっきりと見えるのがいい。川端康成は、こんな景色を文にする名文家であった。

東京の日の入りは四時半ごろ、11月のなかばである。
午前は晴れて、午後は薄雲の出る日が二、三日つづいた。
 ほんとに薄い雲で、入日の西空は、雲が夕もやに溶けこんでいた。しかし、もやの夕やけに微妙な色あいのあるのは、雲のせいらしかった。
 夕やけの空は煙るように垂れて、昼間の温かさを、ぼうっと甘くつつんでいたが、そのなかにも秋の夜冷えが通りはじめたいた。夕焼けのあかね色も、ちょうどそんな感じだった。」(川端康成『舞姫』)

東京、皇居付近の、日本らしい景色のなかで、戦後日本の家族の物語が語られる。昭和の時代が、小説のなかに浮彫にされる。自分の生きた時代が、そのなかに閉じ込められているような気がする。
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小雪

2023年11月22日 | 日記
今日、24節季の小雪。雪の季節ではあるが、まだ少ない、そんな季節だ。だが、空は晴れ渡り、気温も20℃と、この季節にしては暖かい。セーターだけで歩いても、汗ばんでくるような陽気だ。予報によると、週末からは寒気が入り、小雪らしい気候になるらしい。山の会の予定があるが、実施が難しい状況だ。午後になって、昼の月が出た。白くきれいな上弦の月だ。日が沈むと、月は明くるさを増し、光りが地上を明るく照らしていた。

やはらかき身を月光の中に容れ 林信子

睡眠のことが頭を離れない。夜中に目を覚ましたり、寝つきが悪い日もある。よく眠れた日は体調がよく、運動をすることが楽しい。反対に、十分な睡眠でなかった日は、身体が重く、何をするにも積極的になれない。ブックオフに寄るたびに目についた睡眠に関する本を買っている。最近買った本だけでも、スタンレー・コレン『睡眠不足は危険がいっぱい』、三橋美穂『睡眠メソッド100』、遠藤拓郎『快眠セラピー』などなど。どれも興味深く読んでいるが、書いてあることを理解しても、まだ満足のいく睡眠は得られない。高齢になると、睡眠が浅くなることとことが関係しているのかも知れない。昼食後、眠気がさして、テーブルで居眠りをするようになっている。老齢になってわが家に住むようになった母が、テレビを見ながら居眠りを姿をよく見たが、自分も同じようになったと感じている。

今日、買ってきた本は西野精治『最高の睡眠』。本の帯に、「眠れない」「起きれない」「日中ねむたい」・・・「睡眠の質」を徹底的に高めて、仕事、勉強、運動など、あらゆるパフォーマンスを劇的に飛躍させる!「究極の疲労回復」と「最強の覚醒」をもたらす超一流の眠り方。という文字が躍っている。ブックオフにしては900円と高い売価のついた本だが、その帯に惑わされて買ってきた。この本を読むために、今夜も眠りの時間は奪われる

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時雨

2023年11月20日 | 日記
温泉の帰りに虹が出た。太陽の軌道が低くなるせいで、この時期虹が出やすいらしい。東の千歳山の麓から、西の空へかかかるみごとな虹だ。折から、極地的な雨がさっと走りぬける。初冬の時雨だ。雨と光の定めないたわむれ、芳賀徹先生の『詩歌の森へ』の「冬来る」に使われた言葉だ。この時雨を追いかけるように虹がかかる。

つらつらと杉の日面行く時雨 加藤暁台

今日、感銘を受けた言葉。佐藤一斉『言志四録』より。「少にして学べば、即ち壮にして為すところあり。壮にして学べば、即ち老いて衰えず。老にして学べば、即ち死して朽ちず」(晩録60)この書を現代語訳した川上正光は、サムエル・ウルマンの詩「青春」を紹介している。老いのとらえ方に、二人に共通のものがあることを認めたものだ。

人は信念とともに若く、疑惑とともに老いる。
人は自信とともに若く、恐怖とともに老いる。
希望あるかぎり若く、失望とともに老い朽ちる。

80歳になった佐藤一斉は、耋録を残しそのなかでこんな名言を吐いている。

遊び怠けているのを見て、心が寛くこせつかないと思うな。
厳しく容赦しないのを見て、真直でいつわりがないと思うな。
利己的欲望を見て、志を立ててその実現を望み計るものと思うな。

80歳になって一斉が到達した境地は、真贋を見抜く眼力を持ったことだ。80歳になって、死を待つような怠惰なことは慎まねばならない。
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