常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

花さそふ

2018年01月31日 | 百人一首


大寒も終わりに近づいているが、気温が低く、日がさしたり、雪が舞うという気候が続いている。クンシランの花芽は、みるみるうちに伸びて、先端が色づきはじめた。正月のカルタ遊びを思い出し、取り札の歌を見るのも懐かしい。

96番 入道前太政大臣

花さそふあらしの庭の雪ならで
 ふり行くものは我が身なりけり

散る桜の花ふぶきを雪に見立て、その落果におのが老いの姿をたとえた歌である。入道前太政大臣とは藤原公経で、頼朝の妹婿一条能保の娘を妻としたので、権勢ならびなく太政大臣に押された。衣笠山の麓に別邸を建て西園寺とした。後の金閣寺の前身となる寺である。この庭に咲く桜の花に風が吹きつけ、あたかも吹雪の雪と見違うほどであった。

衣笠山の麓のことであるため、田畑が多く田舎びた地であったが、造営をくりかえして艶なる庭園とした。山のたたずまい木深く、池にはゆたかな水を湛え、峰より落ちる瀧のひびきが、来る人の心を打つ造りになっていた。

公経の姉は、定家の妻で、一家は西園寺家の深い庇護のもとにあった。この百人一首のほかに、『新勅撰集』には、定家は公経の歌を30首も選んでいる。日ごろの恩義を感じたいたことはもちろんだが、歌詠みとしても定家は公経を高く評価していた。
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勧学の文

2018年01月30日 | 詩吟


日がさして庭の雪が目の覚めるように白い。詩吟教室で朱熹の「勧学の文」という詩を教わった。いまその詩を味わってみると、朱熹という学者が勧学にこめた思いがいかに強いものであったか、思い知らされる。朱子学は儒教を上下の関係、支配と被支配者の固定という面を強調したものと否定的な認識にされることが多い。江戸幕府は、この面を強調して、その体制を正当化する思想的な側面があったことも否定できない。しかし、学ぶことの志は、いつの時も、どんな時代においても持ち続けなかればならない。

謂う勿れ今日学ばずして来日有りと

謂う勿れ今年学ばずして来年有りと

日月逝きぬ歳我と延びず

嗚呼老いたり是誰の愆ぞや

愆はあやまち。十分に学ばずにこの年を迎えていることに、唯取り返しのつかない後悔の念を覚える。朱熹の詩には、「少年老いやすく学成り難し」の詩もある。学ぶことのためには、一寸の光陰をも軽んじてはならないと説く。
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啓翁桜

2018年01月29日 | 日記


寒中に咲く啓翁桜。春を感じさせる花として、正月用の切り花として珍重される。名前の由来は、久留米市の良永啓太郎という人がミザクラを台木にし、ヒガンザクラを接ぎ木して作ったと言われ、作者の名の一字を取って命名されたという。山形県で生産が盛んで、日本一の出荷量を誇っている。山友会の新年会の会場となった天童温泉の湯坊いちらくには、春を告げる啓翁桜が飾られていた。

伊勢海老の緋縅鎧初うたげ 加藤かけい

この年になると、新年会は趣味の会が中心となる。今年の山友会の新年会は参加者が23名。一番気心の知れたこじんまりとした会で、それだけに楽しい。20年来の会員から、入会したばかりの人までいるが、山の素晴らしさを共有しているだけに、いつも楽しい会になる。今年は、会で一番若い二人の女性が幹事になって仕切ってもらったので、盛り上がり、近年でも一番の楽しい新年会になった。
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春遠からじ

2018年01月28日 | 日記


明るい日差しが西の山に当たっている。朝のこんな景色を見ると、「冬来りなば春遠からじ」の名詩が口をついて出る。イギリスのロマン派の詩人シェリーの「西風の賦」の一節だ。日本など東洋では、春に吹く風は東風だが、西洋では西風は春を連れてくる風らしい。イタリアを旅したシェリーがあまりに強い西風を詠んだものだが、句は深読みされて厳しい季節の後には、明るい希望の春が待っていると、励ましの言葉を重ね合わせた箴言となっている。

「If winter comes, can spring be far behind ?」

本日、優秀吟コンクールの予選会。練習の成果を発揮したいところだが、チームのメンバーが揃わずに苦難の時代に入っている。夜は、山の会の新年会。今年一年の、楽しい山行に思いを寄せる。まさに、春遠からじの、心境である。
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千秋楽

2018年01月27日 | 日記


明日大相撲初場所の千秋楽を迎える。横綱の宴席での暴力沙汰がスキャンダルとなって大きく報じられるなか、一横綱の引退、2横綱の怪我による休場、加えて10連勝中の横綱鶴竜が、終盤で3連敗、どうやら平幕の栃ノ心の優勝で幕が降りそうだ。大相撲の最終日を千秋楽、略して楽日などと呼ぶのは、謡曲の「高砂」の結びに謡う「千秋楽」と言う小謡いからきている。

千秋楽は民を撫で

万歳楽には命を延ぶ

相生の松風

颯颯の声ぞ楽しむ

演能の最後には、決まって小謡いの「千秋楽」がうたわれたので、最終日を意味する言葉となった。ユーチューブで高砂を見てみる。観世流舞囃子「高砂」を見ることができる。シテは観世清和。笛、鼓、太鼓の囃しと謡いに合わせて舞う能楽は実に見ごたえがある。クラシックの名曲を聞いたり、藤井聡太の将棋を観戦したり、こんな舞囃子を居ながらして見ることができるのは、実にありがたい。
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