藤の花
2018年04月30日 | 花
近所のお宅の庭の藤棚の藤が見事な花をつけた。葉桜の季節、後を追って咲くのはハナミズキと藤の花である。その紫の花は、古来日本人に愛されてきた。古事記のエピソードに、伊豆志袁登売(イズシオトメ)の伝説がある。この女性は新羅から渡来し、神の娘と言われて美しかったので多くの男性が求愛して結婚を望んだ。ここに現れた男性は春山之霞壮夫いう名であった。春と霞が入っている名が憎い。この男の母親は、息子に衣服や矢などをすべて藤で作ったものを着せてイズシオトメと見合いをさせた。その時奇跡が起こった。着ている衣服、持っている弓矢から一斉に藤の花が咲きこぼれた。これを見たオトメはカスミオトコに恋をして二人は結ばれた。
たごの浦のそこさへにほふ藤波をかざしてゆかむみぬ人のため 縄丸
和漢朗詠集や万葉集に見える歌である。海岸に咲く藤の花が水に写ってさざ波のように揺れている。空と波のダブル効果で、恋心が際立って高まってくる。これをかざしにさして、さあゆこう、まだ藤の花を見ない恋人のために。日本女性の髪飾りは、この古事記や日本朗詠集の記事や歌がルーツになっている。