最近、外来に通院してくる94歳の男性患者から書籍を頂く。月一回の受診であるが、その度ごとに2冊ほど持参する。「先生は本が好きだというので・・・、私が持っていても捨てられるだけなので・・・」と置いていく。私は、頂くのも供養のうち、診療のうち、と割り切って頂いている。
今まで10数冊になっただろうか。爛熟した江戸文化を中心とした人情物が多いが、これが結構面白い。近代日本の歴史を学ぶのに、当初は昭和以降の歴史で十分と考えていたが、昭和を理解するには明治維新以降の歴史の勉強も欠かせない。さらに、江戸時代の歴史も無視できない。そんな視点で、頂いた書籍を興味深く読んでいる。
渡辺淳一著「孤舟」 もその頂いた本の一冊である。これは他のと毛色が変わっていた。

私は、通常は小説、特に恋愛小説、官能小説などは読むことは殆どないが、この小説の主題が、私が言う「定年退職亭主在宅症候群」だったので読んでみた。この本では「主人在宅ストレス症候群」という名称が使われている。多分こちらの方が正式に通用しているだろうが、私が使っている方が実態に即していて良いと思う。
「定年退職亭主在宅症候群」は定年まで家庭生活を半ば無視して働き続けた亭主が、退職後、四六時中家にいることで妻がそのストレスのために陥るうつ的状況のことを指す。退職後、数け月で妻が無気力、不眠、イラつき等の症状を訴えてくる。一方、亭主は自分に問題点があるとは一切気づいていないのが悲しいことである。定年を迎える年代の亭主はもはや「丈夫で留守で、給料を運んでくる」存在になっているのに、いや、それ以上に、積年の不満、恨みの源になっている存在で、そんな妻にとっては亭主は煩わしい迷惑な存在にすぎない。
この本のあらすじは以下のごとくである。
大手企業の役員で、60歳で定年を迎えた主人公の生活を描いている。本人はバラ色の人生が待っていると期待して定年を迎えたのであるが、何もすることのない、有り余る時間を持て余す毎日である。家族の生活に口煩く関与するものだから、結果的に長男 娘は独立、妻も家を出てしまう。主人公は、寂しさのあまりデートクラブに入会し、ある女性に出会う。そんな日常が淡々と綴られていく。
定年退職は社会的存在である男性にとって「喪失の体験」の始まりで、人生最大の転機を言われる。
数年前から団塊の世代が定年を迎え、社会問題にもなっている。こんな時代の空気を的確に読み、定年後の夫婦が迎える危機をいかに乗り切るかをテーマに選んだ作者の眼は的確である。
しかし、私の印象では、この作品は成功したとは言えないように思う。
私はまだ渡辺淳一氏の作品はほんの一部、10数編しか読んでいない。これからなので何とも言えないが、この作品には従来読んだ作品には見られない、退屈さが終始付きまとう。
「遠き落日」、「心臓移植」、「花埋み」・・などから受けたシャープな印象とはちょっと違う作品となっている。
今まで10数冊になっただろうか。爛熟した江戸文化を中心とした人情物が多いが、これが結構面白い。近代日本の歴史を学ぶのに、当初は昭和以降の歴史で十分と考えていたが、昭和を理解するには明治維新以降の歴史の勉強も欠かせない。さらに、江戸時代の歴史も無視できない。そんな視点で、頂いた書籍を興味深く読んでいる。
渡辺淳一著「孤舟」 もその頂いた本の一冊である。これは他のと毛色が変わっていた。

私は、通常は小説、特に恋愛小説、官能小説などは読むことは殆どないが、この小説の主題が、私が言う「定年退職亭主在宅症候群」だったので読んでみた。この本では「主人在宅ストレス症候群」という名称が使われている。多分こちらの方が正式に通用しているだろうが、私が使っている方が実態に即していて良いと思う。
「定年退職亭主在宅症候群」は定年まで家庭生活を半ば無視して働き続けた亭主が、退職後、四六時中家にいることで妻がそのストレスのために陥るうつ的状況のことを指す。退職後、数け月で妻が無気力、不眠、イラつき等の症状を訴えてくる。一方、亭主は自分に問題点があるとは一切気づいていないのが悲しいことである。定年を迎える年代の亭主はもはや「丈夫で留守で、給料を運んでくる」存在になっているのに、いや、それ以上に、積年の不満、恨みの源になっている存在で、そんな妻にとっては亭主は煩わしい迷惑な存在にすぎない。
この本のあらすじは以下のごとくである。
大手企業の役員で、60歳で定年を迎えた主人公の生活を描いている。本人はバラ色の人生が待っていると期待して定年を迎えたのであるが、何もすることのない、有り余る時間を持て余す毎日である。家族の生活に口煩く関与するものだから、結果的に長男 娘は独立、妻も家を出てしまう。主人公は、寂しさのあまりデートクラブに入会し、ある女性に出会う。そんな日常が淡々と綴られていく。
定年退職は社会的存在である男性にとって「喪失の体験」の始まりで、人生最大の転機を言われる。
数年前から団塊の世代が定年を迎え、社会問題にもなっている。こんな時代の空気を的確に読み、定年後の夫婦が迎える危機をいかに乗り切るかをテーマに選んだ作者の眼は的確である。
しかし、私の印象では、この作品は成功したとは言えないように思う。
私はまだ渡辺淳一氏の作品はほんの一部、10数編しか読んでいない。これからなので何とも言えないが、この作品には従来読んだ作品には見られない、退屈さが終始付きまとう。
「遠き落日」、「心臓移植」、「花埋み」・・などから受けたシャープな印象とはちょっと違う作品となっている。
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