わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話33 自分で釉を作る2 釉の三要素2(媒熔剤1)

2013-09-06 15:54:46 | 新釉(薬)の話

前回お話した様に、二酸化珪素(SiO2)は、ガラスの材料です。

媒熔剤(熔剤)は二酸化珪素と化学反応を起こし、釉を熔け易くします。

この化学変化を「共融(きょうゆう)反応」といいます。一般に媒熔剤の添加量を増やすに従い

熔ける温度は下がりますが、ある一定以上の量を超えると、逆に熔け難くなります。

この最も低い温度を「共融温度」と呼び、この時の媒熔剤と二酸化珪素の比率を「共融点」と

いいます。

◎ 媒熔剤は、一種類よりも数種類混合せて使った方が、融点を下げる事ができます。

 最低でも三種類は必要です。

本日の本題に入ります。

 ② 熔ける温度を下げる物質。(前回の続き)

 ⅰ) アルカリ元素の働きと性質。

  a) 酸化リチウム(LiO)の働きと性質。

   一般にリチウムの添加量は、6~10%程度です。

   イ) 鉛(なまり)を使う事の無い現在では、リチウムは最強の媒熔剤の一つです。

   ロ) 粘度を下げる働きが有り、釉や素地からのガスを抜け易くし、ピンホールの

    発生を抑えます。

    又、冷却中に余分な物質を析出し、流動性も手伝い結晶を作り易いです。

   ハ) リチウムは他のアルカリ類よりも膨張係数が少ない為、貫入の入るのを防ぎます。

   ニ) 釉の表面張力を小さくする為、釉の縮れ(ちぢれ)を防ぎます。

   ホ) 酸化コバルトや酸化銅と結合し、釉に色を付ける事が出来ます。

    コバルトで紫色に、酸化(又は炭酸)銅で緑色に成ります。

  b) 酸化ナトリウム(Na2O)の働きと性質。

   イ) アルカリ3元素の中で、一番膨張係数が大きく、釉に貫入が入り易い

    ですので、貫入釉に使います。

   ロ) 釉の粘度(粘性)を下げます。

   ハ) 釉の熔ける温度範囲を狭める為、焼成に苦労します。

   ニ) ガラス質の物理的(機械的)強さや、化学的強度を少なくします。

   ホ) ナトリウム(ソーダ)の多い釉では、酸化(炭酸)銅でトルコ青に、

    二酸化マンガンで茶色から紫色になります。

   ヘ) ナトリウムとカリウムを含む材料は、ほとんどが水溶性の為、直接釉に

    使えません。

    そこでソーダー長石(曹長石)を使いますが、ナトリウムとカリウムが合計で、

    11% 程度含まれています。 曹長石: Na2O・Al2O3・6SiO2

  c) 酸化カリウム(K2O)の働きと性質。

   イ) カリ長石や正長石から得ます。

    ソーダ長石より温度範囲が広く、カリ長石は1200℃程度から熔け始め、

    1500℃になっても流れません。 その為、高火度陶器釉に必要な材料です。       

   ロ) 釉の粘度を下げます。熱膨張係数が大きく、貫入を促進します。

  ⅱ) アルカリ土類の働きと性質。       

   a) 酸化カルシウム(炭酸カルシウム、石灰石)

    原料として炭酸カルシウム(CaCO3)を使いますが、750~900℃で熱分解し、

    酸化カルシウム(CaO)になりますので、釉としてはCaOを利用する事に

    成ります。

  ・ 釉には石灰石が安価である為、多く使われています。又比重が小さい為、沈殿防止

   として 働きます。

   その他にドロマイト(CaCO3・MgCO3)、骨灰や燐酸カルシウムがあります。

   イ) 酸化カルシウムの融点は大変高く、2572℃ですが、二酸化珪素との共融反応に

    より、1160℃以上で熔解します。

   ロ) カルシウムが多過ぎると、微細な結晶を生じ、マット釉になります。

   ハ) アルカリ元素に比べ、熱膨張率が小さい為、貫入を抑制します。

   ニ) 釉に機械的強度を増し、磨耗にも強くなりまし、化学的強度も増します。

   ホ) 温度上昇と共に、急激に粘度(粘性)が小さくなり、流れ易く成ります。

   ヘ) 他のアルカリ類と異なり、呈色に影響を与えないのが特徴です。

  b) 酸化マグネシウム(MgO)の働きと性質。

以下次回に続きます。     

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