釉の剥がれ(釉はげ、釉禿)と釉のちぢれ(縮れ)。
1) 釉の剥がれ。
釉が剥げれるとは、釉の一部が素地から剥がれて仕舞う事で、場合によっては、完全に剥がれ
落ちる場合も有ります。釉の剥がれは、施釉直後に発生する場合もありますが、一般には、
焼成時に発生し、窯を開けてから気付く事が多い現象です。
尚、施釉時の釉の剥がれは、釉の濃度が濃い場合に発生し易いですので、釉を水で薄めたり、
CMC(化学糊)などの糊類を添加し、素地との接着を蜜にします。
① 釉の剥がれは、釉が熔けた後に発生する現象です。それは次の様な理由で起こります。
a) 釉は熔けるに従い縮みます。
どの様な釉であっても、釉が熔け始めると、体積は小さくなります。その為、素地に
しっかりと密着していない状態では、素地から剥がれる様に力が発生します。
b) 可塑性の大きな素地では、細かい粒子の土の量が多く、焼成時に表面の釉より
大きく縮み釉に亀裂が起きる場合があります。
この亀裂は釉が熔けてガラス状になると、自然に塞がり亀裂がなくなります。
しかし、釉に流動性が乏しい時には、塞がらない場合も起こります。
この場合、窯が冷えるに従い、この亀裂部分より釉が剥がれる切っ掛けになります。
c) 施釉して直ぐに本焼きすると、素地は水分を多量に吸収していますので、温度上昇と
伴に、水蒸気を盛んに発生させます。
その水蒸気は、釉を下から持ち上げる力となる為、釉が素地から浮き上げる事になり
ます。この状態で釉が縮むと素地から剥がれ落ちます。
d) 化粧土を施した素地に施釉した場合、素地と釉の密着度が弱く、釉が収縮する際
素地から 剥がれ易いです。同様に、下絵付けの顔料(絵の具)が濃い場合にも、
釉が載らずに逃げる事になります。
e) 灰釉を使用する場合も、釉の剥がれを起こす事があります。
植物の灰は岩石や金属とは異なり、密度が小さく、フワフワした感じです。
又、灰を精製しても、空気や炭素が含まれています。施釉しても素地との密着度が弱く、
焼成においても大量のCO2(炭酸ガス)を発生させます。
これが釉面に気孔や亀裂を生じさせます。
釉が熔ける際、釉の移動の有無によって、亀裂を広げたり、素地から引き剥がす事に
なります。
2) 釉のちぢれ(縮れ)に付いて。
「釉のちぢれ」とは、釉が平滑で均一の広がりを持たず、釉が島状に寄り集まった状態を
言います。
① 主な原因は、釉の表面張力が強い為です。
注: 表面張力とは、液体の表面を出来るだけ小さくしようとする力です。
水玉や水滴になる現象です。大なり小なり、全ての液体に起こります。
a) 表面張力が強い釉では、お互いに独立して、釉が小さく丸まろうとします。
b) 粘性が小さいく流れ易い場合には、表面張力により引っ張に釉が追随出来ます
が、粘性が大きい場合には、引っ張りに付いて行けず、縮れが発生します。
即ち、表面張力が大きく、粘性の大きな釉程、縮みの起こる頻度が多いです。
② 表面張力を左右する物質。
ⅰ) 表面張力を強くする物質。
a) マグネシウム成分: タルク、炭酸マグネシウム、ドロマイト等。
b) アルミナ成分: 長石、カオリン等。
c) 溶融剤: カルシウム、亜鉛華、バリウム等。
ⅱ) 表面張力を小さくする物質。
硼素、リチウム、ナトリウム、カリウム等です。
ⅲ) 上記物質を添加して、釉の改良を行う事が出来ます。
以下次回に続きます。