前回お話した様に、二酸化珪素(SiO2)は、ガラスの材料です。
媒熔剤(熔剤)は二酸化珪素と化学反応を起こし、釉を熔け易くします。
この化学変化を「共融(きょうゆう)反応」といいます。一般に媒熔剤の添加量を増やすに従い
熔ける温度は下がりますが、ある一定以上の量を超えると、逆に熔け難くなります。
この最も低い温度を「共融温度」と呼び、この時の媒熔剤と二酸化珪素の比率を「共融点」と
いいます。
◎ 媒熔剤は、一種類よりも数種類混合せて使った方が、融点を下げる事ができます。
最低でも三種類は必要です。
本日の本題に入ります。
② 熔ける温度を下げる物質。(前回の続き)
ⅰ) アルカリ元素の働きと性質。
a) 酸化リチウム(LiO)の働きと性質。
一般にリチウムの添加量は、6~10%程度です。
イ) 鉛(なまり)を使う事の無い現在では、リチウムは最強の媒熔剤の一つです。
ロ) 粘度を下げる働きが有り、釉や素地からのガスを抜け易くし、ピンホールの
発生を抑えます。
又、冷却中に余分な物質を析出し、流動性も手伝い結晶を作り易いです。
ハ) リチウムは他のアルカリ類よりも膨張係数が少ない為、貫入の入るのを防ぎます。
ニ) 釉の表面張力を小さくする為、釉の縮れ(ちぢれ)を防ぎます。
ホ) 酸化コバルトや酸化銅と結合し、釉に色を付ける事が出来ます。
コバルトで紫色に、酸化(又は炭酸)銅で緑色に成ります。
b) 酸化ナトリウム(Na2O)の働きと性質。
イ) アルカリ3元素の中で、一番膨張係数が大きく、釉に貫入が入り易い
ですので、貫入釉に使います。
ロ) 釉の粘度(粘性)を下げます。
ハ) 釉の熔ける温度範囲を狭める為、焼成に苦労します。
ニ) ガラス質の物理的(機械的)強さや、化学的強度を少なくします。
ホ) ナトリウム(ソーダ)の多い釉では、酸化(炭酸)銅でトルコ青に、
二酸化マンガンで茶色から紫色になります。
ヘ) ナトリウムとカリウムを含む材料は、ほとんどが水溶性の為、直接釉に
使えません。
そこでソーダー長石(曹長石)を使いますが、ナトリウムとカリウムが合計で、
11% 程度含まれています。 曹長石: Na2O・Al2O3・6SiO2
c) 酸化カリウム(K2O)の働きと性質。
イ) カリ長石や正長石から得ます。
ソーダ長石より温度範囲が広く、カリ長石は1200℃程度から熔け始め、
1500℃になっても流れません。 その為、高火度陶器釉に必要な材料です。
ロ) 釉の粘度を下げます。熱膨張係数が大きく、貫入を促進します。
ⅱ) アルカリ土類の働きと性質。
a) 酸化カルシウム(炭酸カルシウム、石灰石)
原料として炭酸カルシウム(CaCO3)を使いますが、750~900℃で熱分解し、
酸化カルシウム(CaO)になりますので、釉としてはCaOを利用する事に
成ります。
・ 釉には石灰石が安価である為、多く使われています。又比重が小さい為、沈殿防止
として 働きます。
その他にドロマイト(CaCO3・MgCO3)、骨灰や燐酸カルシウムがあります。
イ) 酸化カルシウムの融点は大変高く、2572℃ですが、二酸化珪素との共融反応に
より、1160℃以上で熔解します。
ロ) カルシウムが多過ぎると、微細な結晶を生じ、マット釉になります。
ハ) アルカリ元素に比べ、熱膨張率が小さい為、貫入を抑制します。
ニ) 釉に機械的強度を増し、磨耗にも強くなりまし、化学的強度も増します。
ホ) 温度上昇と共に、急激に粘度(粘性)が小さくなり、流れ易く成ります。
ヘ) 他のアルカリ類と異なり、呈色に影響を与えないのが特徴です。
b) 酸化マグネシウム(MgO)の働きと性質。
以下次回に続きます。
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