ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

フクシマの真実

2011年08月03日 | 日本とわたし
週刊朝日『談』の、7月22日号と7月29日号掲載の記事、福島第一原発の最高幹部がついに語った【フクシマの真実:前編】【フクシマの真実:後編】を読みました。

断片的に得た現実と知識が、この記事ですっとひとつの線につながったような気がします。
記事中の、最高幹部の方が語られている部分のみを抜粋して、紹介したいと思います。
長いです。
けれども、この真実は、わたし達が知っておかなければならないことなので、頑張って読んでください。
全文は、上記の濃い緑色の文字の部分をクリックすると出てきます。


いま玄海原発の再稼働問題が取りざたされていますが、フクイチ(福島第一原発)の事故を経験した私に言わせれば、そんなバカなことはやめたほうがいい。
玄海原発1号機の操業開始は1975年で、老朽化が心配。
それに、現地はフクイチよりも地盤がやわらかいようです。
正直、再稼働して大丈夫なのかと感じる。

私が、こう言うのには理由があります。
フクイチが地震と津波、どちらでやられたのかといえば、まず地震で建屋や配管、電気系統など、施設にかなりの被害を受けたのは事実です。
地震直後、「配管がだめだ」「落下物がある」などと緊急連絡が殺到しました。
制御室からも「配管や電気系統がきかなくなった」などと、すさまじい状況で、多くの作業員が逃げ出した。
耐震性に問題があったのは否めません。

こうした事態に対応している間に「津波がくるらしい」という話が入り、とにかく避難が優先だと施設内に放送を流し、情報収集を進めているうちに津波が襲ってきた。
これで、街灯やトイレなど、地震後もかろうじて通じていた一部の電源もほぼ通じなくなった。
完全なブラックアウト(停電)です。

そのとき頭に浮かんだのは、どうやって冷却を続けるか、です。
すぐに人を招集して、とにかく電源回復を急ぐようにと指示した。
何とか電源を回復できないかと、(東京電力)本社に電源車を要請するなど、もう大声で叫ぶばかりでした。

津波の破壊力を実感したのは、電源確保のために状況を見に行った作業員から「行く手をはばまれた」「瓦礫(がれき)で前へ進めない」などと報告を受け、携帯写真を見たときです。
本当にとんでもないことになっていた。
本社に電源車を頼んでいるような悠長なことではとても無理。
自分たちで何でもやれることはやらなきゃ、もう爆発だと覚悟しました。
すぐに車のバッテリーなど、原発内でとにかく使えそうなものを探させました。

日が暮れ、周囲は真っ暗で作業がはかどらない。
携帯電話の画面を懐中電灯代わりにしている--現場からは、こんな報告が次々と上がってきました。

このあたりから「最悪のケースもありうる。海水も早い時期に決断せねば」と覚悟しました。
メルトダウン(炉心溶融)も、ありうると思っていた。

ただ、これがもしも地震だけだったら、要請した電源車なども早く到着したはずですし、非常用電源なども回復できた可能性が高い。
爆発は防げたと思います。

ここまで事故が深刻化した原因について、津波対策がおろそかだった、非常用電源の設置場所が悪かったなどと言われますが、
私は何よりも、操業開始から40年という"古さ"が、地震・津波に負けてしまったと感じています。
いくらメンテナンスで部品を新しくしたところで、建物は同じ。
原発自体の耐用年数だけでなく、建物や構造など全体的にみて40年は長すぎた。


実際、免震棟ができる2年ほど前までは事務本館しかなかった。
それが、地震だけでメチャメチャになり、使えない。
これは、玄海を始め、全国の原発に当てはまることだと思います
ね。

注水をしている限り、汚染水が増えるばかりで安定はありません。
フクイチの1~4号機ともに循環システムがうまく機能して初めて冷却、安定となります。
とにかくまず冷却して安定させなければ、先が見えません。ペースは遅いかもしれないが、一歩ずつ確実に近づきつつある。

もちろん、現場ではもうこれ以上、汚染水を海に放出することは許されないと認識しています。
ただ、なぜか本社は海に流すことをいとわない雰囲気があって、温度差を感じます。

システムの管理は、東芝が中心でやっています。
米キュリオンと仏アレバの機器を組み合わせ、日立が塩分を取り除く装置を担当している。

システムの構成については、現場からも提案しました。
でも、本社から、「もう決まった。これでやりなさい」と日米仏の装置を一つにまとめる方式になったのです。
現場としては、日本だけで十分やれると考えていました。
しかし、政府同士で商取引の約束でも交わしたのでしょうか、
本社のある幹部は政府や経産省との絡みも暗ににおわせて、「勘弁してくれ。こちらでもどうにもならない」ということでした。


てこずったのはアレバの装置です。
仕様書などはフランス語だけでなく、一部がイタリア語で書かれていて大混乱でした。
原発関連の言葉をイタリア語で読みこなすのは難しく、アレバに問い合わせても、肝心なところは「国家機密で言えない」と拒絶されるのです。

結局、循環システムが稼働するまでに、バルブの開閉トラブルやフィルターの目詰まり、装置の接点で想定外の放射線量が出るなど問題が起き、何度も止まりました。
統括した東芝も「オールジャパンでやっていれば……」と言っていた。

とはいえ、アレバの装置の威力はさすがにすごい。
放射性物質はきれいに除去されています。

ようやく動き始めたといっても、水回りの作業はトラブルがつきものです。
現場で『ぞうさん』『シマウマ』などと呼ばれている注水車もポンプの調子が悪く、よく中断しますから。

それに、まだまだ瓦礫などの線量が高く、作業がはかどりません。
1号機では、原子炉建屋の1階と2階にある配管で循環システムを接続するつもりでしたが、線量が高すぎるため、別の配管を使わざるをえなかった。
無人ロボットも、瓦礫を片付けられずに入れないところがたくさんあります。

それほど、現場と本社の間には明らかな温度差、認識の違いがあるのです。

実際は『55分間の注水中断』がなかったことは、一部の幹部たちは前から知っていたはずです。
確かに資料上は政府に配慮して、「(注水を)菅総理の指示で再開した」ということにするため、20分程度で注水を中断したことになっていました。
でも、この問題が国会にまで持ち込まれ、いまさら政府に報告した内容をひっくり返して「中断してなかった」などとは言いだせない状態だったのです。

だから、最終的に「吉田所長が独断で中断しなかった」という話で落ち着きましたが、実は違う。

そもそも、あの時点で注水を中断するなどという選択肢はなかった。
原子炉を冷やし続けなければ、爆発は時間の問題。
私たちや作業員はもとより、周辺住民も被曝(ひばく)するかもしれない。
『死』につながることになるかもしれない。
原子力を少しでも学んでいる人間ならば、誰でもわかることです。
そんなバカなことをするわけがありません。


当時、現場の意思は、「『総理が了承していない』なんて言っている場合じゃない。こっちは生きるか死ぬかだ。なりふり構っていられない」ということでした。

とはいえ、あれだけ問題になってしまったので、皆、「今回は、吉田所長が悪者になるしかない」と言ってましたね。

『建屋カバー』は、なんとか台風の時期の前には設置したかったが、ちょっと難しい。
作業は天候に大きく左右される。
大きなクレーンで設置するので、少しの風でも作業に支障をきたしてしまうのです。
それに、かぶせると言っても、爆発で建屋は左右対称ではなくなっているので、技術的にもなかなか難しい。

ちなみに、このカバー設置も本社の主導でした。
ある幹部曰(いわ)く、「覆いをすれば、グーグルなどで原発の衛星写真が世界中に広がるのを隠せる」ということで、この案に政府も同意したそうです。
カバー設置で放射線量の数値が劇的に下がることはない
と思います。

設置は、大手ゼネコン数社が受注しましたが、いまだ契約で話し合いが続いています。
工事が必ず成功するとは限らないからです。

最終的に、チェルノブイリのように原子炉をコンクリートで固める『石棺』にするかどうかという議論があります。
実際にシミュレーションもありますが、これは、安定したときの状況次第ですね。

安定したら、何とか核燃料を外に取り出したい。
しかし、その燃料がどんな状況なのか、すでにメルトダウン、さらにはメルトスルー(原子炉貫通)もないとはいえない。
飛び散っていることも考えられる。
それを把握してからですが、いまのところは『石棺』は考えていません。

いずれにしても、いま一番の課題は『人』ですね。
現場で作業するのは、作業員たちです。
暑さと雨の中で仕事ができるのかどうか。
これまで、うち(東電)は作業員や協力会社に正直、十分なことをしてこなかった。
うちの人間は現場にはあまり出ず、作業員任せというシステムが問題であることはわかっていましたが、現場レベルではどうすることもできなかった。
それが事故の重大さを把握できなかった一因でもある


現場ではいまも、寝るとき以外は仕事です。
食事も最近まで1日2回とれたらいいところだった。
本社では休んでいることになっていますが、実際はろくに休んでいません。
吉田所長は、こう言っています。

「恐らく今後、年内に安定化できるかどうかが焦点になるだろうが、それは正直、厳しい。
クリスマス、大晦日(おおみそか)、正月、ずっとフクイチで過ごす覚悟でいる。
私は最後の最後まで、事故が収束するまで、ここを離れない決意です。
作業員や協力会社の方々にも申し訳ないが、ご協力を頂きたい」

その思いで、皆が一丸となって事態に当たっているのです。

"旧"工程表については、4月の本社発表に先立って、実はフクイチ(福島第一原発)の現場からは『(収束までに)約1年半』というスケジュールを想定したものを出しました。
これでも、熟練の作業員をフル動員することを前提にして、ようやく達成できるレベルです。

ところが本社からは、「こんなのでは遅すぎる。菅総理が納得しない。(5月下旬の)サミットでどう説明するんだ」と言われました。
結局、本社がいろいろと継ぎはぎして『9カ月』の工程を作ったのです。

工程表では3カ月+3~5カ月の『2ステップ』などと謳(うた)っています。
ステップ1は何とかなるかもしれないが、問題はステップ2。
このスケジュールどおりなんて到底、無理な話ですよ。
放射線量の限度を超え、どんどん熟練作業員の人数が減っていく中で、どうすればできるのですか。

無人ロボットが導入されましたが、あんなのが何台あっても最後の最後は『人手』が必要です。
その『人手』の作業を阻むのが、建屋の地下にたまった汚染水なのです。

この『冠水』方式にしても、現場は当初から「メルトダウン(炉心溶融)で格納容器に穴が開いている可能性があるので難しい」と指摘していた。
しかし、「実際に穴が開いているのを見たのか」という変な話になり、この方式が政府に上がってしまった。


一方の『循環注水』方式は早い段階から候補に挙がっていたが、装置を準備するのに時間がかかるからと却下された。それが、いきなり復活したのです。

工程表には、細かい工事内容も書かれていますが、実際には予定されていたよりも1.5~2倍の時間がかかっている。
『循環システム』設置だって、予定の1.5倍の時間がかかりました。
本社の作った工程表は、あくまでも理想で、現実性は乏しい。

さらに今後、この暑さの中で作業は困難になります。
作業員たちの健康のため、いま工事は朝6時ごろから始め、午後2時ごろには終わらせている。
こんな環境の中で、工程表どおりに実現させるのは難しい。
それに、1~4号機はそれぞれ状況が違うので、予想できない事態もあり得ます。

19日に発表される新工程表でも、期日の修正はあまりないようです。
というのも、期日については政府の意向が強く、政治的な責任問題が発生するとかで、なかなかいじれないらしい。
結局、理想論を前提に、結論ありきでスケジュールをはめ込んでいるだけ。
現場としては、国民に本当のことを知らせるべきだと思っています。

ずっと『水』に苦しめられてきました。
原子炉を冷やせば冷やすほど汚染水が増え、それが建屋の地下、トレンチ(タービン建屋外にある地下の作業用トンネル)に大量に流入していくという悪循環です。
大雨が降ると敷地内に流れ出す可能性もあり、作業員が近寄れなくなる。
海に流れ込む恐れもある。
いま、ようやく『循環注水冷却システム』が動き始めましたが、まだ安定したとはいえない。

しかも、もしも核燃料がメルトスルー(原子炉貫通)しているならば、たまった汚染水は非常に高濃度になっている。
チェルノブイリ事故の際は、すぐに地下水対策をしましたが、それは日本の技術だった。
地下にトンネルを通し、セメント、ベントナイト(粘土鉱物)などを注入して固めてしまう方式です。
これをフクイチでも実施すべきではないかと思う。

国土交通省はこうしたプランを数多く持っていますが、所管の経産省との連携がうまくいっていないのか、適切と思われる対応策が講じられていないのが現状です。
現場からも本社にプランを上げているんですが、何の動きもない。

また、4号機が危ない、1号機がダメらしい--などといろいろ言われますが、私から言わせれば、どれも危ない。
工程表では汚染水の流出源についても、詳しく触れられていません。

たとえば、1号機は格納容器から漏れているようです。
しかし、その場所が特定できない。
穴の大きさもわからない。
つまり、何もできな
い。
安易にどれくらいで収束すると断言できないのです。

3号機では、1,2号機に続いて水素爆発を防ぐための窒素注入がようやく始まった。
しかし、地下に大量の汚染水がたまって苦しい状況には変わりない。
建屋内に入ることはできましたが、内部は飛散した瓦礫で埋もれていて、燃料プールの確認も大変な状況です。

3号機、4号機に共通していえるのは、建屋の強度に不安があることです。
かなり崩れていて、作業中に上からコンクリート片が落ちてくることもあり、作業員も怖がっている。

特に4号機の燃料プールは、早急に手だてを講じないと危ない。
4月の最大余震の際は「倒壊を覚悟した」と言う作業員もいたほど。
すでに建屋の補強工事に着手し、作業は順調に進んでいますが、本格的な台風の季節の前に何とか対応したいところです。

2号機も、ひどい状況です。
作業の間、汚染水があふれたり、漏れたりしないかとヒヤヒヤの連続でした。
ただ、少なくとも配管などは爆発でやられていないので、1号機、3号機とはちょっと状況が違いますね。
とりあえずは最悪の危機は脱出したと考えています。

最近でも、1~4号機の映像を中継している『ふくいちライブカメラ』を見て、『白い煙』が出ているとの指摘がありますが、
あれは燃料プールの使用済み燃料が熱を持っているため、湯気みたいなものが出てそう見えるのです。
プールから水が漏れているので十分に冷やせず、熱が下がらない。
それで水蒸気が出る。
もっとも、その『湯気』には放射性物質も含まれています。


12日早朝(午前7時すぎ)に菅さんがこちら(フクイチ)に乗り込んできたときは、本当に驚きました。
確かに事前に「総理が来る」との連絡はありました。
しかし、そんな急に、本当に来るとは思いもしなかった。
しかも、ヘリコプターで来て免震棟で会うなり、
「何をやっている。ベントはどうなっている。早くするんだ!」 などと怒鳴り散らすのです。
総理にそこまで言われると、さすがに皆、引いてましたね。
吉田所長は、「とにかく、どんなことをしてでもやります。決死の作業で、命かけてでも絶対に何とかします」と答えてました。

1号機が水素爆発を起こしたのは、ベントが遅れたせいだと指摘されていますが、現場としては、近隣住民のことが気になっていました。
ベントをすれば放射能がまき散らされる。近隣住民の避難状況はどうなのか、放出される範囲は広範囲にわたるので、現場としては、かなり深刻に考えていました。

それに、自動でベントを開閉する装置がダメになっていたため、手動で動かさなくてはならない状況だった。
当時、1号機のリアクター(原子炉)建屋はかなりの放射線量が予想されていました。
そんな危険な場所に誰を行かせるのか。
本当に決死の作業なのです。

1号機が水素爆発を起こしたときは、もう目の前が真っ暗でした。
ベントをしたのに、いきなりの爆発でしょう。
最悪の事態です。
免震棟内もパニック状態で、「帰らせてくれ」と言う作業員、社員も出てきました。
私たちには、それをとめることはできません。
とにかく残った人間でやるしかない。
もうフクイチで被曝(ひばく)して死んでゆくのか、これまで原発で過ごしてきた何年もの日々が一瞬、頭をよぎりました。

当時は知らなかったのですが、政府は震災当日の11日午後9時23分に、原発から『半径3キロ圏内』の住民に避難指示を出し、
その後、翌12日午前5時44分に『10キロ圏内』、午後6時25分に『20キロ圏内』--と次第に範囲を拡大していった。

でも、現場ではもっと広い範囲、少なくとも半径50キロは避難していると思った。
なんといっても、あれだけの爆発だったんですから。
結局、避難範囲が半径3キロ圏内と聞いたときも、「大丈夫か?」と思った
のが正直な印象ですね。

米政府は当時、半径50マイル(約80キロ)圏内の自国民に対して避難勧告を出しました。
チェルノブイリ事故では、国際原子力機関(IAEA)の報告によると、旧ソ連の汚染地域は約14万5千平方キロメートルで、
約300キロ離れた地域でも高いレベルの汚染があったことがわかっている。
爆発が相次ぐ中、当時は私自身、半径30キロどころか、青森から関東まで住めなくなるのではないかと思ったほどです。

本社と政府の話し合いで決まったんだろうけど、余震の危険性などを考えれば、最低でも半径50キロ、
できれば半径70キロ、万全を期すならば半径100キロでも不思議はなかった。

最初は広範囲にして、それから『SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)』の予測などをもとに狭めていけばよかったのではないでしょうか。

いま原発は何とか安定していますが、放射性物質がかなり飛散しているのが実態です。
避難地域の見直しが必要だと思います。
実際、もう半径20キロ圏内は戻れないと、そろそろ発表してもいいんじゃないか。
子どもたちが学校に通うのは無理です。最初からもっと広範囲で避難させていればと悔やまれます。


細野さんが原発担当大臣になって歓迎ムードがあるようですが、現場としては、うーんという感じ。
期待はしていたんですが、正直いって彼は経産官僚と変わりない。
現場が望むのは、意思決定のスピードとリーダーシップ。
でも、細野さんと話しても、どちらも兼ね備えていない。
経産官僚が言っていたことを、数日後に細野さんの口から聞くという感じです。
経産官僚の言うがままの『操り人形』と我々は呼んでいます。

政府の原発に関する決定は本当に遅い。
菅総理は「細野に任せてある」と言うのに、細野さんは「決めるのは総理」と言うばかり。
菅さんが責任を細野さんに押しつけているのは誰の目にも明らかで、細野さんは、それには乗らないと牽制(けんせい)しているんです。
堂々巡りで、一向に前に進みません。

東電本社も経産省の言うがままで、こんなにノンビリでいいのかと思うほど意思決定が遅い。
この状況を喜んでいるのは、経産省をはじめとする官僚たちです。


現場と本社には、明らかに認識のズレがあります。
フクイチから本社には毎日、膨大な量の情報が上がりますが、いま国民に公表されているのはその10%、いや1%くらいかもしれません。
実際、現場は当初から「メルトダウン、メルトスルーの可能性がある」と報告していますが、本社は発表しませんでした。

一連の発表を見ていると、派閥や上司との人間関係など、社内でしか理解できない力学が働いているように思えます。
というのも、うち(東電)は、とにかく風通しが悪い組織なんですよ。いろんな人間が口を出してくる。
現場と本社は、衝突ばかりです。ある本社幹部は、情報公開を巡ってこんなことを言っていました。
「そんな情報が保安院や政府にわかると、大変なことになる。(問題が)ますます拡大するじゃないか」
そして最後には、「私の立場や出世はどうなるんだ。キミはわかってるのか!」と言うんだから呆れてしまいます。

的確な情報が適切なタイミングで届かないから、トップが最終決断しなければならないときに、十分な情報がないということが起こるのです。
本当に、どこを見て仕事しているんでしょうかね。

今回の事故は我々の責任が重大で、おわびするしかありません。
いま、フクイチには日本、いや世界の存亡がかかっている--私たち現場の人間はそういう覚悟でやっています。
でも、残念ながらこれが、いまの本社の状況なのです。

本当に『風評被害』か

2011年08月03日 | 日本とわたし
少し前になりますが、6月6日付琉球新聞の記事が、放射能汚染から子供を守ろうと活動していらっしゃるSAVE CHILDのウェブに載っていました。
『風評被害』という言葉に対するわたしの思いが、この中に脈々と流れているので、ここに残しておこうと思います。

琉球新聞6月6日 文化面『世界の信用失う政府 欺瞞の被ばく比較こそ犯罪』

本当に『風評被害』か

『風評被害で、日本は大変なことになっている。
それは、ぼくも認める。
みんなで力を合わせ、風評被害に立ち向かい、払拭しなければならないと、ぼくも本気で思っている。
ただ、日本のマスコミが取り上げる『風評被害』と、ぼくが理解する『風評被害』の間には、かなりのギャップがある。

たとえば東京は浅草、仲見世の土産物店の経営者が、外国人の観光客の激減を嘆き、売り上げは9割も落ち込んでいるとため息をもらす。
そしてそれが『原発事故の風評被害』と、話がまとめられる。
しかし本当にそうなのかと、ぼくはうたぐる。

実際、福島第一原子力発電所の1号炉も2号炉も3号炉もメルトダウンをきたし、大量の放射能汚染を海に垂れ流し、大気にまき散らして、制御不能の悪夢はいまだに出口が見えない。
そんな状況下、好きこのんで高い料金を払い、愛する家族といっしょに国際線に乗り、わざわざ日本へやってくる人は、そう多くはないだろう。
当たり前の用心というか、最低限の自己防衛と言うべきか、観光客激減を『風評被害』と呼ぶ者に対して、ぼくは聞いてみたい。
「この25年の間にベラルーシやウクライナへ遊びに行きましたか?」


また、日本政府が「安全だ」と宣言しても、メード・イン・ジャパンの品物を対象に各国の港で放射線測定が行われたり、海外の消費者が敬遠したりしている現状が大きく報道され、やはりこちらも『風評被害』によるものと、結論づけられる。

でも3月11日から情報を隠蔽しつづけ、『レベル4』だの『レベル5』だの『格納容器は健全である』だの欺瞞のかぎりをつくし、真実を語ろうとしないジャパンのお偉方たちの『安全宣言』を、誰が信じるというのか。
日本製品がそっぽを向かれているのは、永田町が世界の善良な市民の信用を溝に棄てた報いであって、『風評』という次元ではない。

では、ぼくが正真正銘の『風評』として憂慮しているのは何かをいえば、原子力の専門家たちの『被ばく比較』がその最たるものだ。
『マイクロシーベルト』という単位を巧みに使って、福島第一原発がもらす放射性物質にさらされている人々の被ばく量と、胃のレントゲン検査のそれとを比べ、「人体への影響はない」とのたまう。
あるいは、飛行機で太平洋をわたった場合、乗客1人当たりが浴びる放射線も、もっともらしく比較対象に使って、「心配はない」と言い張る。
ところがレントゲンを何回撮られても、筋肉をしつこくむしばむセシウム137が体内に入ることは考えにくい。
国際便で頻繁に飛んでも、骨をじりじりやっつけるストロンチウム90につけこまれることは、まずない。
内部被ばくと外部被ばくをごっちゃにするなんて、医者が内服薬と外用薬を混同するようなもので、わざとやっているなら犯罪的だ。
これぞ風評被害。


本当のことをいうと、内部被ばくには『安全』というレベルが存在しない。
どんなに微量でも、取り込んだからだの組織次第で、病気になる可能性がある。
ただし『ただちに』ではなく、数年後に影響が出るので、悪質な専門家たちは今のうちに被ばく比較の風評を堂々と吹いていられる。
彼らはきっと責任逃れの『自主避難計画』も、ひそかに練っていることだろう。


セシウム137の半減期が約30年で、ストロンチウム90のそれは約29年だ。
本物の風評被害について、ぼくらもそれくらい粘り強い記憶を、持ち続けなければならない

アーサー・ビナード(詩人)
1967年アメリカミシガン州生まれ。詩集『釣り上げては』で中原中也賞。


この記事が書かれたのは6月の始め頃。
そやから『風評被害』の事例については、ずいぶん昔のことのような気もする。
ああ、そんなこともあったなあ、なんて思う気持ちもある。
けど、それから実に60日も経って、そしたらいったいどんなことが改善されて、どんなことがマシになったか、
それを見つけようとしても、まるで見つからへんのが恐ろしい。
風評ではない実害が、じわじわと、あるいは劇的に、日本中に広がってしもてる。

いっぺん動かしてしもたら、人間の生命の時間の感覚からいうたら永遠に近い間、ずっとお守りしていかなあかん、ちょっとでもうっかりしたら、途端に国ひとつぐらい平気で破壊する物をあちこちに建てて、
それをまだ、「これからも使いたい、まだ増やしたい」言うてる阿呆は、永代その建物の近所に、守役として住むっちゅう運命を背負うぐらいの覚悟をして欲しい。
「もういらん」言うてる者は、なんも自分可愛さだけで言うてるのんとちゃうねん。
誰ももう傷ついて欲しないねん。誰も被曝して欲しないねん。地球を傷つけとうないねん。核兵器作る手伝いしとうないねん。
恐い恐いと、心の奥底のほうで思いながら生きとうないねん。
たかが電気を作るだけのために。

10シーベルトの被曝をすると2週間で死にます!

2011年08月03日 | 日本とわたし


いつも文字起こしをしてくださっている『ざまあみやがれ』さんという方のブログ記事から転載させていただきます。

水野「まず今、千葉アナウンサーがお伝えいたしました、福島第一原発1号機2号機の原子炉建屋の間にある屋外の排気筒の下の部分で、おそらくこれは、高いと申し上げるのがいいと思います、高い放射線量が測定されたという話です。
1時間あたり10シーベルト以上の放射線量が測定された、という発表を東京電力が行ないました。
ちなみにこれは、計測器の限界を超えておりますので、少なくとも10シーベルト、ということだと思います。
この値をどんなふうにご覧になりますか」

小出「想像を絶する強さですね」

水野「今までミリシーベルトの単位でわたくし色々なお話を小出先生から伺ってきたことが多かったと思うんですね」

小出「そうです」

水野「この10シーベルト。ミリがつかないということは、10000ミリシーベルトと同じですね」

小出「そうです」

水野「これは、どれくらいを意味する数字でしょうか」

小出「えー、千葉さんがさっき説明してくださったけれども。7シーベルトから10シーベルトの被曝をしてしまうと、人間は死んでしまいます」

小出「死ぬとおっしゃいますのは、どれくらいの時間をもって死亡に至るという」

小出「えー、通常は2週間で死にます。以内で。
で、1999年の9月の30日に、茨城県の東海村のJCOというところで、被曝の事故がありました。
その時には、10シーベルト、あるいは18シーベルト、というような被爆をした2人の労働者が、え…、生じてしまいまして、日本の医学会が総出で、彼等を助けようとしました。
えーその結果、一番沢山被曝をしたのは、大内さんという方でしたけれども。83日間、延命された挙句に、亡くなりました。
どんなことをしても、やはり助からないということです」

水野「はあ……これ、10シーベルト以上の放射線量が測定されたということの原因は、小出先生は何か思い当たられることはありますでしょうか」

小出「通常は考えられない強さですので、私は燃料、使用済みの燃料そのものが、どこかそこらに転がっている以外にはありえないと思います。」

水野「使用済みの燃料が転がるとはどういう意味ですか?」

小出「私が今、可能性があるのは、あるとおもうのは、1号機あるいは3号機で、水素爆発が起きたときに、使用済核燃料プールの1部が、かなり破損されてるはずだと思いますけれども、中にあった、使用済みの核燃料が吹き飛ばされて、そこに飛んできたのかな、と今は思いました。わかりません。私の単なる推測です」

水野「はあ……今の、プールが壊れたことによって、使用済み核燃料が吹き飛ばされて、おっしゃるのは、使用済み核燃料からじかに放射能がでているということでないと、このような高い放射線量はなかなか出ないんじゃないか、ということでよろしいですか?」

小出「はい。猛烈な放射性物質がそこにない限りは、1時間あたり10シーベルト、というような放射線量にはなりません」

水野「はあー。それは、確認は容易に出来ることなんでしょうか」

小出「出来ません」

水野「できないんですか」

小出「はい、今例えば、その作業者の方がそこの場所で測定をした、と言っているのですね。で、その人達が、4ミリシーベルトと言った」

水野「測定した作業員の被ばく量は、4ミリシーベルトとだった、という発表です」

小出「でも、1時間あたり10シーベルトの、ような放射線量のあるところで、作業者の人が4ミリシーベルトしか被ばくしていなかったとすれば、せいぜいその場に、1秒とか2秒しかいられなかった、ということです」

水野「ほんの一瞬のことですね、1秒か2秒しかいられないくらいの放射線量なんですね。これはあのー、ちゃんと防護服を着たりマスクを付けたり、色んなことをしていたら防げるものなんでしょうか」

小出「防げません。はい。あの防護服やマスクというものは、放射性物質が体に付着する、あるいは放射性物質を体が吸い込んでしまう、ということは防げますけれども。
そこにある、放射性物質があるところから飛んでくる、ガンマー線を遮るということにはなんの意味もありませんので」

水野「ガンマー線というのは、あの、服なんかは通すんですか」

小出「そうです。鉛のスーツのようなものを着ると、なにがしかは防げますけれども。
えーそれでも、今問題になっているのは、セシウムという放射性物質ですけれども。
鉛のスーツを着たとしてもほとんど防げない、というほどのガンマー線ですので」

水野「鉛のスーツでも防げないほどなんですね」

小出「はい。あの、ものすごい分厚い鉛のスーツなら別ですけれども。そんなモノを着たら、人間は動けませんので」

水野「作業できませんものね」

小出「はい。実質的には、いかなる手段をとっても防げない、と思わなければいけません」

水野「はあ……。これはじゃあ、10シーベルト以上の放射線が測定されたという場所には、これ以上、調査で立ち入ることはしないほうがいいんですね。」

小出「えー、1秒2秒で4ミリシーベルトになってしまう、ということですから、まずは近づくことすらが出来ないと思います。」

水野「はあ……。これ、近づかないと、水を入れ続けるという作業もできないと思うんです。
あるいは、汚染水を除去する、という作業にも色々関わってくるかと思うんですが。位置関係としてはどうでしょう」

小出「その場所は、何のために近寄ったんですかねえ」

千葉「これはあの、瓦礫を撤去したあとの放射線量の変化を、測定していたということなんです」

水野「瓦礫を撤去したあとの放射線量」

千葉「排気筒という設備の下の部分を、まあ計測していたということです」

小出「しかし、瓦礫っていうのはそこにあったのを、じゃあ誰かが撤去したのですか、そこの場所で」

水野「そうですよね」

千葉「そうですよね。こちらに入ってる情報によりますと、そういう事になりますねえ」

小出「そう、まあ、遠隔装置で瓦礫を撤去したのであればまだいいですけれども。
そこに人が行ったのであれば、その人達はものすごい被曝をしたことになると思います」

水野「じゃあ、どういう作業をどういう形で、人的作業だったのかロボットだったのか、という作業内容もこれは、できるだけ早く、私たちは知る必要がありますね。作業員の方を守るためにも」

小出「そうです。作業員のかたの被曝が、私は心配です」

水野「なるほど。これは、小出先生10シーベルト以上と聞かれたとき、正直どのようなお気持ち抱かれましたか」

小出「言葉を失いました」

水野「それほどの、被曝、まあ放射線量だ、ということなんですね」

小出「はい。1シーベルトと言っても、恐ろしいと思いました」

水野「ああ、1シーベルトでも」

小出「1時間あたりの。1シーベルトというような現場があるとすれば、とても近づけないな、と私は思っていたのですけれども。
今は、10シーベルトという数字が出てきたわけで、これはもう、とうてい人間が行かれるような場所ではありませんし、このままではなんの作業もできないと思います、その場所では」

水野「この件に関して、すぐにこのデータを知りたい、と思われるような、ここの事実を確かめたい、というようなことはなにかございますか?」

小出「えー、まあ、どういう作業ができるかわかりませんが、遠隔操作でできるのであれば、その場所にどんな物体があるのかを知りたいです」

水野「はい。なるほど。はい。ありがとうございました。京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました」

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↓ほんでこの、30日の新聞記事、

『東京電力は30日、福島第一原子力発電所1号機の、原子炉格納容器内の気体に含まれる、放射性物質の濃度の測定結果を発表した。
測定は、原発からの放射性物質の放出量を正確に評価する作業の一環で、格納容器内での測定は初めて。
測定濃度は、東電が当初想定した約1千分の1と低かった。

気体1立方センチメートルあたりに含まれる放射性物質は、セシウム137が20ベクレル、セシウム134が17ベクレルで、5月上旬に扉を開放する前の原子炉建屋内の濃度とほぼ同じだった。

東電の松本純一原子力・立地本部長代理は、濃度が低い理由について、放射性物質が水に溶け、格納容器の外に漏れている可能性を挙げた。
ただ、測定は1地点のみで、「この結果だけで格納容器の損傷の程度などを推定することは難しい」と話し、今後測定する、2号機の格納容器内の濃度などとあわせて、評価するという』


これ読んだ時、え?と思たこと3つ。
原発からの放射性物質の放出量を正確に評価する作業が、7月30日、事故後ほぼ5ヶ月も経って初めてやったわけ?
放射性物質が水に溶けて格納容器の外に漏れてるって……漏れてどこいってしもたん?
で、測定したんはたったの1地点……。

ほんま、なにやってんのあんたら?

頭の中を、呆れ鳥が「あほ~あほ~」鳴きながら旋回しっ放しや。
なんで今だに東電に任せてんの?
なんで日本中の、世界に誇る科学や化学の技術力をかき集めへんの!

わたしがなんで原発を動かしたらあかんと思うのか、その一番の理由がここやねん。
原発村の人間て、どうしたらええんかさっぱりわからんもんばっかやん。
シビアな事故は起こらへんのが大前提やったから、事故も、事故後の対策も、事故後の作業も、それから放射能の広がり方も、想像もせんかったし、真面目に考えてなかったし、そやからほんまは初っぱなからお手上げやってんやろ?
それをまあ、もうとっくにバレバレやのに、悪あがきして、誤摩化して、ウソついて、隠して、まるで役に立たへんことばっかりして、
 
ほんでいきなり、10シーベルトの物体が転がってましてんって……。
そこにいったい、どんだけの人がどれぐらいの時間いて、どんな作業しとったんか、責任者はちゃんと調べたんか?え?

あかんでこれ。ほんまあかん。
いっぺんゼロから仕切り直さな。人間も替えな。原発推進も反対もないわ。そんなん言うてる場合ちゃうわ。
ようわかってる人間に作業の段取り考えてもろて。
世界一の無責任男と女はもう、舞台から降りて。作業の邪魔や。
あんたらは、汚染区域行ってホース持ちしぃ。
今までの罪滅ぼしに、せめて除染の手伝いぐらいはせなあかんのとちゃう?