ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

1 Winsor Bloomfield, New Jersey

2009年04月16日 | お家狂想曲
はじめまして、ウィンザーのレンガ家です。長雨が上がり、急に暖かくなったからか、いきなり桜が満開です!



さっそくインスペクターのビルおじさんが、わしに任さんかぁ~い!とばかりに威勢良くやって来てくれました。
家の周りをグルグル、庭を一歩一歩、捜査官のような精密さでもって、あらゆる所に目を光らせては「あ~見っけ!」と嬉しそうに説明してくれるビル。
今回もやっぱり、たくさんの講義を聞かせていただきました。
レンガの壁のツタは、見た目はいいけど、家のためには良くないのでぜぇ~んぶ撤去!
ここは以前ガレージが建ってた所に違いないから、今も持ち主が市の許可を得て取り壊しているのかどうか調査!税金が違ってくるからね。
あ、この階段のこの段は、あと何年かしたらやばいなあ~。けど、ここだけだと思って修理を始めても、開けると何が出てくるかわからんぞぉ~と脅すビル。
けれども、ありがたいことに、今回の家には地中に埋まったオイルタンクは無さそうです。前回はこれで随分泣かされたので助かりました。

家に入ると即地下室に。トレードマークの長い懐中電灯片手に、どんどん進むビル、立ち止まるとすぐに講義が始まるので、金魚のフン状態のわたし達。

「こりゃ骨董品じゃわい。けど、状態はいいからまだまだイケるぞよ」「マジっすかぁ~?」



「あ、こりゃあかんわい。このバーナー、新品と交換ね。どうしてかってぇと……(長い講義開始)」



「おっ、こりゃかなりお金が儲かるぞい。ネットでオークションにかけてみんしゃい。マニアが集りよる」
「え?なんでこんなんに?」
「こんなんって失礼な!正真正銘ソープストーンで作られたシンクじゃからな。完全な状態で残ってるし。これは大事に保存しなされ」



地下室の壁は、それぞれの部屋によって違います。ここは外への出口に1番近い部屋の壁。



ビルおじさんの仕事っぷりです。写真を撮っていると「わしの写真撮ってどないする?」と聞かれたので、「日本語のブログに載せます」と答えると、「っつぅことは、もしかしたらわし、日本人のべっぴんガールフレンドができちゃうってこと?」とご機嫌。52年連れ添った奥さんに言いつけるぞぉ~。



ビル氏の真ん中の写真でも分かるように、家の後ろ側の増築した部分の地下の天井に白蟻の被害がありました。丁度1階のバスルームの下です。
ここではかなり時間を使って、あちこちの柱や木枠をノミのようなもので突いていました。この家の1番大きな問題になりそうです。

というわけで、無事にインスペクションが終わりました。
修理改善に必要な工事の規模と予算を各専門の方々に調べてもらい、その予算を挟んで、再び売り手と買い手の弁護士さんが話し合います。
どちらにしてもこの地域は、家の何かを改築したり修理したり取り壊したりする毎に、まずは市の許可をもらわなければならないという面倒な法律があります。
まあ、今回はまだ、夏休みに入っていないので、相手や業者のバカンスが終わるのを待ったり、ノロノロうだうだされる心配は無いと思うのですが……。

旦那もわたしも、買うと腹を決めました。
旦那はまだ、家の向かって左隣の、なかなかチャーミングな庭をセットで買おうかどうか思案しています。
家のオーナーが所有しているその庭は、銅の彫刻家の息子さんの作品が置かれていたり、花壇や植木が上品に配置されている素敵な空間なのですが、
如何せん、税金が高い!年40万?!
ええやん、どっかの誰かが買って、そこに家を建ててしまうまでの間楽しませてもろたら。とわたしはなんとか説得しようとしているのですが……。

そうそう、その彫刻家さんのことで思い出しました。
3階の部屋を調べていたビルおじさん。天井の1部をずらして天井裏に上半身をすっぽり隠し、周りをぐるりと見回していた時、「おぅ!こんなとこにガイ(男)がいる!」と叫んだのです?!
脚立の足元でビルを見上げていた旦那とわたし。顔を見合わせた後、次の言葉を待ちました。でも、彼は同じことを繰り返すばかり。
「ねえ、男ってなによ、ねえ、何がいるの?」たまらなくなってわたしが聞くと、ニヤニヤしながら降りてきたビル。
「だからガイだよガイ。なんだったら自分で見てみな」
「あのねえビル、まうみはちょっとあっち系の世界と通じてたりするもんで、変なこと言わない方がいいよ」と忠告する旦那。
「変なことなんか言ってないって、ほれ、これで見てみな」と旦那に懐中電灯を渡すビル。「うわっ!」
そしてわたしにも番がきて……、
確かに、いらっしゃいましたです、こっちを向いてるガイが……しかも首だけの……。
彫刻家の息子さんの作品のようです。他にも銅の作品などがいろいろと置かれてありました。
「この家の守護人ってことや」と、むちゃくちゃ無理矢理に片付けてしまおうとする旦那。豪快に笑うビル。ちょっと心配そうに天井を見上げるわたし。
凸凹トリオは、懐中電灯と脚立を持って、下の階に降りていったのでありました。

さて、来週の木曜日までに、ビルが書き出してくれた問題すべての件について、双方ともに納得できる手段を考え出し話し合わなければなりません。
三匹の子豚の末っ子ウーが建てたのと同じ頑丈なレンガの家。わたし達、ウィンザーの住人になれるのでしょうか。