まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

農業オットケー!

2021-04-11 | 北米映画 15~21
 「ミナリ」
 韓国系移民のジェイコブは、農業で一旗あげるため妻子を連れてアーカンソー州で農園を始める。経営が軌道に乗らない中、韓国から妻の母が孫の世話のためやって来るが…
 昨年の「パラサイト 半地下の家族」に続き、今年も韓国ものがアカデミー賞を席巻。この作品はアメリカ映画でアメリカが舞台となってますが、登場人物はほぼ韓国人で台詞も韓国語なので、韓国映画界の快挙再びと言ってもいいのではないでしょうか。日本人としては何だか悔しい、もどかしいです。ヒットしてるらしい最近の某スウィーツ邦画や、某マンガ原作映画とか、日本ではもうこういう映画しか作られないのか~と落胆、失望せずにはいられません。国家としては日本以上にどうかしてる韓国ですが、映画だけは完全にわが国を凌駕してます。羨ましい。日本人の人気俳優やアイドルがハリウッド進出!ってのも、こんな映画こんな役でと失笑するものがほとんど。この作品のように、母国のアイデンティティを背負い、母国語で演技してアメリカで評価される、というのが真の、かつ理想的なハリウッドでの成功と言えるのではないでしょうか。

 韓国人一家がアメリカでの生活で苦労、奮闘する姿を描いてるのですが、韓流映画だときっと必要以上にドラマティックにしたり、お涙ちょうだいな感動エピソードや悲劇をぶっこんでくるところですが、この映画にはそんなあざとさや湿っぽさは全然なく、辛く厳しい現実の中にあっても優しさとユーモア、希望を失わない温かく爽やかな家族ドラマでした。必死に生きてるんだけど、追い詰められてギスギスすることなく、どこかのんびりほのぼのしてる楽天的なところが微笑ましかったです。お金や天候には苦労する一家ですが、アメリカといえばの差別偏見の被害にはほとんど遭ってなかったのが、ちょっと都合よすぎて不自然な感じもしました。アメリカ人、あんな善い人ばかりじゃないだろ。人種差別こそ、もはやアメリカ人の真の姿とさえ思える今日この頃。最近の非道すぎるヘイトクライムとか、アメリカ人の民度ってどんどん低くなっていってる気がします。あんなケダモノみたいな白人や黒人が、よくもまあ自分たちのほうがアジア人より上とか思えるよなあ。まさに狂気の沙汰です。

 家族ひとりひとりのキャラも、ありえないほど個性的には描かず、ごくフツーの市井の移民一家、でも魅力的な家族だったのが自然でよかったです。中でも幼い長男デヴィッドと祖母がいい味だしてました。二人のやりとりが笑いを誘い、かつしみじみと切なくもありました。デヴィッドにウザがられても、のほほんと大らかに孫を包み込むハルモニの包容力が素敵でした。私もあんなハルモニ、ほしかったわ。ハルモニの人柄や言動がほんと楽しくて、ちょっと品がないところやシレっとしたしたたかさに親近感。中盤とラストに、とんでもない辛苦と不運を一家にもたらしてしまうハルモニが、悲しくも愛おしかったです。

 一家を演じた俳優たちが、みんな素晴らしい演技!パパ役のスティーヴン・ユァンは、人気ドラマ「ウォーキング・デッド」で名を上げ、村上春樹原作の映画「バーニング」で高く評価され、この映画でアカデミー賞にもノミネートされるなど今アゲアゲな韓国系アメリカ人俳優。韓国語も流暢なんですね。優しいけど意固地で頑固、アメリカ人を信用してない偏狭さも自然に伝わってくる演技でした。ママ役のハン・イェリも、デヴィッド役のアラン・キムくんも、オスカー候補になってもおかしくない好演でした。特にブサカワなアランくん、末恐ろしい子役ですよ。英語と韓国語のバイリンガル演技も驚異でした。

 ハルモニ役は、韓流映画やドラマでおなじみの売れっ子ばばあ女優ユン・ヨジョン。韓国人俳優初のオスカー候補!受賞もありえるので、ほんと快挙です。プっと笑えて、しんみりと切なくさせる忘れ難い演技。韓国ならではの老女だけど、同時に若者への無償の愛と高齢者の悲しい末路は、誰の心の琴線にも触れる万国共通なものではないでしょうか。オスカー獲ってほしい!
 農業って尊い!そして大変!と、あらためて思いました。お金と体力があれば、私も農業したい!毎年狭い庭のプランターで、ロマネスコやミニトマトを栽培してるのですが、せめて小さな畑で野菜を育ててみたいものです。それにしても。この映画を観て、夢をかなえるためにはきれいごとばかりでは無理だと思い知りました。誰かが傷ついても犠牲になっても構わない、という冷酷さも必要なんですね。独りの力で実現できる夢なんてありません。
 タイトルのミナリとは、韓国語でセリのことだとか。ハルモニが水辺でセリを育てるのですが、ほとんどほったらかしでも生い茂る逞しさは、異国での苦労に挫けない一家そのもので、映画の題にぴったりです。
コメント (2)
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