「ルートヴィヒ 神々の黄昏」
バイエルンの若き国王ルートヴィヒ2世は、現実逃避のように芸術や城の建築に耽溺する。彼の常軌を逸した言動や浪費を危惧する大臣たちは、ルートヴィヒを廃位へと追いやり彼を軟禁するが…
イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督といえば、高貴と耽美のマエストロ。ヴィスコンティ監督が描く貴族社会は、ハリウッドや韓国の成金セレブとはまったく別世界。イギリスの貴族とも、また違うんですよね~。イギリス貴族は、優美でどこか軽やかだけど、ヴィスコンティ監督のイタリアやドイツの上流社会は、退廃的で重厚。ゴージャスとかエレガンスとは違う、濃密で爛熟の美に魅せられます。庶民が想像やリサーチでこしらえたものとは違うリアリティも、実際にも貴族出身であるヴィスコンティ監督ならでは。衣装や室内インテリアとか、いかにも映画用に作ったような小道具感、セット感がなくて、細部にわたって本物っぽい。ほとんどがスタジオではなく、実際のお城で撮影したのでしょうか。美しい古城や庭園、王族や貴族たちの衣装やアクセサリーの美麗さ、ノーブルさに圧倒・魅了されます。
醜いもの卑しいもビンボー臭いものを完全拒否な、めくるめく耽美と退廃。ルートヴィヒが生きた世界、それはある意味SFよりもファンタジーです。現実を拒むあまり、あっちの世界の住人になっていくルートヴィヒですが。明らかにき○がい!な人ではなく、即位したばかりの頃は、すごく繊細で内気で純真、真面目な王さまって感じ。確かにあんなにピュアだと、現実的な世界では生きていけないだろうな~。ワーグナーに金ヅルにされたり、従姉のエリーザベトに翻弄されたり。純粋培養で育った汚れを知らぬ、やんごとなき貴人って、あんな風なんだろうな~。美しく甘い蜜をたたえた花には、必然的に虫が寄ってきます。最悪の害虫がワーグナー。有名な音楽家が、あんなにズルい卑しいおっさんだったとは!見事なまでの寄生虫っぷりでした。愛人のコジマとグルになってルートヴィヒにタカる姿、醜悪だけど何か笑えました。
ルートヴィヒが精神を蝕まれていく姿を、時間をかけて描いています。4時間近くあるので、集中力のない私は一日1時間ずつ観る、という連続ドラマ方式で観ましたどうしてルートヴィヒが狂ってしまったのか、はっきりとした原因とかは明らかにしてません。突然の死も、いったい何が起こったのか不可解なまま。そういう謎めいたところも、ルートヴィヒの悲しさ、魅力です。もともと精神疾患だった?とは思われますが。呪われた家系、というのも耽美的な設定。ルートヴィヒの弟王子が可愛くて(ちょっとスカーレット・ヨハンソン似?)可哀想だった。あの発狂を目の当たりにしたら、ルートヴィヒじゃなくても不安と絶望のどん底に陥りますよ。
ヴィスコンティ監督といえば、やはり男色も欠かせません。ルートヴィヒも、女を愛せない男色家。美青年な侍従や将校や俳優を、妖しく寵愛するシーンが腐には嬉しい。男たちの乱交パーティっぽい宴は、「地獄に堕ちた勇者ども」でもありましたね。ルートヴィヒの発狂は、この男色も関係あるのではないでしょうか。美青年を愛する時のルートヴィヒは、いつも苦悩と苦痛と恐怖に満ちていて、ちっとも幸せそうじゃなかったし。鬱屈した現実から逃避したい気持ちは解からんでもなかったが、税金を浪費するのはいただけません。私がバイエルン国民だったら、あんな国王イヤです。
ルートヴィヒ役は、ヴィスコンティ監督の寵童だったヘルムート・バーガー。
オーストリア人のヘルムート、ハリウッドやイギリスのイケメンとは、かなり毛色が違う美男子です。冷たくて厳めしい美貌というか。たま~に北村一輝、目の錯覚でヒロミ!に似て見えたりした鉄腕アトムみたいな髪型も印象的です。晩年のルートヴィヒを演じてる時のヘルムートのほうが、若いルートヴィヒの時よりカッコよかった。シブくて端麗な紳士っぽくて。ヴィスコンティ監督作品で魅力のすべてを出しきったのか、監督亡き後は凋落してしまったヘルムートですが、「サンローラン」など最近また映画にも出るようになってるみたいですね。本国オーストリアでは、毒舌おじさんとしてTVのバラエティで人気者らしいと聞いて、何か切なくなりました。
ルートヴィヒが唯一愛した(あくまで精神的な愛ですが)女性、オーストリアの皇后エリーザベト役のロミー・シュナイダーの美しさ、存在感にも圧倒されます。気高く威厳がありながらも、軽やかに愛らしく小悪魔的でもある貴婦人役なんて、卓越した演技力や壮絶な女優魂があってもできない役です。宝塚の舞台でも人気のヒロインとなったエリーザベトは、女優なら誰でも憧れる役でしょう。審美眼が高く厳しいヴィスコンティ監督にも絶賛されたというロミーの大女優ぶりこそ、この映画最大の見どころ、魅力かもしれません。奇しくもロミーは、若い頃に自分を人気アイドル女優にした「プリンセス・シシー」でも、エリーザベトを演じてましたね。まさに彼女にとっては、運命の役。華やかな人生、そして悲劇的な最期も、ロミーとエリーザベトは共通していて、大女優と皇后の不思議な因縁もまた映画的です。
イタリア語に吹き替えられてたのが、ちょっと残念でした。ハリウッド映画で舞台がドイツやフランスなのに、みんな英語を喋るのはまあ仕方ないとして、せっかくヘルムートもロミーも、そしてルートヴィヒを支える軍人役のヘルムート・グリーム(「地獄に堕ちた勇者ども」ではクールな悪役を好演してましたね)も、母国語がドイツ語なのに。彼らがドイツ語で演じたバージョンが観たかった。
バイエルンの若き国王ルートヴィヒ2世は、現実逃避のように芸術や城の建築に耽溺する。彼の常軌を逸した言動や浪費を危惧する大臣たちは、ルートヴィヒを廃位へと追いやり彼を軟禁するが…
イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督といえば、高貴と耽美のマエストロ。ヴィスコンティ監督が描く貴族社会は、ハリウッドや韓国の成金セレブとはまったく別世界。イギリスの貴族とも、また違うんですよね~。イギリス貴族は、優美でどこか軽やかだけど、ヴィスコンティ監督のイタリアやドイツの上流社会は、退廃的で重厚。ゴージャスとかエレガンスとは違う、濃密で爛熟の美に魅せられます。庶民が想像やリサーチでこしらえたものとは違うリアリティも、実際にも貴族出身であるヴィスコンティ監督ならでは。衣装や室内インテリアとか、いかにも映画用に作ったような小道具感、セット感がなくて、細部にわたって本物っぽい。ほとんどがスタジオではなく、実際のお城で撮影したのでしょうか。美しい古城や庭園、王族や貴族たちの衣装やアクセサリーの美麗さ、ノーブルさに圧倒・魅了されます。
醜いもの卑しいもビンボー臭いものを完全拒否な、めくるめく耽美と退廃。ルートヴィヒが生きた世界、それはある意味SFよりもファンタジーです。現実を拒むあまり、あっちの世界の住人になっていくルートヴィヒですが。明らかにき○がい!な人ではなく、即位したばかりの頃は、すごく繊細で内気で純真、真面目な王さまって感じ。確かにあんなにピュアだと、現実的な世界では生きていけないだろうな~。ワーグナーに金ヅルにされたり、従姉のエリーザベトに翻弄されたり。純粋培養で育った汚れを知らぬ、やんごとなき貴人って、あんな風なんだろうな~。美しく甘い蜜をたたえた花には、必然的に虫が寄ってきます。最悪の害虫がワーグナー。有名な音楽家が、あんなにズルい卑しいおっさんだったとは!見事なまでの寄生虫っぷりでした。愛人のコジマとグルになってルートヴィヒにタカる姿、醜悪だけど何か笑えました。
ルートヴィヒが精神を蝕まれていく姿を、時間をかけて描いています。4時間近くあるので、集中力のない私は一日1時間ずつ観る、という連続ドラマ方式で観ましたどうしてルートヴィヒが狂ってしまったのか、はっきりとした原因とかは明らかにしてません。突然の死も、いったい何が起こったのか不可解なまま。そういう謎めいたところも、ルートヴィヒの悲しさ、魅力です。もともと精神疾患だった?とは思われますが。呪われた家系、というのも耽美的な設定。ルートヴィヒの弟王子が可愛くて(ちょっとスカーレット・ヨハンソン似?)可哀想だった。あの発狂を目の当たりにしたら、ルートヴィヒじゃなくても不安と絶望のどん底に陥りますよ。
ヴィスコンティ監督といえば、やはり男色も欠かせません。ルートヴィヒも、女を愛せない男色家。美青年な侍従や将校や俳優を、妖しく寵愛するシーンが腐には嬉しい。男たちの乱交パーティっぽい宴は、「地獄に堕ちた勇者ども」でもありましたね。ルートヴィヒの発狂は、この男色も関係あるのではないでしょうか。美青年を愛する時のルートヴィヒは、いつも苦悩と苦痛と恐怖に満ちていて、ちっとも幸せそうじゃなかったし。鬱屈した現実から逃避したい気持ちは解からんでもなかったが、税金を浪費するのはいただけません。私がバイエルン国民だったら、あんな国王イヤです。
ルートヴィヒ役は、ヴィスコンティ監督の寵童だったヘルムート・バーガー。
オーストリア人のヘルムート、ハリウッドやイギリスのイケメンとは、かなり毛色が違う美男子です。冷たくて厳めしい美貌というか。たま~に北村一輝、目の錯覚でヒロミ!に似て見えたりした鉄腕アトムみたいな髪型も印象的です。晩年のルートヴィヒを演じてる時のヘルムートのほうが、若いルートヴィヒの時よりカッコよかった。シブくて端麗な紳士っぽくて。ヴィスコンティ監督作品で魅力のすべてを出しきったのか、監督亡き後は凋落してしまったヘルムートですが、「サンローラン」など最近また映画にも出るようになってるみたいですね。本国オーストリアでは、毒舌おじさんとしてTVのバラエティで人気者らしいと聞いて、何か切なくなりました。
ルートヴィヒが唯一愛した(あくまで精神的な愛ですが)女性、オーストリアの皇后エリーザベト役のロミー・シュナイダーの美しさ、存在感にも圧倒されます。気高く威厳がありながらも、軽やかに愛らしく小悪魔的でもある貴婦人役なんて、卓越した演技力や壮絶な女優魂があってもできない役です。宝塚の舞台でも人気のヒロインとなったエリーザベトは、女優なら誰でも憧れる役でしょう。審美眼が高く厳しいヴィスコンティ監督にも絶賛されたというロミーの大女優ぶりこそ、この映画最大の見どころ、魅力かもしれません。奇しくもロミーは、若い頃に自分を人気アイドル女優にした「プリンセス・シシー」でも、エリーザベトを演じてましたね。まさに彼女にとっては、運命の役。華やかな人生、そして悲劇的な最期も、ロミーとエリーザベトは共通していて、大女優と皇后の不思議な因縁もまた映画的です。
イタリア語に吹き替えられてたのが、ちょっと残念でした。ハリウッド映画で舞台がドイツやフランスなのに、みんな英語を喋るのはまあ仕方ないとして、せっかくヘルムートもロミーも、そしてルートヴィヒを支える軍人役のヘルムート・グリーム(「地獄に堕ちた勇者ども」ではクールな悪役を好演してましたね)も、母国語がドイツ語なのに。彼らがドイツ語で演じたバージョンが観たかった。
ロミー、本当に美しかったですね~。ヘルムート・バーガーも。美の競演とはまさに本作のこと。
イタリア語ってのが私も残念に思いました。
2012年にドイツ物の『ルートヴィヒ』が制作されて、劇場まで行ったんですけど、
主演のザビン・タンブレアはまあまあながら、シシーがゼンゼン魅力ナシでガックシでした。
全体にアッサリ目でしたし。
ヴィスコンティ版が濃厚エスプレッソだとすると、ドイツ版はインスタントコーヒー、てなところでしょーか。
前回の記事「ハッピーエンド」も面白そうですね!
たけ子さんのご指南(?)のおかげで、私も韓国映画に目覚めつつあります。
チョン・ドヨン、凄い役者魂の俳優さんですよね。尊敬しちゃいます。別金様とは大違い、、、。
見てみたくなりました。
でも、観て良かったです。
長くてとりとめもないデカダンスですが、なんとも美しいですね。そして退廃・・・
この時代のヘルムート・バーガーはほんと美しくて存在自体がエロチックです。
唯一ドイツ語じゃなくイタリア語というところが残念でした。
ルードウィヒのヘアスタイル! たしかに鉄腕アトムですね!
私はサリーちゃんのパパだ!と思ったんですが、どっちが古いんだろう・・・(;・∀・)
ロミーもヘルムートも、美しかった~。今のスターにはない美ですよね~。オーストリア人とドイツ人の二人がイタリア語…は、かなり残念ですよね~。
新ルートヴィヒも観たいかも!でも、インスタントコーヒー(笑)なんですね~。やっぱ飲むなら濃厚エスプレッソのほうがいいわ~。
ハッピーエンド、エロくて怖い映画ですよ!ぜひご覧になって!すねこすりさんとも、韓流で盛り上がりたいです!韓国映画界の至宝チョン・ドヨンに比べたら、毛糸別金販売なんてチープな3流女優!
zeldaさん、こんにちは!
ヴィスコンティの映画を勧めてくれるお友だちだなんて、素敵じゃないですか!私なんか、ヘンなアニメや漫画を勧めてくる若い子に困ってます。
デカダンス…私も一度でいいから退廃してみたいです。当時のヘルムートの美貌も神がかってますよね~。ヘルムート、オーストリア人なのにドイツ語で演技してる彼、そういえば見たことないような…
サリーちゃんのパパ!確かに!私もいつか、魔女っこメグになりたいです(古っ&意味不明)♪