まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

夏休みの毒親

2021-06-25 | イタリア映画
 「悪の寓話」
 ローマ郊外で暮らすローザ家とプラチド家は家族ぐるみの付き合いをしていたが、それは上辺だけのものであった。ある日、プラチド家の息子の部屋から手製の爆弾が発見され騒動になるが…
 イタリア映画祭2021でオンライン配信された新作を観ました~🍕今年も大好きなエリオ・ジェルマーノの出演作が数本あり、ファンには喜ばしいかぎり。あまり濃くないけど決して薄口でもない、ほどよい感じにイタリアンイケメンな風貌と、難役にも果敢に挑み見事に演じる役者魂と高い演技力を備えたエリオは、今やイタリアのみならずヨーロッパを代表する俳優と言える存在となっているのではないでしょうか。そんなエリオがこの作品で演じたのは、2児のパパ役。カンヌ映画祭男優賞を受賞した「我らの生活」では子育てに奮闘する愛情深いパパ役でしたが、今回は子どもたちに対して支配的で威圧的、ちょっとしたことで感情的になって激高したり号泣したりする、かなりめんどくさいパパ役でした。

 めんどくさいだけならいいのですが、ビニールプールをナイフで裂いたり、気に入らない質問をしてきた息子を車から引きずり出して殴る蹴るの暴力を振るったり、どんどんヤバいDVパパと化していって怖かったです。あのパパ、情緒不安定というか、ちょっと精神を病んでたのかしらん。近所づきあいでのストレスとかマウント、劣等感で生じるイライラや鬱屈で神経が痛んでいく、その弱さとヤバさがエリオが発する張り詰めた雰囲気や血走った目つきで伝わってきました。こんなイヤな毒親役、エリオぐらいの人気スターともなれば演じないはずなのに、あえて演じるところが真の役者なエリオ。キムタクとかもこういう役やってみれば、いい役者になれると思うのですが。

 クレジットはトップだけど主役ではなく、出ずっぱりというわけでもないけど、出てくるたびにサイコパスっぽさで不穏な空気をもたらすエリオ。その不吉で邪悪な存在感はかなり強烈でした。ラスト、衝撃的な悲劇に対する毒パパのリアクション、あれはどうなの?!とことん愚かで卑小。救いのなさに絶句ですが、あのシーンで初めてあのパパに哀れみを覚えました。それはエリオの表情や動きが、何だか母性本能をくすぐる小動物みたいだったから。やっぱエリオって、どんな役でも可愛いんですよね~。中年になってもナイーブな少年みたい。濁った役でも瞳は相変わらず黒々と宝石のように美しい♡
 爆弾騒動までは、これといって特に事件や騒動が起きるわけでもなく、ごく淡々と静かに郊外で暮らす子供たちの夏の日常をカメラで追っているのですが、明らかに歪んだ人間関係や親子関係の描写がそこに挟まれており、いつかきっと怖いこと、悲劇が発生するに違いないという不安と緊張感をはらんでいます。子どもたちが夏休みに立てる計画が恐ろしい。ラストはかなりショッキングで後味が悪いです。子どもが苦しんだり傷ついたりする姿を見るのは本当に辛いです。親たちも苦しい悲しいんだろうけど、それは子どもを傷つけていい理由にはなりません。

 ↑ エリオ~イタリア映画祭2021では、エリオがベルリン映画祭男優賞を受賞した「私は隠れてしまいたかった」も配信してたのですが、あっちょんぶりけー!知らん間に配信終了してた!でも以前から観たかった旧作「レオパルディ」が!今度こそ観逃さない!
コメント
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