まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

私、女優なんだから!

2018-09-21 | 日本映画
 「Wの悲劇」
 劇団員の静香は、舞台「Wの悲劇」で看板女優の羽鳥翔が演じるヒロインの娘役のオーディションに落ちるが、ホテルで愛人が急死という事態に陥ったた翔に、スキャンダルの身代わりになってほしいと頼まれる。その見返りに、娘役をやらせてあげると言われた静香は…
 薬師丸ひろ子が最後に主演した角川映画。ひろ子の演技はアイドルを脱皮したと高く評価され、彼女が歌う主題歌「WOMAN ~Wの悲劇より~」もヒットし、女優としても歌手としても代表作となりました。
 
 初めてこの映画を観た時は幼かったせいか、そんなに面白いとは思えなかったのですが、年老いた今あらためて観ると、カルト的な人気がある理由が理解できるように。ひろ子のアイドル映画であると同時に、女という怪物を魅力的に楽しく描いてるんですよ。とりわけゲイの人たちから支持されているそうですが、それは男に媚びた気持ち悪い可愛さや、女に媚びたインチキくさいカッコよさではなく、ヒロインたちの女のイヤらしさや怖さやズルさ、そして強さが、これぞ女の真実!やっぱ女はこうでなきゃ!な魅力となって、彼らにアピールしてるからではないでしょうか。そして、女優といえば女の中でもとりわけ強烈な業を秘めた生き物として、古くから映画やドラマ、小説や漫画で人気を誇っています。この映画が人気なのも、そんな女優の大暴れが楽しいからではないでしょうか。

 女優って、やっぱ鋼のメンタルと燃える野心、ズル賢さがないと大成しない職業なんだろうな~と、静香と翔を見ていて思いました。お人よしには絶対ムリな仕事でしょう。いま人気のあの女優たちも、清純ぶったてり善い人ぶってたりするけど、ホントは静香や翔みたいなんだろうな~。静香なんか、20そこそこの小娘なのに、かなり冷酷で打算的な野心家の食わせ者ですもん。フツーの精神、常識の持ち主なら、いくら舞台で大役がもらえるとはいえ、あんな取引に応じることなどできないでしょうし。腹上死したおっさんの死体の前で身代わり役になりきる準備してる姿とか、とても嘘八百とは思えぬ記者会見での大熱演など、肝が座りすぎでしょ。静香、北島マヤも真っ青な天性の女優ですよ。

 普段は大物女優らしからぬ気さくな善い人なのに、おのれの女優生命がかかった危機には、なりふり構わず冷酷、狡猾になる翔も、これぞ女優!なキャラでした。静香に役を与えるため、娘役を好演してた新人女優にイチャモンをつけ始め、無理やり降板させるとか非道すぎて笑えたわ。劇団関係者の前での静香擁護シーンなんか、まさに舞台での熱演みたいでした。どんな犠牲も厭わず、他人を蹴落とすことなど朝飯前になってしまうほど、舞台に立つこと、喝采を浴びることには魔力のような魅力があるのですね。

 静香役の薬師丸ひろ子は、すごく可愛いです。今のみんな同じに見える、いくらでも替えがきくアイドルたちと違って、何もかもが独特で個性的。やっぱ声が好きです。アイドル全開の可愛いコぶりっコ演技なんだけど、静香のしたたかで豪胆なキャラのおかげで、気持ち悪くないです。銭湯に浴衣姿で行くのが、不自然すぎる可愛さ演出で笑えた。翔役の三田佳子は、もう一人のヒロインといっていいほど。生活感など微塵もないオーラ、華やかな美熟女ぶりは、まさにザ・女優。翔は、女優なら演じてみたい美味しい役なのでは。数々の助演女優賞を受賞し、ひろ子以上に絶賛された三田さんにとっても、この映画は代表作となりました。

 静香と翔に役を奪われる新人女優役は、今は何だかエラソーなコメンテイターおばさんになってる高木美保。すごい美人で、意地悪そう。舞台から引きずり降ろされてもを同情できないヤな女役、適役でした。静香に恋する青年役の世良公則が、ちょっとミスキャスト。世良さんカッコいいんだけど、あんなアホみたいなピュア男役、似合わんわ~。あと、静香の記者会見シーンで、本物の芸能レポーターが出演してます。故梨本さんとか、福島翼さんとか、懐かしい顔ぶれ。舞台演出家役の故蜷川幸雄が、セルフパロディ演技。物語とシンクロする舞台の演出は、蜷川氏が担当したとか。 
 この作品といえば、映画史に残る名台詞の数々。特に静香の『顔はぶたないで!私、女優なんだから!』は、ギャグして今なお愛用されています。翔の『女優、女優、女優!』も、言ってみたい台詞のひとつです。主題歌の「WOMAN ~Wの悲劇より~」だけでなく、ひろ子が歌う映画主題歌はどれも名曲なので、未見の「探偵物語」や「メイン・テーマ」、「紳士同盟」とかも観たくなってきました♫
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