まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

歌え!子連れ脱獄囚

2012-12-19 | イギリス、アイルランド映画
 「レ・ミゼラブル」
 久々の試写会♪
 19世紀のフランス。脱獄囚ジャン・バルジャンは、工場主兼市長となり人々から尊敬される人物となっていた。しかし、彼を執拗に追う刑事ジャベールに正体を見破られ、娼婦フォンティーヌの遺児コゼットとともに逃亡生活に。数年後、美しく成長したコゼットは、革命に身を投じる青年マリウスと恋に落ちる。それを知ったバルジャンは…
 「英国王のスピーチ」でオスカーを受賞したトム・フーパー監督作。
 こういう映画は、やっぱ大きなスクリーンで観たほうがいいよなあと、あらためて思いました。恥ずかしながら実は、有名な原作もミュージカルもよく知らなくて、ストーリーに関してはほぼ100%予備知識なしで鑑賞と相成ったのですが…運命、ありえない偶然、悲しい片想い、すれ違い、清純な愛、涙の死別、苦しい貧困etc.何だか韓流ドラマみたいな話と人間関係だったような。分かりやすくドラマチックなのはいいけど、スウィート&お涙ちょうだいすぎるところは、ちょっと私が苦手とする味わいでした。感動を煽る歌や音楽も、エモーショナルすぎるというか、ぶっちゃけオーバーなので、いちいち歌いまくる登場人物たちを見ていると、フツーに喋ろよ~なんて身もフタもない感想を抱いてしまった私です。ミュージカルに対して何て無粋なことを、と我ながら呆れます。
 私、ミュージカルはどちらかと言えば、ちょっと邪道系のほうが好きなんです。「8人の女たち」とか「シカゴ」とか、内容がエグくてブラックな不良系ミュージカル。この映画は、正統派というか真面目すぎる優等生系ミュージカル?だからか、返って意地悪で冷めた目でツッコミを入れてしまいたくなるんです。ご臨終寸前なのに何でそんなに力強く歌えるんだよフォンティーヌ、とか。ジャベール、コワモテな非情刑事きどってる割にはお人よしだなあ、とか。ジャン・バルジャン、怪力すぎる!とか。あと、ほとんどの台詞が歌になってたのがちょっと…無理やり歌にしてる感が拭えなくて。あと、ミュージカルといえば期待してしまう、目に楽しい華やかさやウキウキするハッピー感が皆無だったのも残念でした。貧困にあえぐ人々の悲惨な姿や生活に、暗澹とさせられます。子どもが殺されるシーンとか、もうヤメテー!です。ズタボロな風体、鬼気迫る形相で絶叫、いや歌いながら群なして画面いっぱいに迫ってくる貧民たちは、まるでゾンビみたいで怖いです。

 登場人物たちにあまり共感できなかったのも、感動に至らなかった要因です。ジャン・バルジャンは高潔な聖人すぎる。コゼットを男として愛していると気づいた彼が、もっと嫉妬や苦悩があらわにしてたら、人間的な魅力が出てたはずなんだけど。ジャベールは、ジャン・バルジャンに簡単に何度も騙され逃げられ、刑事として無能すぎる。コゼットはヒロインなのに存在感薄いし。フォンティーヌ、男を殴ったりツバかけたり、カッとなりすぎ。いちばんトホホなのがマリウスです。貧しい人たちのために革命戦士になった彼が。ブルジョアを憎んでたはずの彼が。あのラスト、何なの?!あんた、それでいいのかよ?!と呆れるやら嘆かわしいやら。仲間が草葉の陰で泣いてるよ。
 って、何だか文句ばっか言ってるけど、観るのは時間の無駄な映画では決してありません。メインキャラたちが一斉に畳み掛けるように歌うシーンや、革命へと人々が熱く団結するシーンのダイナミックさは圧巻。私が特に好きなのは、マリウスと仲間たちが決起の誓いの歌を歌うところ。レッド~♪ブラック~♪耳に残ります。あと、華やかさには欠けるものの、当時のパリの街のセットも金がかかってるなあと感嘆。
 有名スターたちが、それぞれ熱演&熱唱!
 ジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマンとフォンティーヌ役のアン・ハサウェイは、数年前のアカデミー賞授賞式でノリノリなパフォーマンスを披露してましたよね。あれはこの映画の予告編?とにもかくにもこの2人、見ろよ聞けよ~!オレらこんなに芸達者なんだよおおお~!!な怪気炎がメラメラと上がってて、敬服感服せずにはいられません。ちょっと力が入りすぎて、暑苦しくもあったけど…おヒューは皺が増えて、ますますクリント・イーストウッド顔になってきてるような。アン子さんは顔が派手なので、あんまし薄幸に見えません。

 セコい悪党夫婦役のサシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム・カーターが、コメディリリーフ的な楽しい珍演でした。この二人、ジョニー・デップの「スウィーニー・トッド」でも共演してましたよね。
 コゼット役は、最近売れっ子なアマンダ・セイフライド。美人ですが、目も口もデカすぎて怖い。ヒュー・ジャックマンの半分ぐらいしか背丈がなくて、意外と小柄だったのには驚きました。マリウス役のエディ・レッドメインは、イケメンなんだけど地味すぎる。イーサン・ホークをさらに地味にした感じ?マリウスよりも、彼の仲間たちのほうがイケメンだったような。特に、アンジョルラス役のアーロン・トヴェイト。

 情熱的な見た目と演技、すごく目立っててイケてました。トヴェイトくん、人気TVドラマ「ゴシップガール」にも出てるみたいですが、それよりもジェームズ・フランコ主演作“Howl”のほうが気になる!だってだって、フランコくんとゲイの恋人同士を演じてて、ラブシーンもあるんだから!
 おっと、忘れてはいけないのが、ジャベール役のラッセル・クロウ。

 ラッシー、久しぶりに見ましたが、かつてはハリウッドをスキャンダルと演技力で震撼させたオーストラリアの野獣ラッシーも、すっかり枯れたおじさんになりましたねえ。ラッシーはどんな心境で、同郷のヒュー・ジャックマンの脇役を引き受けたのか。ちょっとだけ俳優の盛者必衰と諸行無常を感じさせたラッシーですが、ハスキーな歌声はなかなか素敵でした。まだまだ枯れる年ではないと思うので、もうひと暴れしてほしいものです。

 ↑“Howl”のジェームズ・フランコ&アーロン・トヴェイト。こんなオイシイ映画が日本未公開のままだということこそ、ああ無情!です

 
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする