まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

喪失に酔う男

2010-12-01 | 北米映画 08~14
 「シングルマン」
 人気ファッションデザイナー、トム・フォードの初監督作品。
 1962年のロサンゼルス。英国人の大学教授ジョージは、最愛の恋人が交通事故で急死して以来、絶望と喪失感の日々を送っていた。自殺を決意し準備を整えるジョージだったが...
 今年最大のYAOI必見映画、やっと観ることができました♪さすがゲイの星トム・フォード、ゲイの魂の叫びを聞け!とばかりな内容&映像は、同じ同性愛ものでもノンケや女が撮る映画とはやっぱ違う味わいと感性に満ちていました。男を愛する男の絶望や幸福が、静かに悲しく美しく描かれていました。
 期待してたほど男同士の性愛シーンはなかったけど、これもゲイの監督だからこそなのかな、と思った。アルモ姐さんやマドモワゼル・オゾンなどゲイの名匠たちの映画も、そんなに過激でエロい男同士のセックスシーン、ありませんよね。腐女子をハァハァ萌えさせる、男前やイケメンがガッツンガッツン絡む映画って、ほとんどはノンケの男性女性監督の作品。ゲイだからこそ、男を愛するからこそ、男同士の愛を安っぽい刺激剤にはできないのでしょうか。でも、観客へのサービスではなく、監督本人の趣味で(笑)男をネットリと撮ってはいます。必要以上に全裸にしたり、唇とかを執拗にアップにしたり。
 話じたいは、そんなに面白くないです。もしジョージの恋人が女だったら、単にウジウジした暗い凡庸な話になってただろうし。男の男への愛執だからこそ、狂おしく痛ましいラブストーリーに成りえたのでしょう。男女でも本当に愛し合える人とはなかなか出会えない、ましてやゲイは。奇跡のような愛を失ってしまった絶望感と喪失感は、確かに死のほうが楽と思わせる苦しみかもしれません。
 演出や映像もスタイリッシュなんだけど、ちょっと才気走ってて鼻についたことも事実。ドラマチックさと緩慢さが混在してたのも、ちょっと雑な感じを否めなかった。全編シリアス調ですが、ジョージがピストル自殺を図ろうとしてなかなか死ねないシーンは、ちょっとユーモラスで笑えた。
 ジョージを演じてヴェネチア映画祭男優賞受賞、アカデミー主演男優賞にもノミネートされた、コリン・ファースの繊細かつ果敢な演技と役者魂に拍手!

 かつての英国美青年ブーム時代、私は最も地味だったコリンが最も好きでした。あれから幾年、キャリアも地味に続けていたコリンが、ここにきて狂い咲きのごとくブレイク!見た目も、いい感じに恰幅が良くなったけどオヤヂ臭くなく、知的で優しそうで清潔感と品性があって、それでいて何か不穏で静かな爆弾を秘めてそうな風情。素敵おぢさまなのに危険な変態にも見えるコリン、若い頃よりイケてます。
 コリンの抑制の効いた、それでいて大胆な演技にも感嘆。むっちりした全裸を惜しげもなくさらし、身も心もジョージという役に捧げきっています。絶望してるのに、若く美しい男に向けてしまう欲望のまなざし。あの目つきだけでもオスカーに値する、実生活ではノンケなコリンの名演です。車内で指バキュン☆するコリンがカッコカワいかった。イケメンや美男からモーションかけられまくるジョージですが、確かにコリンみたいな社会的ステイタス&教養がありそうな素敵おぢさまなら、若いゲイにもモテるだろーな。背広も似合ってて、さすが英国紳士。“The King's Speech”で2年連続オスカー候補確実と目されているコリン、今度こそ栄冠に輝けるでしょうか?

 ジョージに近づいてくる大学生ケニー役、ニコラス・ホルトが可愛かったです。ヒュー・グラント主演の「アバウト・ア・ボーイ」の太めのガキンチョが、可愛いイケメンに成長。彼もコリン・ファースに勝るとも劣らぬ見事な脱ぎっぷりを披露しています。背は高いけど、あどけない顔とか小さくてツルンとしたお尻はまだ子供っぽい。ゆえに中年男とのLOVE展開は、ほとんど淫行な危うさが。彼の60年代大学生ファッションもオシャレでした。
 ジョージの元恋人チャーリー役のジュリアン・ムーアも、出番はそう多くないけど印象的な存在でした。
 あと、ジョージの自宅がモダンでオシャレだった。
 
 ↑俳優顔負けな男前トム・フォード、ファッション業界ではブイブイいわせてたんだろうなあ。映画界でもブイブイいわせてほしいものです。次回作が楽しみですね♪

 
 
 
コメント (7)
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