まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ビジネスも戦争だ!

2009-11-03 | 日本映画
 山崎豊子映画祭②
 「不毛地帯」
 唐沢寿明主演の連ドラ、いまやってますね。豪華なのかそうでないのかビミョーなキャストには食指がソソられず、結局観ないことに。映画版は、なかなか興味深いメンツですが、果たして?
 シベリアでの過酷な捕虜生活から解放され日本に戻ってきた壱岐正は、親友・川又のいる防衛庁ではなく商社に入社する。アメリカの戦闘機購入をめぐる商社と政治家の熾烈な競争と駆け引きに巻き込まれた壱岐は、元陸軍の作戦参謀としての手腕をビジネスでも発揮し始めるが...
 面白かったです。商社と政治家の虚虚実実で冷徹な暗闘が、なかなかスリリングでした。戦場からビジネスへ、ところを変えた壱岐の戦争に引き込まれました。
 軍人から商社マンへとトラバーユした壱岐さんですが...フツーには生きられない、猫になれない虎の悲しみ。いつの間にか水を得た魚のように陰謀策動、暗躍する壱岐の封印できない戦う男の熱い血潮が、逃れられないカルマのようで怖かったです。
 ストーリー以上に、豪華、というよりシブい出演者の顔ぶれが楽しかったです。今は亡き往年の名優や、現在のベテラン俳優の若き日の姿など、かなり見ごたえありました。
 壱岐役は、仲代達矢。背後からゴゴゴゴと音が聞こえてきそうな気迫に圧倒されます。大熱演!ではなく、ほとんど無表情で動きも静かなのですが、暗い狂気みたいなものが怪気炎のように漂っていて、怖い...虚空を見てるような大きな目も不気味です。シベリアでの屈辱の肛門検査のシーン、ふんどしまで取られて四つんばい、穴の中に指を突っ込まれてヴッ!な仲代さんの表情が、ホントに挿入されたのか?みたいに真に迫りすぎてて笑えた。
 
 親友の川又役は、丹波哲郎。硬骨漢な武人って感じで、カッコよかったです。いちばん悲劇的な役で涙。彼の最期に、清く正しい人間よりズルく汚い人間のほうが強い、という社会の歪みを思い知って暗澹となりました。
 ライバル会社の商社マン田宮二郎は、あまり見せ場はなかったけどスマートで男前でした。NY駐在員役の北大路欣也、チョイ役でしたが若くてカッコ良かった。LA駐在員役の山本圭も、若くて可愛かった。声がきれい。
 名優系では、社長役の山形勲の磊落な貫禄がインパクトあり。壱岐の上司役の神山繁と、新聞記者役の井川比佐志も好演。いちばん存在感強烈で助演男優賞ものの名演だったのは、官房長役の小沢栄太郎。時代劇でも現代劇でも、悪いズルい権力者をやらせれば世界一?な小沢先生。今回も、見るからに卑劣で狡猾そうな悪爺で、憎々しい~!こんな悪い政治家がのさばってるから、日本は...と、観る者を憂国に陥れる悪人ぶりでした。あまりの悪どさにプッツンした川又に、そしてラストには壱岐にまで、貴様が諸悪の根源!このヤロー!と暴力を振るわれてヒエー!な小沢先生、ちょっと可哀相で笑えた。
 女っけはほとんどないですが、壱岐の貞淑な妻役の八千草薫と、娘役の秋吉久美子が可愛かったです。息子役の男の子もキュートでした。
 とまあ、名優たちの濃ゆ~い演技と個性がせめぎ合ってて、退屈せずに最後まで一気に観ることができます。いまやってる連ドラとキャストを比較してみたのですが...濃さと重厚さという点では、まったく勝負になってないですねえ。ジュースと日本酒ぐらいの違いがあるかも...
 
 
コメント (2)
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