まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

Patience & Persistence

2008-03-09 | 欧米のドラマ
 泣いてばかりいたって、幸せは来ないから~♪心温まり元気が出る映画やドラマは、草原でツクシを見つけたような喜びを与えてくれますね。
 アメリカのTV映画「ビル・ポーターの鞄」を観ました。2003年のエミー賞で6部門を受賞したのもうなずける、なかなかハートウォーミングで感動的な作品でした。
 脳性麻痺で体に障害を負ったビル・ポーターが、努力と根性で困難を乗り越え、訪問販売のトップセールスマンになるまでの実話のドラマ化。
 泣け!感動しろ!な押し付けがましいベタベタお涙ちょうだいっぽさは全然なく、全体的に明るくユーモアあふれた内容が、爽やかに元気づけてくれます。とにかく、ビルの負けん気がスゴい!仕事することは生きること!な強い信念にも圧倒されますが、誰かがちょっとでも彼を障害者扱いすると怒る、その意地の強さも並ではない。バカにされるのは平気だけど、憐れみから優しくされたり特別扱いされると、拒否反応を見せるビル。もうちょっと周囲の厚意に甘えてもいいのでは、独りで頑張らなくてもいいいのでは、同情も少しは受け入れたほうが得なのでは、と感じることじたいが、もう上から目線な偽善、差別偏見の証拠なのでしょうか?そんな健常者の気軽で無神経な同情を、拒んだり憎んだりするビルが、とても痛々しい。でも、しだいに助け合うこと、助けを求めることは間違ったことではない、と気づくビルの姿に、分断されていた橋がつながったような、ホっとした気持ちにさせられます。
 ビルの半生を、50年代から90年代の40年にわたって描いているので、その時代の風景やファッションなども見ていて楽しい。タイプライターからパソコン、インターネットと、移り変わり進化する時代を象徴する小道具の使い方も巧い。ビルを驚かせるゲイのカップル、その周辺に発生するエイズの影で、さりげなく暗い時代の到来を感じさせるところも秀逸。
 ビルを演じたウィリアム・H・メイシーが、ほんと素晴らしい!特殊メイクなしで宇宙人やモンスターを演じることができる怪優、というイメージの彼の、リアルな動きや喋り方が圧巻です。それに、何ともいえない優しい悲哀があって、抱きしめたいほどいとおしくなります。脚本も彼が担当しているとか。ルックスだけの若いイケメンより、見る目がある女は才あるブサイク男メイシー氏に惹かれるんだろうなあ。その見る目がある女、デスパレートな妻ことメイシー氏の妻フェリシティ・ハフマンが、ビルが訪問する家の主婦役で、クレジットなしでチョコっとカメオ出演してます。
 ビルを女手ひとつで育て、明るく励まし応援するママ役が、何とヘレン・ミレン。痴呆になるという悲劇に襲われても、カラっとシニカルなユーモアも忘れないところが、さすがミレンおばさま。ビルとの愛と別れは、ほんとに心温まり、悲しい。
 ビルの助手になる女子大生シェリー役、キーラ・セジウィックも好演。サバサバと竹を割ったようなキャラが、すごく小気味よい。彼女へのビルの片想いが、ちょっと切ないです。でもビルにとって、ずっと変わらぬ友だちでいてくれるシェリーと出会えたことは、ほんと神様からの贈り物です。五体満足でも、真の友達がいない人間のほうが、よっぽど不幸だと思うし...
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