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まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

開心!台北逍遥記④ 多情城市

2025-05-04 | 旅行、トレッキング
 台北2日目!この日は早起きして九份へ。「悲情城市」のロケ地として、「千と千尋の神隠し」のモデルとなった場所として有名、映画ファン以外にも人気の、台湾屈指の観光地です。

 早朝の台北駅。ひと気もなく閑散としています。利用客より家なき人のほうが目に留まる。九份へは鉄道で。海外ではその国のローカル線に乗るのも楽しみのひとつ。九份へはまず瑞芳まで行き、そこでバスに乗り換えます。列車にはいくつか種類があって、快速の指定席か各駅の自由席か迷ったのだけど、早朝で利用客も少ないし所要時間もそんなに変わらないので、後者にしました。悠遊カードで改札を抜け、ホームへ。乗り方は日本のJRと同じ。案内表示などわかりやすく、何も迷くことなく無事に乗れました。

 列車の窓外の景色は、やはり日本とは違った情景、風情。ちょっと東南アジアっぽい?日本では見られないような木々や、スラム街みたいなビルや住宅地が珍しく、到着まで飽きることなく眺めていました。
 50分ぐらいで瑞芳駅に着く。どんより曇って風が冷たい!寒い!昨夜は汗ばむほどの湿った暖かさだったのに。駅前はローカル色の濃ゆい店が立ち並んで賑わっていました。駅を出て左側へ進むと、九份へ向かうバスが来るバス停が。

 古びたローカルバスに乗る。結構なスピードでビュンビュンとばし、バスはどんどん小高い場所へと。九份老街というバス停で降車。瑞芳駅からは約15分ほど。そこからちょっと坂道をのぼれば、九份のメインストリートである基山街の入り口が。セブンイレブンが目印。

 九份といえば、幻想的なまでに美しい夕暮れ時がベストタイムとされていますが、その頃はものすごい人出だとか。行ったことがある人から聞いた、そのカオスな混雑ぶりに戦慄。とてもじゃないけど、私には無理!有名な情景は見られないけど、人が少ない午前中に行くことにしたのでした。朝の九份は、思ってた以上に人少なっ!ほっとするやら、寂しいやら。いろんな店が軒を連ねるアーケードのような基山街も、まだどこも開店しておらず。九份観光のハイライト、有名な豎崎路の階段も、ほぼ無人状態。

 しんと静まり返った狭い小道や坂道、階段…どこかもの哀しい、寂しい風情は、それはそれで趣深いものが。悲情城市が撮影された豎崎路の階段では、ここにトニー・レオンがいたんだな~という感慨…も吹っ飛ぶような寒さにブルブル。冷たい風が吹きつけて、のんびり散策どころじゃない!引き返した基山街では、ぼちぼち店が開き始めていました。九份の名物スイーツ、芋圓(タロイモ団子)の人気店、阿柑姨芋圓もシャッターを上げ始めていて、一番乗りで入店し注文。寒いので、当然ホットを。

 まだ誰もいない店内、海を見渡せる席に座って食べる。芋圓、薄いお汁粉みたいな味。不味くも美味しくもない、というのが正直な感想。食べ終わる頃になると、他のお客さんたちも入って来始めました。観光客が増えてきた基山街を引き返す。帰りは乗り換えなしの直行バスで台北市内に戻ることにしました。バス停で東南アジア人と思しきカップルに写真を撮ってと頼まれ、え!?とコミュ障の私は不審なほどにキョドってしまう。スマホの向きを逆にしてハイチーズとか言うなど、わざと?と思わるようなボケかまして赤っ恥!


 ↑ 故宮へ行くバスが停まるバス停近くにあった、中華な遊具が可愛い公園。北門駅地下街で見たヒョンビンのCMポスター。台湾でも韓流は人気みたいです
 965番バスは高速を走り、約50分ほどで台北駅に。次の目的地、國立故宮博物館に行くバスに乗るため、北門駅の近くにあるバス停へ。304番バスに乗ります。40分ほどで台北市郊外にある故宮前に。広々と清廉な雰囲気の宮殿みたいな博物館。入口から本館までちょっと距離があります。


 故宮も台北随一の観光名所。世界各国からたくさんの観光客が。ここにも日本人がいっぱい。日本語しか聞こえてこないこともあったほどに。すごくホっとするけど、海外旅行気分は削がれますね。エントランスで入館料を払い、展示されてる中国文明の宝物コレクションを見て歩きます。訪れた人のほとんどは、まず真っ先に有名な翠玉白菜のもとへ。むろん私も。3階の展示室に行ってみると…え…?!うそやろ?!
 待續 (to be continued)…

イケメンをロックしたい♡

2025-05-02 | 北米映画22~
 「Locked」
 車の修理代が払えず金に困ったエディは、車上荒らし中に偶然見つけた高級SUVに押し入るが、ドアがロックされ外に出られなくなってしまう。ウィリアムと名乗る車の持ち主は、閉じ込めたエディを遠隔操作でいたぶり始め…
 「ノスフェラトゥ」で吸血鬼を怪演したビル・スカルスガルド主演作。予告編のビルがイケてたので観てみたのですが…え!ビルってこんなにイケメンだったの!?と驚かされました。ノスフェラトゥしかり、「IT」シリーズしかり、素顔が判らない怪人なビルしか知らなかったので、驚喜の発見でした。この映画のビルは若き怪優ではなく、カッコカワイいイケメン俳優でした


 ビル・スカルスガルドのファン、もしくはドSな映画ファンは必見のイケメンいじめ映画です。狭い車内に閉じ込められ、肉体的・精神的にいたぶられまくるビルの苦悶と苦痛で阿鼻叫喚な姿が、無惨かつ可愛いんですよ。とにかくコレデモカ!と非道い目に遭ってます。激痛と屈辱と絶望にまみれるビル、いっそ殺してあげてほしいほどの生き地獄。悲惨なんだけど、何かいちいち笑えるんですよね~。ある意味コメディ映画。ウィリアムの言う通りにしなかったり、口汚く罵ったりなどお行儀が悪いと、仕掛けられた電気ショックでビビビビ!されてギャー!ヒー!と絶叫&悶絶。暖房・冷房攻め、飲食物なしの飢え、大音量の音楽etcあの手この手のお仕置きを食らい、激怒したり泣きわめいたりグッタリしょんぼりしたり、心身共にコワレてボロボロになるビルが、可哀想すぎて可愛いすぎ。お仕置きの繰り返しが、何かドリフのコントみたいで笑えます。最大の問題は、やっぱ排便排尿。ペットボトルにおしっこするビルが、のどの渇きに耐えられず飲尿しようとするけどできない、でも…が、最大のハラハラドキドキでした(笑)。

 舞台はほぼ狭い車内だけ、登場人物もほぼエディだけ、というシチュエーションと独り芝居は、コリン・ファースの「フォーンブース」とかトム・ハーディの「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」を思い出させました。観客を飽きさせず最後まで惹きつける独り芝居、ビルもなかなかの役者!ビルの体を張ったいたぶられっぷりが圧巻なのですが、私はとにかくビルってイケメンだわ~と、ビルの見た目に心を奪われておりました。イケメンで知られる兄アレクサンダーよりも、ビルのほうがmy タイプかも。怪人じゃないビルは、スウェーデン人らしいクールな爽やかさが。鋭く暗い目つきも好き。年齢より(34歳)若く見える。イキってるけど、人生どん詰まりな底辺チンピラの悲哀も堂に入ってました。ピンクのパーカーがso lovely♡

 顔も演技もちょべりぐ(死語)なビルでしたが、肉体美も素晴らしい!きれいに引き締まった筋肉質な上半身裸は、底辺のチンピラではなくアスリートみたいだった。理想の細マッチョです。暖房地獄の中、パンイチ姿なビルがセクシーで滑稽です。ビル、ルックスといい演技力といい、ハリウッドのアクション映画でヒーロー役できますよ!英語もネイティヴ並の流暢さ。でも聞き取りやすく、ヒヤリングの勉強になりました。
 恐怖のパニッシャー、謎の老人ウィリアム役は何と!名優アンソニー・ホプキンス!

 彼ほどの超大物俳優が、なぜこんな映画でこんな役を?と思ったけど、よく考えたらホプキンス御大って基本、仕事はあまり選ばない人。明らかにギャラ目当ての仕事も多い。80過ぎて「ファーザー」で二度目のオスカーを受賞し、もう俳優として極めた感のあるホプキンス爺。今さら名誉や名声を求めたり、しんどいチャレンジなどする必要も欲もないはずなので、腰を上げるとしたらもうよほど気が向いた時か、小遣い稼ぎのどっちかでしょう。この映画では、姿を現すのは終盤になってからで、ほとんど声の出演です。その声の演技は、さすがレクター博士というか、き〇がいすぎて笑えるほど。エディを苛み虐げる時の口調、声音が、まるで話相手を捕まえて一方的に喋りまくってる認知症高齢者みたい。ハイテンションで楽しそうなのが、イカレてて怖い。お仕置きの理由も狂ってます。エディを乗せたまま遠隔操作でSUVを暴走させ、クズ犯罪者どもを無惨に轢き殺すシーンがゲロゲロ(死語)すぎて笑えた。

 ↑ 長身(192㎝!)でスタイル抜群のビル、モデルとしても活躍。何着てもおしゃれでスタイリッシュ!

 ↑ アレクサンダー&ビル、仲良しスカルスガルド兄弟。ビルは大阪コミックコンベンション2025で来日中!今秋日本公開予定の「ボーイ・キルズ・ワールド」でもバッキバキの肉体美を披露してるビル、最新作ではニコラス・ガリツィンと共演。ひょっとしてBL?!

お墓を暴いたら…

2025-04-29 | 韓国映画
 「破墓 パミョ」
 跡継ぎが代々奇怪な病に罹るという富豪一族の依頼を受け、巫堂のファリムと彼女の弟子ボンギルは、風水師のサンドク、葬儀師のヨングンと組み一族の墓を改葬し、お祓いを行う。掘り起こした墓には、恐ろしい秘密が隠されていた…
 去年、映画館に観に行けなかった韓国映画をようやく。本国では「パラサイト 半地下の家族」越えの大ヒットだったとか。私は恐怖不感症なので、どんなに怖いと評判の映画を観ても、バカバカしいと鼻白んだり、ぷっと笑ってしまうことが多くて。怖くないけどホラーやオカルトが好きな理由は、まさにそれかも。私にとってはコメディと同じなんですよ。この映画も、これってギャクなのかな?と訝しんでしまうシーンてんこもり。ゾっとするよりも、やっぱプっとなってしまいました。

 「哭声 コクソン」など韓流ホラーやオカルトではおなじみの、朝鮮のシャーマニズム、巫堂(ムーダン)によるお祓いが相変わらず面白いです。神秘的というより、かなり土着的というか。儀式で使う馬の血とか、生贄のブタとか魚とか鶏とか、野蛮で血なまぐさい風習が韓国らしいというか。イタコ状態になった巫堂の舞も、ヒステリックで狂気的。それにしても。あんな大量の馬の血、どこから仕入れてくるんでしょう。
 悪霊?悪鬼?の正体が、戦国時代の日本の武将だったのが珍奇なインパクト。韓国になぜ日本の戦国武将が?その主の大名?陰陽師?よくわからない点も多く困惑。日本=悪者、というのはもうお約束なので、いつも通りの邪悪さ凶悪さに感心。言われてるほど反日って感じはしませんでした。悪鬼武将の日本語は流暢だったので、おそらく日本人によるもの?ファリムが日本人のフリして日本語で悪鬼に話しかけるのですが、日本人で通用するとは思えぬ日本語で笑えた。怖くないけどキモいシーンはいくつかあって、墓から出てくる人面蛇が特に気持ち悪かったです。お墓を掘るのも、何か罰当たりすぎて見ていて気持ちがいいものじゃない。お墓って禁忌な場所ってイメージなので、お墓を掘り返して棺を別の場所へ移すなんてことが一般的?みたいな韓国に驚き。日本でも私が知らないだけで、よくあることなの?

 巫堂2人と風水師、葬儀屋がチームとなって、それぞれ役割分担、能力で悪鬼と戦うですが、呪文や呪術、ファンタジックホラーなシーンなど、鬼滅の刃とか呪術廻戦とかが好きな人なら楽しめるかも。主人公が高校生だったら、少年ジャンプの漫画にできそうな内容です。悪鬼との死闘を繰り広げる4人ですが、その能力や知識よりも生命力の強さが超人的。不死身すぎる!フツーなら死ぬ、のに死なないので、この人たちほんとに人間?と思ってしまいました。

 風水師のサンドク役は、名優のチェ・ミンシク。久々に見たミンシク先生、すっかりでっぷりしたおじいさんになってて驚きました。老体にムチ打つような無茶やってましたが、かつてのミンシクおじさんといえば鬼より怖い、狂ったヤバい人役がオハコだったので、頑張る善人役にはちょっと一抹の物足りなさも。ヒロインであるファリム役は、人気女優のキム・ゴウン。私が苦手な日本の某女優と似てる。ぶりっことは対極の、クールで男っぽいキャラと凛々しい演技には好感。お祓いシーンでは、なかなか鬼気迫るものが。葬儀屋のヨングン役のユ・ヘジンは、どんなジャンルの映画でもお笑い担当。

 ファリムの弟子ボンギル役は、ドラマ「Sweet Home」での好演とイケメンぶりが忘れがたいイ・ドヒョン。これがスクリーンデビューだとか。うしろで束ねた長髪、耳なし芳一みたいな全身タトゥーなど、一見DQNなヤカラっぽいけど、余計なことは言わない寡黙さ、師匠には素直で従順、おじさんたちにも礼儀正しいなど、見た目とギャップのある好青年なドヒョンくんが可愛かったです。霊に憑りつかれてファリムを威嚇するシーンのドヒョンくんが、野郎っぽくて好き。無表情だけど、たまに見せる微笑みがキュート。彼も韓流俳優のご多分に漏れず、背が高くてスタイル抜群!なので巫堂の衣装も似合ってカッコいい。ちょっとだけ脱いでましたが、刺青のせいでよくわからない裸だったのが残念。

地獄の護送船!

2025-04-25 | 韓国映画
 「オオカミ狩り」
 フィリピンで逮捕された凶悪犯の一団と、護送係の刑事たちを乗せた貨物船が、マニラから韓国の釜山へと出港する。しかし犯罪者たちは反乱を起こし、刑事たちと戦闘状態に。そこへ眠りから覚めた謎の怪人も加わり、船内は阿鼻叫喚の地獄と化すが…
 韓流映画&ドラマはチョアチョアなんだけど、スウィートすぎる恋愛ものやファンタジーものは苦手。韓流といえばやはり、容赦なき血まみれ、血みどろのヴァイオレンスですよ。他国の追随を許さないものがあります。邦画の暴力描写なんか、甘い甘い!目を覆いたくなるような凄絶で残虐な暴力、そして一片の人間性もない鬼畜キャラは、韓流の専売特許と言えるでしょう。でも。最近はさしもの韓流ヴァイオレンスも、ポリコレ・コンプラの風潮でトーンダウンしてしまい寂しい、と思ってたら。どうしてどうして。今も廃れてはいませんでした。久々にエグ~い、キッツ~い韓流ヴァイオレンスと遭遇してしまいました。

 公開前から、かなり非道い映画とは聞いてたけど、期待を上まわるヤバさでした!ゲロゲロ(死語)!もう全編、ドロドロのグチャグチャ!阿鼻叫喚の地獄絵図!血しぶき、血反吐の嵐!韓流といえばの刃物でメッタ刺し、カナヅチかハンマーでメッタ打ちは序の口、銃弾で吹っ飛ばされたり足で踏みつぶされたりする頭、引きちぎられる手足や首、胴体etc.フツーに殺さず、あの手この手の趣向を凝らした虐殺シーンのオンパレード。あそこまでハチャメチャだと、もはや笑いを狙ってるとしか思えません。ウゲゲっと眉をひそめつつ、プっと何度か吹いてしまった私
 囚人VS刑事のバトルロワイヤルに、わけのわからない怪人も加わって、ハイテンションに繰り広げられる三つ巴の殺戮。ただもうそれだけな内容。余計な人間ドラマは排除されています。韓流といえば、これももうおなじみである、ヘンな日本語を喋る悪い日本人も出てきます。戦時中、悪魔な実験で怪人を造り出した日本軍。もちろん無惨に虐殺されます。

 極悪な囚人役を、人気イケメン俳優のソ・イングクが演じてることも話題になりました。イングクくん、もともと冷酷そうな顔だなと思ってたけど、スウィートな役よりやっぱ悪人役のほうが似合う!立派な犯罪者顔ですよ!三白眼が怖い。気持ち悪いタトゥーだらけの体は、役のためにかなり増量したとか。ヌオオオ~とした巨体も威圧感があって怖い。すごい小顔で、巨体とのアンバランスさも不気味。あんな目と体した俳優、日本にはいないですよね~。日本人ってやっぱ、優しくて甘い。イングクくん、風貌もヤバいけど役も最悪最凶。悪人というより狂人?虫けら同然に邪魔者を惨殺しまくるだけでなく、死体にションベンひっかけたりする人非人っぷり。あんなシーン、並みの人気イケメン俳優なら絶対できない。イングクくんの役者魂、あっぱれ!むっちりとデカいケツが素敵でした

 なかなかの狂演、凶演っぷりで画面を支配していたイングクくんでしたが。中盤になって、え!?ウソやろ!?と目がテンに。主役だと思っていた人気スターが、まさかの。彼目当てで観たファンにとっては、かなりの衝撃なのでは。
 その他の出演者は知らない人ばかりでしたが、終盤になって出てくる悪組織のボス?役の俳優さん、どこかで見たことあるな~と思ったら、あ!「ハベクの新婦」のフエ氏じゃん!ヒョンビンの「雪の女王」とかにも出てましたね。全裸で若い男にフェ〇させてる姿とか、なかなかこっちも衝撃的でした。

アルフォンシーヌの場合

2025-04-23 | フランス、ベルギー映画
  お松の独りフランス映画祭⑥
 「La Dame aux camélias」
 父と暮らす貧しい少女アルフォンシーヌは、金持ちの老人の愛人となる。やがてパリの社交界で“椿姫”と呼ばれる高級娼婦となり、贅沢で享楽的な日々を送っていたアルフォンシーヌは、若き作家アレクサンドルと出会い真実の愛を知るが…
 「わが青春のフロレンス」や「沈黙の官能」などのイタリアの名匠、マウロ・ボロニーニ監督の1981年のフランス映画。グレタ・ガルボ版や、コリン・ファース主演の「Camille」など、何度も映像化されてる「椿姫」ですが、この作品はマルグリット・ゴーティエがヒロインではなく、彼女のモデルとなった娼婦アルフォンシーヌの物語となっています。アルフォンシーヌの生い立ちや、どのようにしてパリ社交界の高級娼婦になったか、美青年との悲恋、そして不治の病など、ヒロインの名前が違うだけで、内容も展開も椿姫とほぼ同じです。椿姫の恋人アルマンは、この映画では原作者のアレクサンドル・デュマ(息子のほう)。「椿姫」って、作者であるデュマの恋愛体験が元になってるんですね。

 何度も映像化されてる椿姫ですが、この映画では悲恋のメロドラマティックさや甘美さは排除されていて、若くして死を見つめるアルフォンシーヌが、冷ややかで虚無的な破滅に向かう姿を描くことに焦点が置かれています。若くて美しければ、貧しさも克服できるでしょうけど、さすがに不治の病の前では、若さも美しさも無意味、いや、呪わしくさえなる。夢も希望も抱かず、ただ訪れる死を静かに待っているアルフォンシーヌ、見苦しく取り乱したり、お涙ちょうだい的な言動を全然しないところが、返って特異なヒロイン。かといって気丈とか毅然としてる、といった感じでもない。もうどーでもいいわ、どーなったっていい、みたいなクールな自暴自棄風というか。短い命だから悔いなく生きよう、みたいなありきたりなヒロインではないところに、私は魅力を感じました。死だけが確実なものな女が選んだ道、それが娼婦。その隠微さ、耽美さに心惹かれます。

 アルフォンシーヌ役は、若き日のイザベル・ユペール。「Les Ailes de la colombe」と同年の作品。当時28歳!17、8にしか見えない!かわいい!華奢で小柄な身体、あどけない童顔、まだ少女みたいです。見た目は少女だけど中身はミイラ、みたいな薄気味悪さも強烈。ほんとに病気みたいな青白い肌。悲劇のヒロインっぽさは全然なく、何を考えているのか読めない無表情、ただもうクール&ドライ、淡々と時にシレっとしていて、いつものユペりんです。脱ぎっぷりも大胆で生々しい、でもそれが何?みたいなシレっとしてるところがユペりんらしかったです。「眠れる美女」で、ユペりん扮する大女優が若い頃に出演した時代劇の一場面、令嬢が殺した牛の血を飲むという、いったい何なの?!なシーンが使われてたのですが、この映画だった!精力をつけるために牛の血を飲んでたようです。

 この映画、とにかく衣装が素晴らしいです!写真集がほしいほど。アルフォンシーヌがとっかえひっかえするドレスや帽子、アクセサリー、どれも個性的で美しい!可愛くもあって、それでいてどこか闇を感じさせる趣きが、若きイザベル・ユペールに合ってました。おそらくセットではなく実際の貴族の屋敷や教会、劇場での撮影、田舎やパリの街、船上などロケの映像も、ほんとに当時にタイムスリップして撮ってきたかのような臨場感でした。

 アルフォンシーヌを金持ちに売りつける女衒みたいな父役、イタリアの名優ジャン・マリア・ヴォロンテが、シブくてイケオジ。アルフォンシーヌにパラサイトするわ、デュマにもたかるわ、卑しい役なのに不思議とそうは見えず、人たらしな魅力が魔性のおやじだった。アルフォンシーヌが結婚する貴族役は、ドイツの名優ブルーノ・ガンツだった。アレクサンドル役の俳優がイケメンでした。