ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

カーオーディオのHDD化

2004年12月10日 | ITS
i-Podの連携とかカーオーディオのHDD化ということで、もう少し考えてみた。

基本的に、HDDはカセットやCDと同じストレッジメディアである。カーオーディオのメディアがカセットからCDに、CDからMDに代わったように今度はHDDなのだと考えるとわかりやすい。

HDDの場合の問題点は音楽データ格納だ。(ダビング、とはいえないよね)
MDのようにホームオーディオで気軽にできるという状態にはなっていない。また、HDDがリムーバブルじゃないから、メモリーカード等を経由しなくてはならない。まだ一般ユーザーにはちょっと敷居が高い。

カーオーディオはリムーバブルHDDの時代がくるんじゃないか、と思ったりもする。
単純にカーオーディオにリムーバブルHDDのスロットがあればいい。

そう考えると、まさにi-PodはリムーバブルHDDなんですね。

クラリオン「iPod対応DVD/ワイド7インチAVセンターユニット」

2004年12月10日 | ITS
クラリオンは「iPod」を車載AVユニットのタッチパネル液晶から操作可能な「iPod対応DVD/ワイド7インチAVセンターユニット」を2005年1月より米国で発売する。

 iPodと専用のケーブルで接続し、7型液晶ディスプレイ上にiPodの液晶表示画面や操作キーなどを表示する。液晶ディスプレイはタッチパネルとなっており実際のiPodと同様の操作がAVセンターの液晶画面上で行なえる。また、電源供給/充電機能も備えている。
北米での発売を皮切りに、iPodに対応するオーディオやカーナビ製品などを順次国内や欧州などで発売する計画で、自動車メーカーへのOEM供給も予定しているという。

驚いたのは、iPodは既に600万台出荷されているということ。つまり、こうしたアフターマーケットが十分に成立する商品となっているわけだ。
特に北米では社会現象的にヒットしている。

本来車載オーディオはCDチェンジャーという商品がポピュラーであることからも判るように、自動連奏が望ましい。その点HDDオーディオは当然の帰結として車載との相性がいい。MP3録音(というのか?)機能がついたHDDナビも登場している。
しかし、クルマの中というのは生活の一部であり、車の中だけでしか聞くことの出来ないのではあまり魅力がない。
というわけで、理論的には携帯プレーヤーのカーオーディオでの活用ということは十分に魅力的である。

しかし、こうした活用は案外スタンダードにはならないものである。
かつて車載CDプレーヤーが高価だった頃に、CDポータブルプレーヤーの車載キットというものが出回ったが、結局は消滅してしまった。
まあ、クルマとの連携が不十分だったため、音質と操作性がわるかったということは否めないが、やはり「家から持ち出す」「クルマに接続する」という手間よりも、専用プレーヤーがクルマについていた方が良かったようだ。

この商品の場合は、基本的にiPodは携帯するものであること、接続がワンタッチであること、充電機能も持つことから事情はかなり違うが、そうはいってもいずれカーオーディオがHDD化するまでの間のあだ花、という可能性もある。

プローブの今後

2004年12月09日 | ITS
さて、昨日ナビゲーションには通信機能なんて不要なのだ、と言い放ったが、そうはいっても可能性はある。その辺も書いておかないと不公平だと思う。

まず、ナビとのデータ連携に関して、PCを立ち上げてメモリーカードを差し込み、データを転送し、クルマに持ちこむというのも面倒な作業だと思う。
例えば家庭の無線LANが使えれば楽だ。車庫まで届く家はたくさんあると思う。
データ転送の方法という意味で、通信は可能性がある。

次に可能性のある点はプローブによる渋滞予測の強化だろう。実際ホンダは着実にユーザーの評価を得ている。
これは今後他社に拡大すると見ている。

トヨタのG-Bookも日産のCARWINGSも、もう後戻りできない。ここまでやってきて、中途半端に会員を抱えてしまっているため、もはややめることが出来ないのだ。ということは、なんとしてでも勝ちに行く必要がある。勝ち負けに影響がなければ、「やめることの出来ない金食い虫」というとんでもないお荷物になってしまう。
ここでの勝つという意味は必ずしもプロフィットモデル化を意味しない。自動車事業全体として他社に勝つことが大事なのだ。

従って、ホンダがプローブの渋滞予測で好評を得ているとなれば、それを追従するのは自然の流れである。

もしそうなれば、最終的に大手カーメーカー、アライアンスを含めるとほぼ全てのカーメーカー純正ナビに、プローブによる渋滞予測が装備される事になる可能性が高い。
しかし、カーメーカーにとっては費用増大要因となる。「渋滞予測精度が高い」ことは他社に対する競争力アップにはなるが、それ自身でユーザーからお金を取れるものではない。

そして、カーメーカー主導のこうした動きは、国交省のDSRC構想にさらに水を差すことになる。道路に多大のインフラ投資が必要なDSRC路側機設置の大きな理由の一つがプローブだ。このプロジェクトは旧建設省のもので、どうも高速道路への投資をしたがる傾向にある。しかしカーメーカーが自前で携帯通信ベースの渋滞予測を始めたら、その意味はなくなる。

市販ナビゲーションのトレンド

2004年12月08日 | ITS
市販ナビゲーションのトレンドをみると、DVD再生機能はもはや常識となり、HDD化およびメモリーカード対応が進んできている。
HDDは当然音楽データの蓄積が可能で、メモリーカードによりPCからのデータ取り込みが出来る。松下の主力機種「ストラーダFクラス」では2400曲保存可能だ。
また、SDカード経由でTV番組などの画像データもナビの画面で観ることが出来る。

そして、一時期話題となった通信機能の話は殆ど聞かなくなった。
通信インフラの状況からして時期尚早だったとか、魅力的なコンテンツが用意出来なかったとかの分析がされているようだが、本当だろうか?HDDに必要な情報は全て詰め込んでしまっているから、それ以上の情報なんていらないんじゃないのか。
そしてPCの音楽や映像データが取り込めるのに、わざわざ通信料+情報提供料を支払ってクルマの中から通信でデータを取りにはいかないだろう。

今のナビには必要な情報は全て盛り込まれている。そこから先の差別化ということで、リアル3D交差点表示等というギミックに近い所の勝負になっているが、スタバ斉藤氏が今週の週アスでパイオニアのサイバーナビ新製品についていっているように、実はそんなものはいらないのだ。

価格的にリーズナブルな工場装着のナビを拒否して30万以上する市販ナビを装着する人たちは、ある種特殊なマニアだ。
従って市販ナビの例が一般市場にそのまま当てはまるとは思わない。

しかし、逆にいえばマニアですら通信機能はいらない、といっている訳だ

クルマが通信機能をもつこと(続き)

2004年12月07日 | ITS
将来クルマが通信機能をもつことは規定路線という考え方についての検証の続き。

ヒット商品となるためには「不満解消」か「ワンランク上のベネフィット」が必要だと書いた。
そして、その後者「ワンランク上のベネフィット」であるが、これについては様々な可能性が語られてきたがどれもキラーコンテンツとなり得ていない。

目的地の観光情報、駐車場の空き情報、MP3データのダウンロード、オンライン画像配信、セキュリティ通報、盗難車追跡などだ。

以前にもこれら個々の可能性については検証をしたので再度詳しくは取り上げないが、やはりクルマの中というのは生活のほんの一部分であり、昨日の話のように運転それ自身が娯楽だった時代は終わり単なる移動手段となってきており、更にいえば運転中は運転業務があるので、交通関連情報以外の情報は「キラーコンテンツというほどには」必要ではない、ということに帰結しそうだ。

しかし、業界は「まだ何かあるバズだ」と言い続けている。私はテレマティクスの第一、第二世代があれだけ考えてコンテンツを出してきてもブレイクしないということは、もう何もないと思っているのだが。

確かに、もし私が5年前に「携帯にカメラをつけたらどうか?」と聞かれたら、一笑に付していたと思う。ITと通信の世界では、なにが起きるか判らない事は否定しない。

でも、それだけを頼りに進めていくというのはどうかと思う。

ユーミン世代の感覚のぶれ

2004年12月06日 | ITS
松任谷由実の中央フリーウェイに「出会った頃は毎日ドライブしたのに」というフレーズがあるように、昔のデートはあてもなくドライブすることだったが、最近ではドライブというのは単にクルマを使った移動のことである。どちらかといえば移動は合理的にさっさと済まして目的地でまったり、というのが傾向だろう。

しかし、企業で商品企画をしている人、特に40歳を過ぎたマネジメントレベルの人たちは、もしかしたらこの昔のイメージを持ちすぎているのかもしれない。

団塊世代は家にクルマがなく、自分が初めてクルマを所有した世代である。クルマを自分で所有し、運転すること自体がエキサイティングだった。それに続く世代=最初に書いたようにユーミンの世代=もその傾向を引きずっていた。

一方、団塊ジュニア以降の世代は生まれたときから家にクルマがあり、車に乗ることは全くの日常なのだ。彼らは「使いたいときは家のクルマを借りればいい」という感覚で、まったくクルマの所有に興味をもっていない。親につきあって出かける週末ドライブに飽き飽きしていたのかもしれない。

その辺が、レストラン情報を車の中から検索するとか、目的地のドライブ情報とかいったたぐいの「ドライブ関連」情報コンテンツが期待された程ユーザーの関心を引かない原因なのではないか。
あるいは、「最近の若い人はメール中心だからドライブ中もメールを見れるようにしたらどうか」等というリアリティーのないビジネスチャンスにつながっているのではないか。

ちょっとした感覚のブレが、商品企画においては結構大きな間違いをもたらす。

クルマが通信機能をもつこと(承前)

2004年12月03日 | ITS
昨日にひき続き、将来クルマが通信機能をもつことは規定路線という考え方についての検証の続き。

今回はある特定の商品・サービスがヒットする要素、という側面から考えてみよう。

ヒットする要素には大きく分けて「不満解消」と「ワンランク上のベネフィット提供」がある。
「不満解消」は顕在化している不満を解消する商品・サービスである。

現在、車に関して不満に思うこととは何だろう。大きな話では、クルマは操作をミスすると命に関わる原始的な乗り物である、という点である。これは、根元的で、もっともニーズが高い問題だろう。それはエアバックやABSといったハイテク装備が事実上キラーコンテンツとなっていることからも明らかである。
安全装備がクルマという商品のキラーになるという認識は神尾氏もされており、私も100%同感である。
しかし、通信技術で安全装備を構築するためには原則的に全てのクルマやその他歩行者、自転車などに装備されなければならないという前提があり、ビジネスモデル構築はかなりの難事業になるだろう。民間主導では無理だと思う。

よりレイヤーの低い話としては、ナビゲーションの地図が古くなる、VICSの精度が低いという様な事柄があげられる。
ナビが普及する以前は皆、道路地図をグローブボックスに入れていた。たかだか1000円程度のものだが、毎年買い換えた人はいるだろうか?実際、5-6年の道路の変遷なんてそんなに困るものじゃない。
また、VICSの精度は上がるに越したことはない。しかし、今より精度が上がるからといってそれに料金を払う消費者がどれくらいいるだろうか?
どちらもニーズはあるが、キラーコンテンツにまで成長するかどうかは微妙だ。

(なお、通信とは言えないが、走行中のTV画面の乱れという不満を解消する地上波デジタルの車載チューナーは確実にブレイクすると私は思っている。)

次回、後者のワンランク上のベネフィットについて考えよう。

クルマが通信機能をもつことは既定路線なのか?

2004年12月02日 | ITS
神尾氏の著書「自動車ITS革命」によれば、将来クルマが通信機能をもつことは規定路線だという。
この考え方についてすこし考えてみよう。

既に日本人は携帯電話を通してユビキタスである。ポケットにいつでもどこへでもつながる道具があるのに、さらにクルマがつながらなくてはいけない理由は何なのだろうか?

まずはハードウェアから考えよう。
普通に考えて、今の段階では携帯とクルマがなんかしらの連携することでベネフィットが向上するというシーンを考えてみればいいんだと思う。

第一に携帯がクルマの機器を活用することでベネフィットが向上するもの。
例えば、車載の液晶画面で表示することで見やすくなる、カーオーディオのアンプ、スピーカーを使うことでよりいい音で音楽が楽しめる、ナビと連動することで地域情報へのアクセスが容易になる、等だ。
これらは確かにニーズとして存在するが、キラーとなる力はなさそうだ。
特にナビと連動しての情報提供はずっと目玉だといわれてきたが、カーメーカーのテレマティクスもドコモのiナビリンクも苦戦している。

次に、クルマの制御系に介入することでベネフィットが向上するもの。
これは安全関連や自動運転といった世界で、まさにITSである。これは将来あるかもしれないが、今すぐどうこうなるものではない。また、制御系への介入はまずはクルマのセンサーによる自律型から始まる。氏によれば、自律型の先には路車間、車車間、人車間通信が必ず必要だということだが、これにも疑問がある。いずれ言及しよう。

そして、クルマの状態を通信でどこかに送信することでベネフィットを向上するもの。
例えば、クルマの調子をディーラーに送る、等であるが、これについては売り手発想が強く、本当の意味での消費者のベネフィットが今ひとつ見えてこない。
唯一、渋滞の情報をプローブとして送信する仕組みがホンダのインターナビで評価されている。しかしこれはホンダにとってナビの機能アップ=ホンダ車の魅力アップであり、そのサービス自身がビジネスモデルとして成立しているわけではない。

どうも、このアプローチからはクルマを通信で繋がなくてはいけないキラーコンテンツは見えてこない。

日本の料金収受で思うこと

2004年12月01日 | ITS
以前、こんな話を聞いたことがある。アメリカのどこかの都市にかかる橋の通行料金収受のコストを低減するため、上りと下り双方にあった料金所を片方だけにして、料金を倍にした。
99%のクルマは通勤などの往復利用であり、他に抜け道もないため、実質これで何の問題もない。

ヨーロッパで電車などに乗ると、改札がない。そのかわりランダムに検札が来て、切符がないと罰金を取られる。

これに比べて、我が国の料金収受は遙かに厳格である。多分、アメリカのケースでは「1%の片道利用者をどうする」という議論になるだろうし、欧州式は「ただ乗りを完全に防げない」ということになるのだろう。

こうした気質が、ETCの厳格なスペックにつながっているような気もする。

たとえば、高速道路も料金収受を完全にやめてしまって、年間パスや一日利用券をコンビニなどで販売するというのはどうか。ランダムに出入り口で検札を行い、ただ乗りの罰金を高額にすれば良い。

まあ、簡単にいってしまったが、実際には偽造対策や実際上の運用での問題は沢山あるだろうし、今更こんな事をいってもETCが中止になるわけでもない。

しかし、料金収受をやめてしまうことでコストを大幅に低減する、という発想の転換は検討の価値があったのではないか。