ITSを疑う

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バルミューダスマホ失敗に見るマーケティングの勘違い

2021年11月20日 | モバイル・ウエアラブル

一昨昨日発表されたバルミューダのスマート、まだ発売直後だけど大失敗であることは確定といっていいでしょう。

バルミューダは空調やトースター等、従来製品と差別化を図ったランクアップ家電品を企画販売するファブレスメーカーであり、スマホに参入ということで期待されていたが見事にがっかりな商品となってしまった。一体なんでこんなものを市場に出してしまったのかを考えてみよう。

まず、同社はデザインオリエンテッドだということとで、デザイン先行で企画が始まっていると思う。で、そのデザイナーがおそらくスマホという商品を十分に理解していなかったということがあげられるだろう。
このデザイン、誰がどう見たって「らくらくスマホ」か10年前の中華スマホにしか見えない。
デザイナーに与えられた命題は、今あるものから差別化せよ、ということだったんだろう。そこでまず思いついたのが直線を排するということと、ヒット商品のトースターのイメージ何だったんだと思う。
これは発表会でも「どこにも直線がない」と謳い文句にしていたが、はたしてスマホが直線であることが嫌だと思ってる人がどのくらいいるのだろうか?
さらには「河原に落ちている小石」のイメージだそうだが、これは水流で磨かれた曲面といいたいのだろうか、なんで落ちてる小石なんだ、としか言いようがない。

背面がカーブしているのが他社にない特徴ということだが、デザイナーは初代i-Phoneを見たことがないのだろうか?
i-Phoneがその次の世代で背面を平らにしたのは、机に置いた時にくるくる回って使いずらいからだろう。

さらに輪郭を曲線にすることでベゼルが太くなる。これはどう見たって古臭い。

あと、背面のインジェクション成型のプラスチックに打たれている皮シボ。これが高級感出しているというけど、私には安い大衆車のダッシュボードのイメージしかない。

スマホが普及し始めて10年、その間のマーケティングの結論が今のサイズだし縦横比だし形状なわけで、それを否定し商品性を出すには相当なブレイクスルーが必要なんだけど、どうしても差別化しろといわれてむりやり丸くしたとしか思えない。

ネットではスペックに対する価格がありえないといっている。これもそのとおりでスナドラ765、4.9インチ液晶、バッテリ2500mA、カメラに超広角、望遠なしで10万円はありえない。丸くすることで設計的に無理があったのと、販売想定数量が多くないので開発費などの償却がおおきくのっかってるんだろう。
これで本当にデザインがよければ、スペックは別にしても一種のアイコンとしての価値で高価格でも売れるかもしれないけど、バルミューダファンの人にとってもこのデザインはらくらくスマホにしかみえないだろう。

後発でニッチをねらうならバルミューダというブランドならではのUX(ユーザー体験)を提供しなければならないが、専用ソフトを見てもそれができているとは思えないし、それができる体制にはなっていないとおもう。

 

ではなんでこれが世に出てしまったのだろうか?

まず、市場調査結果の読み間違いというのがありそうだ。
今のスマホに対する不満点として、持ちにくいというのがでてきただろう。でも、では画面が小さくなっても持ちやすい方が良いですか?という聞き方をしてるだろうか?
また、おそらくスマホのデザインが画一的だ、という意見もかなりあるだろう。でも、だからといって10年前のスマホのようなデザインが良いという人はいない。

次に、よくある事例は途中で無理筋だと思っても投資をしてしまった以上撤退できない、というケース。いままでいくら投資をしたかと将来の成功には何の関係もないのだから、だめなものはあきらめなくてはいけない。サンクコストとか、コンコルド効果で検索するといろいろでてくる。

あとは、結局の決断は経営者にある。バルミューダの場合、寺尾社長がジーンズ、Tシャツの上にジャケットという「非常にわかりやすい」スタイルで新商品プレゼンをしているくらいだから、社長ご本人はこのデザインをスケッチ提案やモックアップの時点で承認し十分納得してこのデザインで進めたのだろう。
もしかしたらTOPに問題があったのかもしれない。はっきり言ってしまえば、トースターがまぐれあたりだったんじゃね?

後日追記 このデザインと商品コンセプトは100%寺尾社長ご自身の手によるものだそうです。TOPの問題ですね。

結局、スマホへの進出は無理だった、ということじゃないでしょうか。


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