ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

迷走するDSRC

2006年02月03日 | ITS
正月の日経では、松下、三菱電機が夏には多機能ETCを発売、とかかれていたが、実態はかなり厳しいようだ。

ETCの普及は昨年末に1000万を超え、今年も500万近くの増加を見込んでいる。
このETCは、高速道路料金決済専用機であり、多機能ETCではない。

2006年末には1500万ユーザーが、高速道路料金決済専用ETCを装着してしまうのだ。
このユーザーが「駐車場がノンストップになる」と言う理由で車載器を買い換えることは全く期待できない。

更に悪いことに、ETCは車を買い換えても機器を付け替えて再利用するユーザーが多いのだ。それはそうだろう。料金所をノンストップで通過するための機械であり、性能・デザインやそれ以外の付加機能には殆ど価値がないので、古い機械を買い換える意味がないのだ。したがって、車の買い替えをきっかけに新型へグレードアップする、というのもあまり期待できない。
 (標準装備のナビとインテグレートされれば、別だが)

一方、仮に日経の言うとおり今夏に多機能器が発売されたとしても、通常のETCに比べて相当割高になる。
しばらくは使い道もない機能に対して対価を払うユーザーはいないし、仮に将来追加されるであろう機能も、駐車場ノンストップという程度の利便では、精々500円~1000円のプレミアム評価だろう。

つまりこれを市場に普及させるためにはコスト割れで販売しなければならないのだ。
通常の経済原則に基づけば、成立しない話であり、官によるなんらかしらの動きがない限り、民は動かないだろう。

そこで官がまず動き出しているが、その内容が公共駐車場への機器設置や道の駅駐車場での情報提供では、殆どインパクトがない。

結局、官としては物になりそうな(あるいは税金を投入しても文句がでなそうな)カーブ先危険回避やVICS渋滞精度向上というあたりを攻めていくしかなくなっている。
しかし、それでも多機能ETCの価格プレミアムとしては不十分だ。
もはや、多機能ETCは機器売価に対する官の助成が必要だ、という議論まで出ている。

なぜこんなことになったのか?
それは、「ETCはITSへと進化する」ということが既定事実となり、誰もそれを見直すことをしないからだ。
単純な民間のプロジェクトであれば経済原則に基づく経営判断がはいるが、官民共同プロジェクトは往々にこうした落とし穴にはまる。

ここはひとつ原点に返って、「ETCは料金所をノンストップで通過する機械」ということで終わりにした方がいいと思う。