みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

王海著「我が闘いの生涯」(上)10

2014年06月07日 17時54分25秒 | 書籍
 こちらの翻訳も随分間が空いてしまいました。王海著「我が闘いの生涯」(上)の翻訳も再開したいと思います。

王海著「我が闘いの生涯」(上)10
 私の後方に着けていた僚機の馮全民はこの状況を見て、「105号、脱出せよ!脱出せよ!」と叫んだ。と同時に敵機に向けて激しく発砲し、敵機を離脱させ、私を包囲から逃してくれた。
 私の操縦する26号機は損傷が激しく、既に操縦が困難となり、残念ながら放棄せざるを得ない。8000メートルの高度で、脱出の手順通りに座席に座り直し、両足を縮め、射出ハンドル握り、キャノピーを投棄し、ドンという音とともに脱出した。
 空戦はまだ続いている。目を血走らせた戦友達はなりふり構わず敵機に突っ込んで行き、連続して発砲した。この時白いパラシュートにぶら下がった私はもはや丸腰で、自分を守る力さえ失っていた。ただ飛行機の轟音や、ドンドンという発砲音や、ヒューヒューという風の音が耳元で一つに混じり合うのみだった。
 抗美援朝戦争に於いて、私は編隊を率いて何度も出撃し、勝利を得て来たが、この時の空戦は最も悔いの残るものであった。今に至るも後悔してもしきれない思いである。長年にわたって私は、米軍のどの部隊が、そしてどのパイロットが、私を撃墜したのか知りたいと願ってきた。過去に於いて米国と中国は敵対関係にあり、互いの往来もなく、調べる術はなかった。米中両国に国交ができて、外交上の往来も増え、私自身も米国を訪問し、ついに当時、遼寧省鳳城県大堡鎭東南上空の戦域で私と戦ったのは、米軍第67大隊〔67th Fighter Squadron〕であり、私を撃破したパイロットはジェームズ・ハガーストーム少佐〔Maj. James Hagerstrom〕とジョン・ミルトン中尉〔Lieut. John Milton〕であったことが判明した。今日我々はみな高齢となった。当時の我々は不倶戴天の敵であったが、今は干戈を化して玉帛となし〔武器の代わりに玉や絹を贈り物にする、の意〕、友人となることができよう。中国には「打たずして交わりを成さず」〔喧嘩をして初めて仲良くなれる〕という俗言がある。米中両国国民が友好関係を築き、それぞれの英知を十分に発揮して、倶に人類文明に貢献することを願う。(作者:元空軍司令員)



※王海著「我が闘いの生涯」(上)の翻訳は以上である。繰り返すが、本翻訳には政治的意図は何ら存在しない。内容的に全て真実とは言えまいが、中国側からの朝鮮戦争の記録も、研究上の資料として訳しておく価値があると考えるのみである。これに続いて「我が闘いの生涯」(下)も翻訳したい。