みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

朝鮮上空に現れたUFOの話 その2

2009年09月17日 22時31分59秒 | 書籍
 はい、もうお気づきの方も多いようですが、雑誌『UFO探索』に掲載された「1952年、朝鮮上空」という未確認飛行物体の写真ですが、この飛行物体の正体が何かということ以前に、根本的な矛盾点があるんです。この拡大写真ではっきり見えるように、尾翼に赤星が描かれています。つまりこれ、ソ連空軍機なんですね。ということは、1952年の朝鮮上空にいるはずがないということです。
 ご存じの通り、朝鮮戦争にソ連がソ連軍パイロットを派遣していたことは、当時の秘密事項でした。ソ連が正式に参戦しているということになれば、米ソ直接対決ということになってしまう。その点はアメリカも同じで、ミグ15に搭乗しているのが明らかに東洋人ではなく、またロシア語の無線が飛び交っていることに気づいていても、やはり米ソ直接対決はまずいということで、知らないふりをしていたそうです。そんなところに、こんなに堂々と赤星を描いたミグが飛んでいるのは、大変まずい…。つまりこれは朝鮮上空で撮影された映像ではあり得ない、ということです。
 でも、さらにもう一つ、この写真には矛盾点があるんです。拡大写真にするとはっきり分かりますね。尾部だけ見えているこの戦闘機…。これミグ15ではなく、ミグ17ですよ。だったらなおさら朝鮮上空ではあり得ない。

 話はちょっと逸れますが、朝鮮半島を飛んだミグ15には、本当にソ連空軍の赤星を描いたものはいなかったのでしょうか。
 ソ連崩壊後の情報公開により、朝鮮戦争に参戦したソ連軍の資料も公開され、また現地のソ連空軍のトップ、エフゲニイ・ペペリャーエフの手記も出版されています。邦訳のある朝鮮戦争空戦関係の書籍も、ソ連空軍の活動に言及しています(例えば『クリムゾン・スカイ』)。しかし私の記憶では、そうした書籍を手にするより前に、朝鮮戦争に参戦したソ連空軍のミグ15の塗装とマーキングをまず目にすることができたのは、他ならぬAero Master Decalの模型用デカールでした。このメーカーは、しばしば個人所有の写真を資料として提供してもらってデカールを作製しています。『Korean War Aces』(48-229/230)も、ロシアの友人から資料を提供してもらったと記しています。
 で、このデカールシートの中には、一つだけソ連空軍の赤星マークを描いた機体が含まれているんです。無塗装銀ではなく、ブラウンとグリーンの迷彩塗装の機体で、機番は40、撃墜マーク5個をつけています。ではこのマーキングで戦闘に参加したのか? いや、よく見ると「Russian, Maj. Nicolay Shkodin 147GIAP 5 victories, July 1953」と書いてあるんですね。1953年の7月と言えば、板門店で休戦協定が結ばれた時です。おそらく停戦協定後に北朝鮮に駐留したソ連軍が、改めて赤星マークを描いたのではないかと思われます。やはり朝鮮戦争の実戦では、ソ連軍も中国志願軍も北朝鮮のマークを描いていたと考えるのが自然でしょう。

 今までも何度か触れましたが、ソ連空軍のトップ・ペペリャーエフの手記と、中国人民志願空軍のエース・王海の手記は、邦訳があって不思議はないと思います。模型のためだけではなく、現代史の研究のためにも重要な資料ではないかと思うんですよ。どこか出してくれないものかな。また翻訳でなくても、この分野に関して他にもわかりやすい読み物がたくさん出ればいいなとも思います。まず過去の事実をきちんと整理するためにも。