安倍内閣は、「1億総活躍社会」をめざす緊急対策で、保育サービスの「50万人分の整備」を打ち出しました。これが、働きながら子育てをする人たちの切実な願いにこたえるものなのでしょうか。
安倍内閣は、「待機児童解消加速化プラン」で2017年度末までに40万人分の確保を掲げており、緊急対策で「50万人に拡大」としました。しかし、すでに45万人分は市町村が整備計画を出しており、5万人分を上乗せしたにすぎません。
しかも、目標に掲げる「希望出生率1・8」を達成すれば、新生児は年間約30万人増え、0~5歳児は180万人増えます。厚労省がめざす保育利用率6割で算出すると、新たに108万人分の整備が必要です。自ら掲げる目標に見合う整備数にもなっていません。
質も引き下げ
しかも、増やすという施設は、保育士がゼロでも運営できる小規模保育など「認可保育所以外」だと明記し、保育水準を引き下げて対応する姿勢です。「子育て支援」というのであれば、自宅の近くで、安心して5歳まで通える認可保育所の増設こそ保護者のニーズに一番かなうものです。
小規模保育は2歳までで、3歳以後の行き先が不明なため“3歳の壁”という言葉が生まれています。事業所内保育所の増設も打ち出していますが、これは通勤電車で小さな子どもを職場まで連れて行く困難を伴うものです。「夢をつむぐ」などといいながら、“とにかく預けて女性は働け”という本音が透けてみえます。
処遇改善なし
保育の受け皿拡大にとって不可欠の保育士確保については、資格取得の支援や離職保育士の再就職支援を掲げるだけです。全産業平均より10万円安い保育士の賃金引き上げについては一言も言及していません。それどころか朝夕の保育士配置の基準の緩和など、基準を引き下げて間に合わせをしようとしています。
人材確保でも、自ら掲げた目標に見合うまともな対策もなく、無責任な姿勢が際立っています。しんぶん「赤旗」(鎌塚由美)