針谷みきおの一言 集まり処「はんの木」情報 

集まり処「はんの木」にてスマホ・パソコン教室3時間千円貸出中コカリナ教室など📱070-5458-6220へ

学習障害の子は除外「伸びる子」選別し別室で指導

2014-08-10 23:55:14 | 教育・子ども

 学習障害のある子どもは除外 

「のびる子」選別 別室で指導―足立区教委

 学習障害がある子どもたちを除外し、″伸びる子″を授笑中に別教室で個別指導、さらに夏季勉強合宿もー。足立区教育委員会は、「基礎学力の定着」を図るとし、特定の小、中学生を対象にした区独自の取り組みを強力に進めています。行政が現場の授業にまで直接介入することや進学塾の参入などに、父母や現場から「公教育の精神に反する」など批判の声が上がっています。足立区の教育は今、どうなっているのか、その実態を追いました。 (東京民報松浦賢三記者)

 授業に直接介入 学力テスト底上げねらう

区内のある小学校。2時眼目の理科が始まる頃、4年生の男子児童が1人、教室を難れました。手には算数と国語の教科書。特別教室に入ると、そこには担任ではない″先生″が待っていました。

 ″先生″は元教員で「そだち指導員」。男子児童は授業を受けず、―人だけ別教室で、算数や国語を中心に指導を受けるのです。この制度は、今年度から区が独自に姶めたもの。7校にそれぞれ1人の指導員を配置し、1日5時限で5人を順次指導。週3日で3、4年生、15人を″卒業″までみることになっています。

 男子児童の担任教員は、「私たちに相談もなくすすめられ、しかもクラスの中から数人を選はなければならない。戸惑いました」。区教委側からは、学習障害がある子などは除き、″伸びる子を選ぶよう求められ「違和感を覚えた」と。

 担任は自問自答します。「特定の子を特別に指導するやり方はどうなのでしょう。本来、つまずいている子は担任の私が放課後、教えるべきだと思います。」 今年度は試験的に行われ、来年度からは全校で実施する予定だと言います。

「はばたき塾」 事前選考で落とす

 中学1年生の子どもがいる母親(44)は、学校からの「お便り」を見て首をかしげました。この夏休み、千葉の鋸南自然の家で行う「中1夏季勉強合宿」の案内に、各学校から5人と限定されていたからです。

 昨年度から中学1年生を対象に始まった区独自の取り組みの一つ。小学校からの算数の「つまずき」を克服し、中学校の勉強に追いつくことが目的です。母親は、学校の3者面談のとき、担任に「どうやって5人を選ぶのですか」と尋ねてみました。担任も「難しい」と困っていたと言います。母親は「選ばれるかどうかで、差がつくようなことを、学校がしていいのでしょうか」と疑問を投げかけます。

 昨年5月、中1夏季勉強合宿への生徒派遣」協力を依頼する区教委の事務連絡文書が、各中学校長あてに出されました。その中に次のようなことが書かれています。「参加者は学習障害や学習意欲のない生徒ではありません。つまずきが原因で伸び悩んでいる生徒で、やる気を持った生徒を推薦いただきたい」。″伸びない子″は選ばないよう区教委の本音をのべたものでした。

 中学3年生を対象とした「ははたき塾」(週一回、定員100人)でも、経済的に恵まれない「成績上位層」の生徒を募集し、試験で事前に選考。定員に満たないとして再募集まで行いました。この塾は進学塾(早稲田アカデミー)の[トップレベルの講師]を招いての勉強会です。

 ベテランの中学校教員は怒ります。「事前選考で落ちた生徒の気持ちを考えると辛い。再度募集するなら1回目でなぜ、もっと多くの生徒を入れないのか。区民の税金を一部の生徒のために使うというやり方はおかしい。」

 足立区は3年前から、前記以外にも小学校で基礎学習教室(3、4年生)、中学校に補習講座(2年生)などを実施。「学力定着」のためとする区独自の取り組みは、今年度だけでも9つ(約6億4千万円の予算)にのぼります。

4つのボトルネック 

区は今年度の予算方針で「治安、学力、困窮の連鎖、健康」の4つをボトルネック(支障)的課題として位置づけ、「その解消につとめる」ことを宣言。「民間委託」の方向で進めることを明らかにしました。この間、教育の分野では、18年後に小中学校を33校減らす統廃合計画を強行する一方、区教委は「基礎学力の定着」への取り組みをトップダウンですすめてきました。

 足立区の教育に詳しい東京総合教育センターの児玉洋介さんは「区教委にとって学力の底上げは至上命令です。従来からトップダウンで強引に進めてきたけれど、順調に進まない原因を学校現場に押しつけ、学校や教員への不信感をあらわにしている。そこで新設されたのが『教育次長』体制」と言います。

 「教育次長」は、昨年度に新設された教育長に次ぐ部長級ポスト。そのもとに、「学力定着推進担当課」と「幼児プロジェクト推進担当課」を設置。幼児から小中学校までを直接の指導下に置きました。学力定着推進担当課には、小、中学校長OBら50人を配置し、学

力の定着が必要な学校の授業内容を指導する権限を持たせました。現在、小学校14校、中学校4校へ、「毎日派遣している」といいます。

 現場の教育力弱める 安倍「教育再生」の先取り

  ″区がやらなければ″区教委の鈴木一夫教育次長は、この間の取り組みについて「基礎学力は小学校で定着しつつあり、中学校はこれから」と評価。勉強合宿やははたき塾などの選考基準について、「経済的な問題や集団生活になじめるか、などについてだけ」と言い、″学習障害がある子や意欲のない子は選ばないように″とは「言っていない」とのべました。※しかし、実際は学校への連絡文書に書いてあるのです。

 そだち指導員による別室指導については「本来のやり方ではないが、たし算の繰り上げも分からない子を目の前にして、やらざるを得ない」と話します。鈴木教育次長は、経済的に恵まれない子どもたちは塾へも行けない実態にあることを強調し、「読み書き、計算の基礎学力をつけるため区ができることをやっていく」と意欲を示しました。この間の区教委によるトッブダウン方式のやり方について、児玉さんは次のように批判しています。

 「本来、各学校がすすめる教育を援助するのが行政の役割。すぺての子どもが成長することを課題にするのではなく、効果の出やすい特定の子どもたちに金を投下し、塾に丸投げするというやり方は、公教育のすることではありません。行政が教育内容をコントロールすることによって、教員の力を奪い、現場の教育力を弱めていくことになることも重大です」

 公教育の精神に反する 世取山洋介・新潟大学准教授の話

 貧困の解決のためには、社会福祉や条件整備を手厚くしていくことが求められる。″貧困の連鎖を断ち切るために教育が大事″などとして、こうした形で行政が教育に踏み込んでいくことに大きな疑問を感じる。

 学カテストの成績結果をもとに、「成績の低い子」で「やる気のある子」にお金を投入し、全体の学力をあげるというやり方は、公教育の精神に反するもの。

本来、学習困難な子どもたちを含む全体の学力をアップするためにお金を投入するべきである。貧困の原因を個人の学力に求めるのは、貧困の自己責任論にもとづく対応でしかない。

 足立区はこれまで、学校選択制、統廃合、学カテストの3点セットを先導的にすすめるなど「教育再生」の先頭に立ってきた。さらなる進化を目指した全国的な先取りといって間違いない。これを許さない運動と世論の高まりが求められています。