千葉県野田市が今年4月、制定した公契約条例を考える足立のつどいが区役所内の庁舎ホールで開かれました。建設ユニオン、東京土建、自治労連など区内の労働団体を中心とした足立公契約条例推進実行委員会の主催によるつどいでした。
私も参加させていただきましたが、足立区議会の全会派の区議会議員が参加しました。足立区を代表して総務部長があいさつしました。
あいさつする定野司総務部長、その後、3名の方の現場からの報告ののち、中央大学教授の松丸和夫さんより、講演がありました。
講演の一部、公契約条例を進めるうえでの考え方の留意点をビデオに撮りました。
参加者は210名と発表されました。
松丸教授の講演のプロローグを紹介します。
2009年9月に千葉県野田市議会で採択された日本初の「公契約条例」は、日本の多くの地方自治体にとって大きな衝撃を与えました。「公契約条例」は条例であり、地方自治団体の立法です。それでも、その内容は国の制度(最低賃金制度)に匹敵あるいはそれを超える役割が期待されます。
これまで、日本の国や地方自治体が、発注先となる建設事業者やその他の事業者に対する公共発注事業の契約内容に、その事業者に雇用される労働者の賃金等労働条件に関する項目が含められることは稀でした。国や地方自治体当局の態度としても、「最低賃金制度がある」あるいは「民間における民一民契約には介入できない」という理由で、公共工事や民間委託事業で働く労働者の賃金について、なんらかの基準を設定することに否定的でした。つまり、国が決めた最低賃金法に従っていればよいという態度でした。
その結果、国や自治体は、工事・委託・請負の合理的な「積算単価」を余り配慮しなくなり、行財政の「効率化」のかけ声の下、民間企業と同様にコスト削減、「総価方式」「予定価格」の引き下げに力を入れてきました。直接的効果として、公務員数を削減し、行財政の効率化の「成果」を誇る首長も後を絶ちません。「コスト」だけ考えれば「成果」かもしれませんが、その結果、手抜き工事やサービスの質の低下が露見し、社会から指弾されてきました。近視眼でみると思わぬ弊害、コストアップのリスクを避けられなくなります。
さらによく見ると、そのような低い単価で受注した事業者のもとで働く労働者の賃金・労働条件がどんどん悪化したことは、これまであまり注目されてきませんでした。
自治体の「指定管理者」の中には、最低賃金制度自体を知らずに、労働者に最低賃金以下の賃金しか支払わなかったことで、指定を取り消される事件まで発生しています。最近では「官製ワーキングプア」と呼ばれる、働いても貧困状態から抜け出せない労働者の大群を、国や自治体の公権力自身がつくりだすという結末です。
こうした現実に対して、「野田市公契約条例」の前文は次のように述べています。
「地方公共団体の入札は、一般競争入札の拡大や総合評価方式の採用などの改革が進められてきたが、一方で低入札価格の問題によって下請の事業者や業務に従事する労働者にしわ寄せがされ、労働者の賃金の低下を招く状況になってきている。このような状況を改善し、公平かつ適正な入札を通じて豊かな地域社会の実現と労働者の適正な労働条件が確保されることは、ひとつの自治体で解決できるものではなく、国が公契約に関する法律の整備の重要性を認識し、速やかに必要な椎葉を講ずることが不可欠である。
本市は、このような状況をただ見過ごすことなく先導的にこの問題に取り組んでいくことで、地方公共団体の締結する契約が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することができるよう貢献したいと思う。この決意のもとに、公契約に係る業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を図るため、この条例を制定する。」と格調高く、決意を表明しています。
松丸教授はまるで憲法前文のような感動を覚えたと紹介しました。講演と条例についての詳しい内容を知りたい方は、東京土建足立支部にご連絡下さい。03-5845-5011 TEL 03-5845-5014 Fax