ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

平岡正明氏、死去

2009-07-10 02:56:12 | その他の評論

 ニュースによると評論家の平岡正明氏が死去、とのこと。死因は脳梗塞と言うが、彼の病気のことなど知らなかったし、いやむしろあのオッサン、ことによると俺よりも長生きするぞ、とか思っていたので非常に意外である。
 平岡氏を我々の年代は「韃靼人宣言」や「ジャズよりほかに神はなし」などという、ある意味奇書によって知ったのだが、もう少し下の世代には、山下洋輔や筒井康隆やデビュー当時のタモリなどが絡んで一騒ぎした”冷やし中華”のバカ騒ぎなどの関連で知ったのではないか。

 ジャズであるとか革命であるとか。その後は歌謡曲論やら香港映画やら河内音頭などなど。 氏の著作に始めて接した当時の私は、高校生だったか、もう大学に入っていたか。いずれにせよ当時の私はジャズ・ファンでもなければ革命を夢見てもいなかったのだが、それでも一発で彼のファンになってしまったのは、その爆走する重戦車みたいにパワフルな暴論の嵐を目の当たりにするのが快感だったから。そうするうちに、私の興味もいつか氏のそれに引きずり込まれていったのだが。

 実際、彼の評論に接する時の感覚は、文章を読むより音楽を聴くのに近かった。時々、大々的に行なわれるそそっかしい誤爆も、愛嬌があって楽しかった。この誤爆癖は、彼が私に残した最大の影響かとも思うが、なに、スケールが全然違う。

 平岡氏の文筆稼業の中でもっとも不思議なのは、彼の著作がほどんど文庫本化されずにいること。これはどういうことなのか、知っている人は教えて欲しい。売れそうにない?彼はそれこそカルト的人気を誇るもの書きであったし、彼ほどの知名度もない作家の本がいくらでも文庫本化されているではないか。
 こりゃまたどういうことだ。世の中まちがっとるよ~♪と植木等も歌っていたぞ。今からでも遅くない、いや、本当は遅いのだが、ともかく。平岡正明の文庫本を出せ。それも、”一挙百冊刊行”とか、そのくらいの無茶をやらなきゃ埋め合わせが付かないぞ、出版関係者諸君!

 晩年(と、もはや言わねばならないのだが)の氏の著作には、あまり納得はしていなかった。どうも時代との切り結び方に迫力がなくなっていたような気がして、もどかしく感じていたのは事実だった。だから、そのうち復調して落とし前をつけてもらいたいと思っていたところだったのだ。
 などと書けば、平岡が怒って生き返ってくるんじゃないかと思っている。いや、本気で。


 ○評論家の平岡正明氏死去 (時事通信社 - 07月09日 14:02)

 平岡 正明氏(ひらおか・まさあき=評論家)9日午前2時50分、脳こうそくのため横浜市の病院で死去、68歳。東京都文京区出身。自宅は横浜市保土ヶ谷区仏向町1338の25。葬儀は13日午前11時から同市西区元久保町3の13の一休庵久保山式場で。喪主は妻秀子(ひでこ)さん。
 ジャズや歌謡曲などの音楽、映画、文学と幅広い分野で評論活動を展開した。主な著書に「山口百恵は菩薩である」「筒井康隆はこう読め」「マイルス・デヴィスの芸術」「シュルレアリスム落語宣言」など。 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (NAKA)
2009-07-10 12:32:54
なくなられましたか。
私は、ジャズ本を何冊か読ませて頂いてました。千葉県に住んでいた時、ジャズ屋えん(現在もあり)にたまに行っていたのですが、その店をやられていた「つやさん(故人)」の事も、平岡さんが書かれていたりして、興味深かったです。その後、中森明菜論とかも探していましたが、古本屋にもなし、再発もされず、という状況でした。
ご冥福をお祈り申し上げます。
返信する
NAKAさんへ (マリーナ号)
2009-07-11 05:10:02
 平岡氏には、いつまでも頑固オヤジとして論陣を張っていて欲しいと思っていたし、そうなるだろうと信じていたので、残念でした。
 彼の膨大な著作、どれも興味深い内容で、こうなったらほんとにどんどん文庫本化していってもらいたいんですが、何でそうしないのか。 ジャズ論、歌謡曲論、ワールドミュージックも論じていたし、惜しかったです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。