ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ネット・退屈の帝国

2010-08-21 02:58:53 | その他の評論

 ネットで知り合ったある人の帰国子女である息子さんが、「日本のネットは同じ話題が延々と繰り返されている」と呆れていた、という話を聞かせていただいた。なるほどなあ、そう感じても不思議じゃないなあ、だってその通りだものなあ。と私は苦笑し、のち、暗澹たる気分になったものだ。
 だってねえ、標準的なネット上の音楽に関する会話、と言えば。以前書いたことあったっけかなあ。大抵、こんなですよ。

 まず一人が、名盤と評価のある盤の名を挙げて「あれなんか好きだなあ」と言い出すと、それに答える者がいて、いわく、「ボクも愛聴してます」とかなんとか。それに続いて、同じような”意見”がダラダラとつながる。
 あるいは、駄作と定評の盤には「あれなんかひどいな」とその盤の名を出せば、「ボクも評価できません」と。以下、付和雷同。
 音楽雑誌ででも読んだんでしょうかね、もうとうに答えの出ている作品評価をデッドコピーというのか、丸ごと鵜呑みにして、ついこの間、自力で発見したみたいな口ぶりで発言を行なう。名盤とか名曲とかいう言葉が大好きだ。

 そんな生ぬるい会話を毎日、延々と繰り返すんですな。で、そこで上手いこと社交的に立ち回れる人は”ネットの偉人”と言うべき立場を得て、みなの尊敬を集めたりする。まあ、微温的といいますかなんと言いますか・・・何が面白いんでしょうかね、そんなことの。
 そんなサークルの中で、”同じ話題の繰り返し”ではないユニークな話題が出てくると、こののどかな会話サークルの人々はどう反応してよいか分からず、ネット用語で言えば”華麗にスルー”とかするわけですね。余計なことに頭を使いたくないから。
 で、毎日が西部戦線異常なし、というわけだ。

 いつぞや取り上げた「その盤を好きなんていうのはブラジル音楽を聴いたことのない人でしょうね」発言なんかも、そんな土壌にこそ咲き得た仇花でありましょう。”この盤は正しくない盤と公認されたものなので、いくら悪口を言ってもかまわない”との認識の元、発せられた一言なんだけど、ここには「本当にその盤は見るところのない愚盤なのか?これを機会にもう一度検証してみよう」なんて発想はかけらもない。
 認知された”常識”にただただ寄りかかるばかりで、自分の浸かっている微温的ループ会話の温泉を疑いもしないこの世界。なんとかならんのかなあ。

 そうなってしまうのが日本人の国民性なんだろうか?そう思いたくはないんですがねえ・・・





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2 コメント

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Unknown (kisara)
2010-08-21 23:21:18
日本人の国民性=「その他大勢の他人と同じようにしなければ気が済まない」だと思ってます。
そーゆー人間の会話なんて、実にくだらないですよね。わたしはそんなサークルには一切関わってないのでどーでもいいけど?

> 認知された”常識”
何年か前の「雑学ブーム」の後に「常識ブーム」ってのがテレビ界でありましたが、”波田陽区が常識”と紹介されていたのに呆れた記憶があります、消えそう&忘れ去られそうなのに。

> 駄作と定評の盤
そういえば、以前に、マリーナ号さんのお好きな某MM誌で、ボロクソに酷評されてたJポップのアルバムがどんだけー酷いのか気になって、ツタヤでCDを借りて聴いてみたことがありました・・・本当に酷い駄作だったけど、
上で取り上げられた人たちは聴きもしないで「評価できません」と付和雷同なんでしょ?

> その盤を好きなんていうのはブラジル音楽を聴いたことのない人でしょうね
ただの嫌味。そもそも、評論家が「正しい/正しくない盤と公認」すること自体が嫌味だと思う。
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kisaraさんへ (マリーナ号)
2010-08-22 01:29:51
>ブラジル音楽を聴いたことのない人でしょうね
この発言に接して以来、本気で聴いたことのなかったスタン・ゲッツ絡みのボサノバものとか聴いてみたくなってます。ジョアンではなくアストラットの方のジルベルトであるとか。”まがい物の音楽”という認識をするのが”合意”みたいなんだけど、その音楽が大衆の心を捉えたという事実を鼻で笑って済ませるはずも無し。
MM誌でもなんでもいいけど、音楽誌をよく読んで、馴れ合いゲームのための空気さえ読んでおけば、音楽を聴いたことのない人でも音楽ファンの顔が出来ますね。
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